通貨スワップ:「誰が金を貸すか」日本を怒らせた韓国の言動

 

およそ一年前、韓国経済は危機を迎えていた。

国家にとって最も危機的状況はトップがそれを認識できていないことで、成長率や輸出・設備投資は下がっているのに、ムン大統領は「巨視的に見ると韓国経済は大きく成功した」と胸を張る。
そんな大統領を見て韓国の経済学者は、「現実を認めない政府の存在自体がさらに大きな危機」と心配をさらに深くする。

韓国経済が本当に成功しているかどうかは、海外の国債格付け機関が冷静に判断する。
きょねん5月はその判断が出される直前で、全国紙・中央日報は「韓国経済を審判する死神が近づいている」と震えていた。

 

韓国が絶対に避けたい事態は、『朝鮮戦争以来、最大の国難』『亡国体験』と呼ばれる1997年の経済危機。
このとき経済は崩壊寸前で、最後は韓国政府が国際通貨基金(IMF)へ救済を要請して助けてもらった。
それは痛みをともなうもので、IMFが韓国経済の「総司令官」となって財閥を解体させるなど、政府や国民としては屈辱的なことをした。
財閥解体なんて、敗戦直後にやって来た連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が日本にやったことだ。

ちなみにこのとき、日本は隣国を全力で支援したことをぜひ知ってほしい。

日本国政府は、邦銀に対して返済繰り延べの説得に奔走し、混乱する金融市場の中で邦銀の合意を取り付け、1998年1月29日には、日米欧民間銀行団の短期債務繰り延べ交渉を妥結に導いた。

アジア通貨危機・韓国

 

これによって市場に安心感が生まれ、韓国ウォンは1日で1ドル=1,678ウォンから1,524ウォンまで値を戻した。
なのにいまの韓国では、「通貨危機を迎えたのは日本のせい」とする意見が多いというねじれ現象が起きている。

 

今すぐにこんな危機を迎えることはないものの、1年前の韓国経済も相当ヤバかった。
最悪の事態を回避するには、何と言っても日本と通貨スワップ協定を結んでおくことが超重要。こうすれば、いざとなったらドルを貸してもらうことができるから。

中央日報はコラム(2019.05.15)でその必要性を強く訴えていた。

まともな政府なら今ごろ、韓米通貨スワップは難しいとしても、韓日通貨スワップ程度は復元して最後の安全弁を用意しなければいけない。しかし危機意識がないというのがさらに大きな危機だ。

危機の韓国経済、韓日通貨スワップ復元など最後の安全弁を用意する時

 

成長率や設備投資などの数値は下がっているのに、「韓国経済は大きく成功した」と豪語する政府は確かにまともじゃない。

日本では「韓国との通貨スワップを復元して、最後の安全弁を用意しなければいけない」なんて主張は聞こえてこない。
日本は通貨危機におちいる可能性が世界でもっとも少ない国といってよく、日韓通貨スワップは実質的には韓国を救済するための措置だから。

 

このときから1年たったいま、韓国経済は回復するどころかさらに一層、危機的となる。
それで丁世均(チョン・セギュン)首相は3日前の3月27日、「(日本との)通貨スワップの締結は正しいといえる」と公式に言う。
「正しい」とあいまいな表現を使っているけど、韓国の本音としては通貨スワップをぜひぜひ結びたい。
言いづらいことや認めたくない現実があるとき、ムン政権は「巨視的」といったあいまいな表現をするのはさっき見たとおり。

日本を相手に弱気を見せたり、下手に出たりする姿を国民には絶対見せられない。これは韓国政府の存続条件のようなものだから、「いざとなったらドルを貸してほしい」なんて死んでも言えない。
弱い立場でも強気でものを言うのが韓国の特徴で、そんな韓国をなんだかんだ言って心配しちゃうのが日本の特徴でもある。

だから数年前、日本が韓国側に手持ちのドルについて「大丈夫か」と確認したところ、「大丈夫だ」という返事がきた。
その後のやり取りについて麻生財務相はこう言う。

中央日報の報道(2020.03.30)

その時、『本当にいいのか』と聞いたら、韓国は『(どうか)借りてくださいと(日本が)言うなら、借りることもやぶさかではない』と答えた。(金を貸す側が)頭を下げて『借りてほしい』などという話は聞いたことがない。(それで)交渉テーブルを蹴って(交渉から)撤収した。それで終わりだ。

麻生氏、韓日通貨スワップに言及 「誰が頭を下げて金を貸すか」

 

