米国人を驚かせた中学校の英語ディベート(討論)のテーマと内容とは 後編

 

はじめの一言

「日本人ほど丁寧に礼儀正しくふるまう国民は、世界中どこにもいない
(ペリー 幕末)」

「日本賛辞の至言33撰 ごま書房」

ペリーとは、黒船に乗って日本に開国をせまったアメリカ人のペリーさんのこと。

 

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日本の版画に描かれたペリー
1854年ごろ(ウィキペディア)

 

少し前回の内容を確認しておきたい。

アメリカ人の女性が日本の中学校で英語を教えていた。
ある日、そのアメリカ人が英語の先生から頼みごとをされる。

「今度、授業で英語のディベート(討論)をしたいから、強力してほしいんだけど」

ディベートが大好きな彼女は、もちろんOK。
そして2人はめでたく結ばれ・・いや、違う。

「討論はどんなテーマがいいかな?」と聞かれた彼女は、こんなテーマを提案する。

「中学生のアルバイトは良いかダメか?ってのはどう?」

でもこのテーマは、以下の理由で却下きゃっかされる。

「校則でアルバイトは禁止されている。校則で禁止されていることをテーマに話し合うのは、学校の授業ではふさわしくない」

そして、日本人の先生はこう言う。

「そもそも生徒たちは、みんなの前で日本語で自分の意見を言うことも苦手。英語だと、もっと話せなくなってしまう。だから、簡単なテーマがいい。自分の意見を言って、その後に理由を述べるようにしよう」

今回はここから。

 

まず自分の意見を述べてから、その理由を説明する。

良いんじゃないの?
ボクはディベートの教育を受けたことがないからよく分からないけど、それなら討論っぽい気がする。

中学生が「私は~だと思います。なぜなら~」と英語で言うことができたら、上出来だと思う。

「そう思うでしょ?でも、全然違ったのよ」

日本人の英語の先生が決めたディベートのテーマは、そのアメリカの予想しなかったものだった。
英語の先生はこう言ったらしい。

「自分の好きなものを言ってからその理由を述べる、っていうのはどうだろう?」

「は?」とアメリカ人。

「始めに『I like~』と自分の好きなものを言う。そのあとに『because』をつけてその理由を説明する。これなら、彼らの英語のレベルでもきっとできる」

「え?」とアメリカ人。

彼女はよく分からなくなった。
「討論」というのは、ある問題について複数の人が意見を言い合うことじゃなかったっけ?

 

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旅先で出会った旅行者で話し合うこともある。
時には、「旅と旅行はどう違うのか?」「旅とはなにか?」なんてことを熱く語ることも。

 

そして英語で討論する日がきた。

生徒たちは、先ほどのテーマにしたがって「討論」を始めた。
それはこんな感じだったらしい。

「I like an apple. because it is good(リンゴが好きです。なぜなら、おいしいからです)」

こういったことを、前から順番に席から立ち上がって英語で言う。

「ねえ、信じられる?これがディベートなのよ。こんな活発なディベート見たことないわ!」

討論が「ある問題について、互いに意見を述べ合うこと」というのなら、そのテーマは反対や賛成ができるものがやりやすい。

「リンゴはおいしいです」という個人の味覚にどんな反論ができるのか?

それにしても、すごいテーマだ。
すごいエキサイティングな討論だ。

 

 

話を聞いていて不思議に思ったのは、このときの彼女の役割だ。

生徒たちが活発な討論をしている間、彼女は何をしていたんだろう?
そんな討論なら、彼女がいなくてもできるような気がするけど。

「一生懸命ほめてたわ。『I like an apple. because it is good』って生徒が言ったら、『That’s good!』『perfect!』とか言って」

30人~40人の人間をほめるというのは、かなりのほめ言葉の種類と忍耐が必要だったはず。
彼女にとっては、指導ではなくて苦行だったはず。
その時のことを思いだしてため息をつく。

「あれじゃ、ふつうの英語の授業とまったく変らない。英文をつくって発表するだけじゃない。何であれがディベートなのよ?」

知るか。

 

ミャンマーの首長族。
これは文化か?
女性差別か?
これなら討論にはなる。

ミャンマー観光⑥首長族をどう思う?女性差別?民族の文化?

 

英語の先生から、「英語でディベートをしたいから、協力してほしい」と頼まれたとき、ディベートが大好きだった彼女は喜んでいた。

「自分がアメリカで学んだディベートの知識や技術をどう活かそうか?」

そんなことを考えたらしい。

それがまさか、あんな討論になるとはね。
教室で生徒たちがしていた討論は、彼女が知っている討論とはまるでちがう。

冷たい目でその光景を見ていたと想像する。

 

 

もともとこの討論の目的は、「校長が学校通信にのせる写真を撮るため」だった。
だから良い写真が撮れたら、それで討論の目的は達成されたことになる。

校長としては、納得のいく写真が撮れたからそれで満足。
担当の教員にとっては、校長に言われたことを無事にやり終えて任務終了。
そしてアメリカ人の彼女には、ただただ疲労感が残った。

 

インドのジャイサルメール

 

では最後に英会話の勉強をしてみましょうか?

最近、友人のフィリピン人にメールを送った。
彼女はフィリピンのインターナショナルスクールの先生をしていて、日本の英会話スクールで英語を教えていた。

焼肉の写真といっしょにこんな質問をしてみた。

「今、日本にフィリピンの大統領が来ているけど、なんであの大統領はフィリピンで人気があるの?」

その返事が下の文。

「Hello! I miss yakiniku! Yeah, I saw on TV that our president is in Japan. He’s very strict with people hooked on drugs. Most people like him because we had a lot of drug users before he became a president. It wasn’t safe before. But now,, we feel safer to get out on streets.」

「hooked on:病みつきになって、ふけって、かぎにかかって、引っかかって、夢中になって(Weblio 辞書)」
ちなみに、「hook up」だと「ナンパする」という意味になる。

意訳(意訳だから、細かいことは知らない)

「こんにちは!焼肉が恋しいわ!そう、フィリピンの大統領が日本にいるのをテレビで見た。彼はクスリを使っているの人にとても厳しいの。ほとんどの人は彼が好き。彼が大統領になる前は、クスリを使っている人がたくさんいたから。以前は治安が悪かったけど、今は前よりは安心して外に出られるようになった」

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。