【竹取物語とかいうSF】日本人とは違う海外の反応・理解

 

すこし前にトリニダード・トバゴ人から、「Do you know of this story? The Mystery of Utsuro-Bune?」と」(うつろ舟のミステリーを知ってる?)というメールをもらった。

「うつろ舟」というのは江戸時代の日本に現れたという不思議な舟のことで、まあ今でいう都市伝説だ。

 

1844年に描かれたうつろ舟

 

くわしくはこの記事をどうぞ。

【うつろ舟】歴史とミステリー好きの外国人に受ける日本の伝説

 

「うつろ舟よりもトリニダード・トバゴとかいう国が謎」という人は場所だけ確認しておこう。
ベネズエラの右上にある小さな島国で、リンボーダンスはこの国でうまれた。

 

 

 

このトリニダード・トバゴ人は日本の文化や歴史に興味があって、いろんな本やサイトを読んでいるから日本のことはよく知ってる外人さん。
そもそも日本人だって「うつろ舟」なんてなかなか分からない。
そんな高性能アンテナを持つ外国人がメールでこう書く。

「Yeah its an interesting legend kinda like the story of princess Kaguya. 」

「うつろ舟」はかぐや姫のような興味深い伝説だという。

言われて思い出した。
このミステリー好きの外国人は日本にいたとき、かぐや姫の語を知って「面白い!」と思って、海外のサイトで調べてみたら「かぐや姫は月からUFOに乗ってきた宇宙人だ!」という説を見つけて大興奮してたっけ。

月にいる宇宙人が地球侵略を考えて、情報収集のスパイとしてかぐや姫を送り込む。竹が光ることぐらい、月の技術力をもってすればお茶の子さいさい。
そんな話をしていて、突っ込むタイミングを失って困った記憶がある。

ただ日本でもそんな意見はあって、ネットで見たら「『かぐや姫』は宇宙人だった?」なんてサイトがすぐに見つかった。

 

 

このトリニダード・トバゴ人みたいに、「かぐや姫=宇宙人」という話はアメリカ人からも聞いたことがあったから、メールのやり取りのあと、「竹取物語で外国人が食いつく要素はそこか?」と海外の反応に興味が出てくる。

竹取物語について調べようとする外国人が、いちばん多く参考にするのは英語版ウィキペディアの記述だろう。

ということでそれを見てみると、ちゃんと竹取物語の項目はあったのだけど、「The Tale of the Bamboo Cutter」という英訳にまずはガッカリ。
「バンブーカッター」って、「バカッター」じゃないんだから。
「The story of princess Kaguya」のほうがずっと響きがいいし、まさにスッポンと月。

説明を読んでいくと、竹取物語は10世紀にできた民間伝承をふくむ物語とある。まあ正解だ。
ただ「10th-century Japanese monogatari (fictional prose narrative) 」と物語がそのまま英語になっているのが意外。

「ある日、竹取の翁が竹林で光る不思議な竹を見つけると~」のあとは、日本人なら誰でも知っているだろうから省略するとして、英語版ウィキペディアには日本語版にはない「Legacy」という項目があった。
そして竹取物語は「proto-science fiction」、SF(空想科学小説)の“原型”だと書いてある。

*protoscience(プロトサイエンス)を日本語にすると「未科学」で、これは日本の社会にはほとんどなじみのない考え方。proto-science fictionのいい訳があったらおしえてください。
外国人はうつろ舟も「SFもの」と見ている気がする。

 

竹取物語には、かぐや姫が月から地球に安全に送られるといったSF的要素がいくつもあるから、海外ではproto-science fictionという位置づけをされているのだ。

an extraterrestrial being raised by a human on Earth, and her being taken back to the Moon by her real extraterrestrial family. A manuscript illustration also depicts a round flying machine that resembles a flying saucer.

