知り合いのアメリカ人が出張で名古屋へ行って、3日間の仕事を終えて浜松へ戻ってきた。
感想を聞いたら、「名古屋は変な食べものが多いんだな」とあきれ顔で言う。
向こうでは仕事のパートナーや友人からいろんな名古屋めしを紹介されて、最初の夜は手羽先を食べに連れていかれたという。
これとビールの組み合わせは「Awesome(ヤバい・最高)」だったから、名古屋めしへの期待が高まる。
でも、次の朝に見たあんこトーストには衝撃を受けた。
パンにバターは分かるとして、なぜにあんこ?
このビジュアルは、彼の中では躊躇(ちゅうちょ)なく「ゲテモノ」に分類される。
でも口に入れたら、意外と悪くない。
このあと彼は味噌カツ、台湾ラーメン、天むすなどの名古屋めしを満喫した。というか、させられた。
「見た目は雑巾。味はゲロ」と日本人旅行者からよく言われるエチオピアの料理「インジェラ」。
なんとなくあんこトーストに見えなくもない。
どこの国の人間でも、未知の食べ物を口に入れるときには勇気がいるものだ。
そのアメリカ人にとっての「ベスト・オブ・名古屋めし」は手羽先(とビール)で、きん差のセカンドベストが味噌カツ。
「悪くない。また食べてもいいかな」とおもったのが天むすとあんこトーストで、ワーストは「あんかけスパゲティ」だった。
あんこトーストではいい意味で見た目を裏切られたから、「これもひょっとして」と思って口に入れたらすぐに出したくなった。
「あれに二度目はないね」と言って窓の外を見る彼の目には別のものが映っていたはず。
彼はイタリア系アメリカ人で、基本的に白人に「ソウルフード」なんてものはないけど、「あえて言うならパスタとピザかな」と前に話していた。
身体に流れるイタリア人の血が、あんかけスパゲティという“冒とく”を許せなかったかもしれない。
若い男性には人気があるけど、「脂っぽいし、味が濃すぎる」という理由で女性から敬遠されるという。
コメダ珈琲が浜松でオープンして、人生初のあんこトーストを見たときの衝撃はいまも覚えている。
アメリカ人にはありえない和洋折衷だろう。
でもいまではガストのメニューに採用されているし、これは全国的に受け入れられている。
ボクのいる静岡県西部は愛知の隣だから、手羽先や味噌カツの店はあるけど、あんかけスパゲティを食べられる店を聞いたことがない。
だから、「名古屋は変な食べものが多い」というアメリカ人の感想はよく分かる。
このとき彼はstrangeじゃなくてweird(奇妙・不気味)と言ったとおもう。
さすがにcreepy(身の毛のよだつような)ではなかったけど。
「名古屋めし」というと日本人の間でも、ポンコツではないけどヘンテコというイメージがある。
良く言えば、新しくてチャレンジングな料理が多い。
前に3人の名古屋市民と飲んでいたときにこの理由を聞いてみたら、「名古屋をふくめて愛知県には魅力的な観光地が少ない。だから、「名古屋めし」をアピールして人を集めたいんでしょ」という意見にみんな基本的に賛成していた。
名古屋に自信のない名古屋人はけっこう多いのだ。
このうち1人が大学の同窓会をしたとき、アクセスのいい名古屋で集合して下呂温泉へ連れて行った。
その心は、「東京や大阪から来てもらって、愛知に案内するのは申し訳ない」から。
こういう状況が「名古屋めしってweirdだな」という感想につながった可能性は、なくはないとおもう。
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「Why did you come to Japan(You は何しに日本へ?)」は失礼な質問?
わははは、本当の地元の名古屋人は「名古屋めし」などという変な単語をもともと使ってませんよ。あれは、東京のTVで誰かが言い出した言葉で、むしろ今ではそれをキッカケに観光名物の一つとして名古屋が売りに出しているという状況です。まあ、B級グルメの名古屋シリーズだと思えば当たらずとも遠からず。
もちろん名古屋人だって、名古屋めしが好きな人もいればそうじゃない人だってたくさんいます。名古屋めしだけを選んで外国人に押し付けるなんて、歓迎の方法としてはちょっとどうですかね? かなり「歪んだ」感性の持ち主だと評価せざるを得ないな。
名古屋めしだけかはわかりませんで、いろいろ食べたようですよ。
珍しいものも食べられて、よかったんじゃないですかね。
アメリカ人はギャンブルが好きですし。