自分が破産をまぬがれるために相手からお金を借りるときは、頭を下げるどころか土下座に近い形で懇願することもある。
「借りてくださいと言うなら、借りることもやぶさかではない」と実際に言える人間がいることに驚く。
こんな上から目線への答えは、「誰が金を貸すか」というのは世界共通だ。

麻生大臣の話だと、通貨スワップ協定についても日本が韓国に配慮して延長を打診していた。

日本が「協定を延長しなくてもいいのか」と繰り返しその意志を打診してきたものの、韓国が「日本がお願いするならしてもいい」と硬直した態度を示したため延長交渉が決裂した

 

ifを言い出したらキリはないけど、もしこのとき韓国が日本の打診に応じていれば、いまごろ「正しいといえる」なんて何とかプライドを保つ表現をする必要もなかった。

このあとムン政権がしたことは慰安婦合意や請求権協定を否定するなど、日本の信頼を裏切ることばかり。
韓国の人たちは「過去を忘れた民族に未来はない」というフレーズが大好きなのに、ここ数年の行いからは目を背けてしまう。
これじゃあ、通貨スワップなんて無理にきまってる。

それにしても、こういった韓国側の言動を日本のメディアはどれぐらい報道しているのか。

 

 

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7 件のコメント

  • 韓国の政治家は嘘の歴史を作り上げて、自分で自分の首を絞めている。何とかの遠吠え。

  • >中央日報の報道(2020.03.30)
    >その時、『本当にいいのか』と聞いたら、韓国は『(どうか)借りてくださいと(日本が)言うなら、借りることもやぶさかではない』と答えた。(金を貸す側が)頭を下げて『借りてほしい』などという話は聞いたことがない。(それで)交渉テーブルを蹴って(交渉から)撤収した。それで終わりだ。
    >麻生氏、韓日通貨スワップに言及 「誰が頭を下げて金を貸すか」

    日本のメディアでなく、韓国側メディアでこのように報道されているということは、事実なのでしょうね。
    ま、呆れると言うか。この件、今はどのように韓国では評価されているのでしょうか?「よくぞ頭を下げずに我慢した!」とでも? 韓国ならばさもありなん。

  • この報道が間違っていたら、日本側からそれを否定する報道が出ます。
    それがないので、これは真実でしょう。
    自分のハードルを自分で高くしてどうするのか。

  • >「誰が頭を下げて金を貸すか」

    んー、でもねぇ・・・、確かに昔の日本でも、いっときありましたよ。頭を下げて「金を借りてください」と金融機関が言ってきていた時代が。特に地方の信用金庫クラスの中小金融機関がそうでした。

    それは、バブル崩壊後に国内金融機関の採算が一気に悪化した時代のことです。全国的に事業者が金融機関から融資を受けて新規設備投資をしようとする意欲を失った。その結果、大手都市銀行はともかく、地方の中小金融機関は利益の源泉が失われて(銀行が利益を得るのは、一般に、企業へ融資をしてその返済利息を稼ぐことが中心ですから)、一気に経営採算性が悪化しました。貸付利率をいくら下げても融資を受ける事業者が現れない。昔からの付き合いのある融資先も、融資の継続中止を申し込んでくるか、そうでなければ倒産してしまうという、超不景気の時代に突入したのです。
    あのころ、本当に、「お願いですからお金を借りてください」と頭を下げて中小企業へ頼みに来る金融機関がいくつもあったのですよ。今では信じられないかもしれないけど。

    韓国では未だにそんな感覚が残っているんですかね。
    ただ、麻生財務大臣に向かってそれを言うのは、完全に相手を間違えているとは思いますが・・・。

  • 日本との通貨スワップなんて韓国にも必要ないですよ。 アメリカ他9か国と結べたようなので楽勝でしょう。
    そして利子の返済がないことを9か国は知ることになるのでしょうね。 アメリカは知っていると思いますが。
    まあ約束を守ってもらえないうえに数々の無礼な行いをされてるし利子も返済されてないということなので今回は日本は無視でしたね。まあぶっちゃけ日本にも今は貸すようなお金はないしドルだって大切で譲れませんからね。

  • 言葉だけを切り取ればそうですが、バブルの金融機関と企業といまの日韓では状況がまるで違いますから。
    韓国にとって麻生大臣が相手というのは最悪でしょうね。
    日本の国益を考えてハッキリものを言いますから。

  • いまの日本のマスコミから通貨スワップの話は出てきません。
    コロナ対策で必死でそんなことは後回しでかまいませんから。
    そもそも韓国政府は公式には日本に要請していません。まだ余裕があるのかメンツのせいか分かりませんけどね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。