アニメや日本料理などが世界中で人気を集めたおかげで、日本にはたくさんの外国人が来るようになった。
*もちろんいまはコロナで中断中。
外国人との付き合いがあると、「日本ってどんな国なんだ?」と質問されることもある。
それには外国との違いを挙げると分かりやすく、「ボケれるほど平和で治安がいい」とか「春になるとそこら中で桜が咲く」といったことでもいいけど、南北朝時代の日本人が指摘した「乱れがなく一筋に続く国」というのも答えのひとつだ。
これからそのことを書いていこう。
紀元前753年に初代国王ロームルスがローマを建国した。
それが4月21日で、その日はいまもローマの建国記念日として祝われているから、先週こんな記事を書いた。
ことしでローマは2773歳。
といっても、ロームレスは軍神マルスの息子という話だから、ローマ建国は史実ではなくて神話の話。
ただ、もしローマという国がいまも存在していて、神の血を受け継ぐロームレスの子孫がいまも君主にいて、その国が世界有数の先進国だったとしたら?
日本とはそんな国だ。
ロームルスがローマを建国した約100年後、紀元前660年に初代天皇・神武天皇が即位して日本が誕生した。
古事記や日本書紀に出てくる神武天皇はロームルスのような神の血をひく伝説的存在だから、これは日本神話の中の話。
でも神話もその国の財産のひとつで、ローマの建国記念日と同じく、2月11日のこの日は日本の建国を祝う「建国記念の日」に定められた。
そしてそれ以来、天皇家は一度も変わることなく、日本に存在し続けている。
日本の歴史には中国やヨーロッパのように、皇帝や王が倒されて別の人間が新しい君主になるという革命がないことから“世界最古の国”ともいわれる。
まえにアメリカ人から「天皇はとてもユニーク(特別な)存在。いまエンペラーと呼ぶことのできる世界で唯一の人だから」と言われて、外国人からはそう見えるのかと納得した。
ではここで日本史クエスチョン。
この人物は誰でしょう?
この人は南北朝時代、後醍醐&後村上天皇に仕えた重臣の北畠親房(ちかふさ:1293~1354)。
高校日本史で必ずならう重要人物だから、知らなかった人はここでおぼえておこう。
北畠親房は北朝の正統性を否定する「神皇正統記」(じんのうしょうとうき)という歴史書を書いたことでも有名だ。
歴史に興味のある人はこの本もチェックすべし。
神皇正統記
北畠親房が常陸小田城で北朝と対戦しながら執筆した歴史書。1339年成立。『大日本国は神国なり』に始まり、神代より後村上天皇までの皇位継承の経緯を述べており、大義名分論に基づいて、南朝の正統性を主張している
「日本史用語集 (山川出版社)」
当時の日本人の考え方で「外国」とは中国(唐)とインド(天竺)しかなくて、これに日本を加えた3カ国で全世界を意味した。
北畠親房は「神皇正統記」の中でインドとの違いをこう書く。
わが国は天祖以来皇位の継承に乱れはなく皇統が一筋であって、この点は天竺とちがうところである。
インドを初めて統一した王はアショーカ王だけど、13世紀にはその国も血筋もなくなっているから、この指摘は正しい。
また中国についてはこう言う。
中国では天子の氏姓・王朝の交替は三十六に及んでいるから、乱れのはげしさは言語道断というほかはない
中国の歴史は20世紀はじめの辛亥革命まで、王朝が滅ぼされて別の人間が皇帝として新王朝を開くと、別の人間に倒されて新皇帝が誕生して…という易姓革命のくりかえしだった。
そういう「乱れのはげしさ」は中国皇帝もよくわかっていたから、宋の歴史書『宋史』にある「日本伝」で北宋の皇帝・太宗がこう嘆いている。
「この国王は一つの姓で継承され、臣下もみな官職を世襲にしていることを聞き、嘆息して宰相にいうには「これは島夷(とうい。島に住む異民族のこと)にすぎない。それなのに世祚(代々の位)は“か久”(はるかにひさしい)であり、その臣もまた継襲して絶えない。これは思うに、古(いにしえ)の道である。」
親房は日本を「日神すなわち天照大神がながくその伝統を伝えて君臨している」と考えていたから、外国とは違って乱れのない、一筋に続く国と表現した。
好き嫌いの感情は別として、日本には神話の時代から続いているという伝統があることは事実で、これは外国との最大の違いだ。
この文化がなかったら、先ほどのアメリカ人の感想もなかった。
といってもそのアメリカ人は、「なんで日本の天皇だけがいまも続いているのか?」と興味を持っていただけで、天皇を崇拝していたわけではない。
大正時代の日本にやってきた天才物理学者のアインシュタインも、北畠親房と同じようなことを言う。
「近代日本の発展ほど世界を驚かせたものはない。一系の天皇を戴いていることが、今日の日本をあらしめたのである。私はこのような尊い国が世界に一カ所ぐらいなくてはならないと考えた。」
日本のおもてなしを受けるアインシュタインと妻のエルザ(1922年)
1922-23年の訪日時の日記にて「日本人は謙虚で質素、礼儀正しい、まったく魅力的です」「他のどこにも存在しないくらい純真な魂たち。誰でもこの国を愛し、敬うだろう」と評価した
おまけ
現代の日本人は天皇についてどう思っているのか?
共同通信社がおこなった世論調査をみるとかなり良さそう。(2020/04/26)
天皇陛下に「親しみ」58% 女系・女性天皇に高支持
天皇陛下に対して「親しみを感じる」と回答した人は58%で、「すてきだと思う」(17%)を合わせると75%になる。
「尊くて恐れ多い」(5%)もプラスのイメージだから、天皇陛下を良く思っている人は合計で80%と圧倒的だ。年代が上がるほど、この傾向が高い。
一方、 「何とも感じない」が17%で「反感を持つ」は0.5%未満だから、ネガティブな印象を持つ日本人は例外中の例外になる。
北畠親房の指摘はいまも正しい。
こちらの記事もいかがですか?
とりあえず、説明不足と思われる点を指摘しておきます。
>この3加国で全世界を意味した。
→ この2か国と、日本(本朝)とを合わせて3か国で全世界を意味した。
程度には説明しておくべきではないですか? なかなか判断が難しいところですけどね。
ご指摘の通りです。
ありがとうございました。
南北朝の時代に云うかなぁ。『乱れがなく一筋に続く国』意味が解らん!
朝廷が分裂して二人の天皇が統治したことが仇となり、武家が実権を握ったことで日本国は乱世となり戦国時代が始まったのに。
北畠親房、南朝びいきな見方で日本国全体を見ていない!なに言ってくれちゃてんの!
北畠親房は南朝を正統と主張した人ですからね。
武家政権が確立したのは承久の乱の勝利で南北朝の争いの前です。
戦国時代の始まりは応仁の乱で、あれは天皇に責任はないですよ。