新型コロナ:韓国とシンガポールの失敗から日本が学ぶこと

 

良いことが続いたときこそ要注意。
うれしくなって調子に乗ってしまうと周囲が見えなくなって、結果的に自分の状態も分からなくって思わぬ失敗を招いてしまうから。

上り調子になっているときほど、有頂天にならないようブレーキをかける必要があるという警告として「好事魔多し」という言葉が昔から使われている。
これには「好事、魔を生ず」という言い方もあって、物事がうまく運んでいると知らない間に「邪魔」という「魔」が入り込んで、結果を台無しにしてしまうことがある。

そのひとつめの事例がシンガポール。
はじめは新型コロナウイルスの感染者とその接触者を素早く特定して、注意深く監視することで感染拡大をうまく抑えていたことから、世界保健機関(WHO)から模範国として高く評価されたけど、いまでは感染者が爆発的に増えてその名誉が吹き飛んだ。

 

この失敗の大きな原因は、自国民と外国人との対応に「差別的」と言えるほどの大きな差をつけていたこと。

その具体例としてニューズウィーク誌の指摘を見てみよう。(2020年04月22日)

海外から帰国したシンガポール国民が隔離される場所は高級ホテルだが、一部の外国人労働者が閉じ込められているのは、中身があふれそうなごみ箱とトイレがあるだけの2段ベッドの部屋だ。

シンガポールのコロナ対策に「穴」、外国人労働者に感染拡大

 

衛生環境は劣悪で、絶対に避けないといけない3密空間に閉じ込められていたら、感染が広がるのはいまでは常識。
優秀なシンガポールの専門家もそんなことは分かっていただろうけど、長年続いてきた自国民と外国人労働者との見方の違いが対応の違いを生んで、それがアダ(穴)となっていまの事態を招来する。
「アジアの優等生」は見る影もなくなってしまった。

 

順調なときほど警戒心を怠ってはいけないという事例は、隣国でも見ることができる。
韓国のムン・ジェイン大統領は就任3周年の演説で、国民に対して誇らしげにこう言った。

朝鮮日報の記事(2020/05/11)

文大統領「我々が標準になり、我々が世界になった」

この記事からムン大統領の言葉を抜き出してみるから、いまの大韓民国の空気を感じ取ってほしい。

「防疫で世界をリードする国になり、『K防疫』は世界の標準になった」
*KはコリアのK。
「大韓民国の国家的地位と国民的自負心はこれまでにもまして高まった」
「国民の力で防疫戦線を強固に死守し、ウイルスとの戦争に勝ってきた」
「我々は既に我々の防疫と保健医療体系が世界最高水準であることを確認した」
「世界をリードする確実な『防疫1等国家』になる」

ムン大統領の演説によると、いま世界中が韓国を称賛し理想としている。

「『既に我々は先進国』と言い始めた」
「我々が追いかけたいと思っていた国々が我々に学び始めた」
「我々が標準になり、我々が世界になった」
「今や大韓民国の偉大さを語り始めた」

なんだか「中国こそ世界の中心だ!」という中華思想で、大韓帝国に逆もどりした感がある。

 

でもたしかに政府の対策はうまくいって、新しい感染者は激減して韓国はコロナに打ち勝った。
そう確信して大統領が自信たっぷりに語ったときには、すでに韓国社会に「魔」が広がっていたのだ。

朝鮮日報の記事(2020/05/11)

ソウル市竜山区内の繁華街・梨泰院の一部クラブで発生した新型コロナウイルス集団感染は、今月6日に感染者の発生が確認されてから4日後に77人に増えた。

あの夜梨泰院にいた2000人、追跡もできず

 

首都圏を中心に全国で新規感染者が報告されているけど、追跡が困難で抑え込みも難しい状況だ。

シンガポールでは外国人への対応が「穴」になって、韓国では外出自粛がゆるんだことが「穴」となり、コロナウイルスという魔の侵入を許してしまった。
両国ともその直前までは「優等生」だったけど、その自負が油断を招いたのだろう。

 

では、「穴」を作らないためには、「好事魔」を招かないためにはどうすればいいのか?
その答えは鎌倉時代の日本人から学ぼう。
こういうときの大事な心構えについて、日本三大随筆( 清少納言の『枕草子』、鴨長明『方丈記』)のひとつ『徒然草』で吉田兼好がこう書いている。

木登りの名人がある男に、木に登って梢を切るよう指示を出す。
男が高いところに到達したときには何も言わなかったけど、男が降りてきて地面に近づいてきたときに、名人は「過ちすな。心して降りよ。」 (過ち(失敗)をおかすな。気を付けて降りなさい)と声をかけた。

「このぐらいの高さなら、飛び降りることもできるでしょう。なのになんでそう言うのですか?」と男がたずねると、名人は、人は高いところでは恐怖心があって自分から注意するけど、「過ちは、やすきところになりて、必ずつかまつることに候ふ」(過ちというのは、簡単なところで必ず起こすものなのです」と諭す。

蹴鞠も同じで、「難きところを蹴いだして後、やすく思へば、必ず落つとはべるやらん」と、もう大丈夫だと安心すると、それが油断になって必ず失敗してしまうと言う。

くわしいことは徒然草の「高名の木登り」を見てくれ。

 

新しいコロナ感染者が減ってきて、外出自粛も解かれ始めた日本もいまこそ、シンガポールと韓国の失敗と兼好法師の教えから学んだほうがいい。
「今や大韓民国の偉大さを語り始めた」と大統領が言ったときには、すでに過ちは始まっていたのだ。(なんというフラグ)
警戒心を持つのは簡単でも、保つ続けるというのは今も昔も本当にむずかしい。

 

 

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2 件のコメント

  • 2月にもうすぐ収束するみたいな発言の後、爆発的に感染者が増えてましたよね。w

  • 文大統領はフラグの達人ですから。
    でも日本も外出自粛が緩和されてきたいまこそ要注意ですね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。