The Tale of the Bamboo Cutter#Legacy

 

extraterrestrial beingなんて英語を見たのは初めてで、調べてみたら、なんと「地球外生命体(生物)」という意味だった。

地球の人間によってかぐや姫とかいう地球外生命体が育てられて、月にいる本当の地球外生命体の家族の元へ帰っていく。
それが竹取物語。
原稿にはflying saucer(空飛ぶ円盤:UFO)に似た空飛ぶ機械が描かれている。

そんなもんあったっけ?

 

UFOってこの和風なやつですか?

 

こんなことで、海外で竹取物語は「SF小説」のような理解をされている。
でもさっき書いたように、日本人向けの日本語版ウィキペディアにこの説明は一文字もない。日本人はこういう見方に関心がないのか、それとも信頼性に欠けるのか。
日本で竹取物語といえば「日本最古の物語」というイメージが強いけど、海外での反応は「世界でも初期のSF小説」というもの。
日本人の認識とはかなり違う。

地球侵略を考えた月の宇宙人がスパイとしてかぐや姫を送り込むという、SFファンタジーはこれをふくらませたものだろう。

 

 

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4 件のコメント

  • > 海外で竹取物語は「SF小説」のような理解をされている。

    日本人でも、SFが好きは同じ認識をお持ちかと思います。私も子供の頃にその手の本で読んだ記憶があります。たしか、松本零士原作のSFアニメ「1000年女王」も竹取物語をモチーフにしていました。

    それから、SF好きには「浦島太郎」もなじみがあります。竜宮城から戻ったら時間が経っていたと言うくだりが、宇宙旅行における時間の遅れと重なるからです。日本には「ウラシマ効果」なんてSF用語があるくらい有名です。トリニダード・トバゴ人に教えたら喜ばれるかもしれませんね。

  • あははは~、ブログ主さんも色々と誤解してますよ。

    >extraterrestrial beingなんて英語を見たのは初めてで、
    そんなはずは無いと思うのですが。1982年公開(ちょっと古すぎるか?)の大ヒット映画「E.T.」は、まさに Extra-Terrestrial の略なのですから。さらに、電波望遠鏡とかを使って地球外文明からの通信電波を探す活動を「SETI」と言いますが、あれも Search for extra-terrestral intelligence の略ですからね。

    proto-science fiction の訳語ですが、proto-SFと考えれば、ブログ主さんの言う通り「SFの原型」でよいと思います。(おそらく、ネイティブの英語話者もそのように(Siencefiction の部分は1語として)考えていると思います。)

    >日本で竹取物語といえば「日本最古の物語」というイメージが強いけど、海外での反応は「世界でも初期のSF小説」というもの。
    いやいやいや。日本最古の物語どころか、おそらく、世界最古の「ものがたり(小説)」だと思います。と言うのは、海外に伝わっている古い神話・伝承の類は全てが叙事詩・年代記であり、「本当にあったことの歴史的記録」として伝えられているからです。中東でも、欧米でも、インドでも、中国でもそうです。彼らの伝える神話や歴史は、決して「ウソ」として成立した作品ではありません。「これは本当のことだ」という強い主張を伴った stories です。
    最初から「絵空事」としてあり得ないようなこと・ものを「語り」楽しむこと、つまり虚構(fiction)の世界を文学作品として構築し、かつそれを読んだり謳ったりして大っぴらに楽しむことは、世界中で、たぶん日本人が最初に始めたのでしょう。竹取物語とか、今昔物語とか、源氏物語とか。

  • 日本でもオカルト・ミステリー好きはUFOとか宇宙人とする人がいますね。
    おもしろいのですけど、ウィキペディアに載るほど支持は得られません。外国人は自由ですが、日本人はもっとまじめにとらえているように思います。
    浦島太郎もいいですね。
    でも、トリニダード・トバゴ人は島国で環境は日本と似てますし。

  • 「E.T.」は知ってます!
    あれはそういう意味なんですか。
    日本語でもSFというように、この分野は海外のほうが進んでいるというか関心のある人が多そうです。
    日本人は史実・事実にこだわりそうな。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。