海外と日本の葬式の話:人類初の葬儀とシンパシー・フラワー

 

きょう1月17日は、日本人なら襟(えり)を正して迎える日だ。

いまから25年前、阪神大震災が発生して、6000を超える命がなくなった。
今朝の新聞をみると各紙がこれを取り上げていて、亡くなった弟に「おまえの分まで生きていくよ」と手を合わせる兄がいれば、当時3歳だった女性が亡き父に結婚の報告をしている。

きょうはそんな特別な日だから、これから海外と日本のお葬式の歴史や文化について簡単に書いていこうと思う。

 

人類で初めて葬儀が行われたとみられる痕跡がイラク北部にある。
そこのシャニダール洞窟の調査を行ったアメリカの人類学者が人骨と花粉の化石を発見した。
洞窟に花粉があることは考えにくく、約6万年前のネアンデルタール人が死者に花をたむけたと考えられている。
ただ、これには別の可能性もあって断定はできないけれど、人類史上初めてのお葬式といえばこのシャニダール洞窟がよく言われる。

死者に供える花は日本だと供花、弔花、仏花なんて言うけど、英語では「sympathy flower」と言う。
どうやらこの呼び方しかないようだ。
シンパシーという言葉はギリシャ語の「シン(共に:together)」と 「パシー(感じる:feeling)」からできている。
西洋で葬儀の花には、死者と見送る人、または集まった人の思いをひとつにするという意味があるのだろう。
これは数万年前のネアンデルタール人と現代の世界中の人たちに共通する文化だ。

 

 

日本で火葬は仏教とともに伝わったとされていて、それ以前には、たとえば縄文時代には身体を曲げて埋葬する「屈葬」が行われていた。
死者が復活しないことを願ったのか、石を抱いて埋葬する「抱石葬」(ほうせきそう)というのもある。

どこかの博物館で、縄文人も死者に花を手向けていたという説明を読んで、「命に対する思いはいまの日本人と同じなんだ」と感動した記憶がある。
あるのだけど、いまネットで探してみたらその記録が見つからない。
でも、死者を埋葬する習慣があれば、花を手向けるシンパシー・フラワーの文化もじゅうぶんあると思う。

弥生時代になると、通夜の起源といわれる「殯」(もがり)が行われていた。
これは記憶違いじゃなくてマジで。
魏志倭人伝にその記述がある。

人が死ぬと、棺はあるが槨のない土で封じた塚を作る。死してから10日あまりもがり(喪)し、その間は肉を食さない。喪主は哭泣し、他の人々は飲酒して歌舞する。埋葬が終わると家の者は水に入り体を清める、これは練沐の如し。

魏志倭人伝

くわしいことはこの記事を。

日本と韓国の葬式文化:通夜の原型となったいう殯(もがり)

 

 

時は流れて令和のいま、現代でも亡くなった人には心を込めて弔(とむら)う文化があるけど、その一方で、命や死に対して敬意や畏れを感じない人間もいる。
今月には、新宿駅の近くの橋で首をつって自殺した人を見ると、スマホを取り出して写真を撮り始める人が何人もいて「日本人って終わってるね」と話題とになった。

20年ぐらい前に中学校の恩師から、修学旅行で生徒を広島の原爆資料館に連れて行ったとき、黒焦げの死体を見て2人の生徒が笑っていたのを見て言葉がなくなったと聞いた。
いままでに何百人も修学旅行生を引率してきたけど、こんな子供ははじめて見たという。

こんな子供や死体をスマホに収める人間は例外中の例外だろうけど、ネアンデルタール人や縄文人以下の日本人はいると思う。

 

 

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2 件のコメント

  • 踏切事故での死体を携帯カメラで撮影する人についての記事のところでも書いてありましたけど。日本人のモラルが低下して死者に対する弔いの気持ちが薄れてきていること、その原因の一つとして、身近な人の死を実際に体験する機会が減ってきていること、確かにそれもあるでしょう。
    ですが、もう一つ、日本人の「素人メディア化」という現象も原因としてあげられるのでは? つまり、ほとんどの人が携帯・スマホを持ち歩くようになって、それはすなわちカメラを常時身につけていることであり、何かあれば撮影して、それをSNSで世の中へ情報発信する。これはTVや新聞などメディアがやっている報道と原理的には同じことです。
    死者を撮影しているのがTVや新聞の記者だったら「不敬な行為」と非難しますか? 彼らはそれが仕事だからそうするのですが、その動機は基本的に「(自分自身も含めて)世の中の人々が興味を抱きこれを見たがるだろう」という判断に基づいています。国民の一人一人がメディア記者と同じ活動をさほどの困難なく実施できる時代となって、日本人の「死者への敬意」に対する重みの置き方も変わってきているのでは。

  • 「一億総メディア化」という側面はありますが、さすがに新聞やテレビで首つり自殺の写真を載せたら大問題になると思いますよ。
    根本は想像力とモラルの欠如でしょう。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。