政府レベルでの日本人と韓国人の違い:即時撤回 vs 慎重確実

 

最近、日本語を学んでいる韓国人(たぶん30代の男性)とネットで知り合って、何度かメールでやり取りをした。
その中で、日本人と韓国人の違いについてたずねたらこんな返事がくる。

「韓国人は大体せっかちで早いのが好きで遠回しに話すのが苦手です。」

まさにド正論。
まったくその通りで、日本人の表現は遠回しが多いけど、韓国人は直球ストレートでハッキリ言う。
日本人は時間をかけてゆっくりものごとを進めるけど、韓国人はすぐに結果を求めたがる。
こういう性質を知人の韓国人は「パリパリ」(早く早く)と呼んでいた。

慎重も一気呵成も場面や状況によって良くも悪くもなるから、これはどちらが良いかという問題ではなくて、あくまで日本人と韓国人の国民性の違いということ。
スピード重視の韓国人と忍耐力のある日本人はやっぱり違う。

 

韓国の場合、国民の代表である政府もパリパリ。

いま韓国政府は日本に対して、フッ化水素など3品目に対する輸出規制の撤回を強く求めている。
*「輸出規制」というのは韓国側の表現で、実際には日本政府による輸出管理強化だけど、ここでは韓国側の立場から輸出規制と書くことにする。

韓国は日本政府にこの措置の撤回とホワイト国への復帰を要求しているのだけど、それには韓国が越えないといけないこんなハードルがある。

・両政策対話が開かれていないなど、信頼関係が損なわれている。
・通常兵器に関する輸出管理の不備がある。
・輸出審査体制、人員の脆弱性が解消されなければいけない。

この3条件がクリアされない限り、韓国への輸出規制の撤回やホワイト国復帰はない。
これに要する時間は、「数年かかるだろう」と日本政府関係者は昨年末に話していた。

くわしいことはこの記事をどうぞ。

韓国「輸出規制を撤回しろ」→日本「条件は3つ、数年かかる」

 

でも、せっかちな韓国人がそんなに待てるはずない。

日本が「数年はかかるだろう」と言った半年後、韓国側は条件はすべて完全にクリアしたと発表する。
その上で産業部(日本でいう経済産業省)の担当者は日本にこう迫った。

中央日報の記事(2020.05.12)

李政策官は「輸出規制強化措置を原状回復させるのにためらう理由はない。昨年7月1日に日本政府が対韓国輸出規制強化措置を発表してから1年が近づいている状況だ。これ以上懸案の解決を遅延させることもできない」と述べた。

韓国産業部「日本、輸出規制強化措置の原状回復にためらう理由ない」

 

韓国への輸出規制とホワイト国復帰は日本の決定領域にあるから、これは日本政府がきめることで韓国にその権限があるわけない。
韓国側が「条件を整えた」と宣言するのはいいけど、それが適切に運用されるかどうか日本は見極めないといけない。
例えば人の数だけそろえても、経験や知識のない人間だったら意味がない。
けっきょく韓国がこれまで失った信頼を回復するには、やっぱり数年はかかるだろう。

 

でも、韓国は韓国の立場でものを言うから、「日本、原状回復にためらう理由ない」とすぐに結果を求めてくる。
気持ちはわかるが待ってほしい。
確認して判断するのは日本であって、韓国がそれをすることはできない。
いま韓国がしていることは、受験生が採点者を兼ねて、自分で自分に合格を出しているようなものだから意味がない。
「オレは合格点に達した。すぐに合格証を出してくれ」と言われても、「あなたにその権限はありません」としか言えない。

韓国はさらに攻める。
即時撤回を強調するため、日本に期限まで設定した。
産業部は「日本は韓国に対する3大品目輸出規制とホワイトリスト除外決定に関する立場を今月末までに明らかにすべきだ」と主張する。
つまり明日までに、日本は立場を明らかにしないといけない。
スピード重視でプロセスをまるで無視している。

 

でも日本経済新聞の記事(2020/5/12)によると、日本も韓国を無視している。

緩和を急ぎたい韓国側が期限を設定し回答を促した格好だ。(中略)日本の経済産業省は、まず制度の運用実態を見極める姿勢だ。そのうえで輸出優遇国に戻すかどうかを慎重に判断する。

韓国、輸出管理の緩和要請 日本に「月末まで回答を」

いまのところ日本政府は何の反応も見せず、韓国の主張を黙殺。
このまま「丁寧な無視」を貫いていて、明日までの回答もスルーするだろう。

 

韓国が「改善した!」と言えばすぐに撤回するのではなくて、韓国側の運用実態が適切かどうか時間をかけて確かめる。その上で輸出規制の撤回やホワイト国復帰を判断する。
日本政府のこんな姿勢は多くの韓国国民からは反発を受けるけど、ほとんどの日本国民からは支持されるはず。

スピード命でせっかち韓国人とゆっくり丁寧、確実性を重視する日本人とは政府レベルで違うのだ。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

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近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

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4 件のコメント

  • >慎重も一気呵成も場面や状況によって良くも悪くもなるから、これはどちらが良いかという問題ではなくて、あくまで日本人と韓国人の国民性の違いということ。

    という考え方ができるのは日本人だけで、韓国人はそうじゃありません。韓国人の考えでは、「早い方が良いに決まっている」これに尽きます。
    だからダメなんですよ。話になりませんね。

  • その表現は、全然正確になるとは思いませんね。
    たとえ個人の主観であっても、これまでの経験上、あるいはその他さまざまな情報等に基づき、証拠が十分にあると確信している事項については、私は「~と思います」などと言い訳がましい語尾はつけません。
    その語尾をつけるのは、あまり自信が持てない場合、もしかすると事実は異なるかもしれないと自分で(多少は)疑っている場合だけですから。
    「正確」という日本語の意味を、よく考え直した方がいいんじゃないですか?
    あなたの言っていることは「自分の考えに対してより近い立場になる」という意味ですね。それが「正確」とはとても私には思えません。

  • 「と思う」のではなくて客観的な事実なら、それを裏付ける根拠を見せればそれで十分ですよ。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。