軍艦島:「日本が約束を破った!」と韓国が大声で言いたい理由

 

これは長崎にある島・端島(はしま)。

明治から昭和時代にかけて海底炭鉱によって栄えた島で、この見た目から「軍艦島」と呼ばれている。

 

 

軍艦島は2015年にユネスコの世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」に登録されたのだけど、そこにいたるには艱難辛苦、隣国妨害があった。

くわしい経緯はここを見てほしい。

韓国は「かつて日本が軍艦島で朝鮮人を強制労働させた過去」を理由に官民を挙げて、端島の世界文化遺産登録を阻止する運動を開始した。

端島_(長崎県)#韓国による世界遺産登録反対運動

 

軍艦島についての理解を深めるために、日本政府は東京・新宿にある「産業遺産情報センター」で、当時の様子を知る元島民の声を一般公開することを決定。

ただその内容は「朝鮮人を強制労働させた」という韓国の歴史認識とは違っていて、「朝鮮人に対する虐待や差別は聞いたことがない」という内容だったから、あちらは激怒。

ここでは国内最大部数を誇る朝鮮日報の社説(2020/06/16)をみてみよう。

日本、軍艦島「強制労働」表現の合意破りながら約束をうんぬんする資格はあるのか

 

「虐待や差別はなかった」というのはあくまで経験者による証言で、日本政府がそう結論づけたわけではない。
歴史資料として生き証人の声を紹介することは、韓国をはじめどこの国でもやっている。

でも上の記事のように、韓国ではいまこれが「日本による約束違反」と認識されていて、各マスコミが連日そう報道しているから、国民もそのまま信じているはず。
韓国メディアによる「日本=加害者、韓国=被害者」という韓日関係の設定は、相変わらず何ひとつ変っていない。

結論からいうと日本はちゃんと約束を守っていて、「合意破り」という韓国の指摘は的か見当のどちらか(または両方)を外している。

 

話は2013年、日本がユネスコに軍艦島の世界遺産登録をしたときにさかのぼる。
このとき先ほどのように韓国が反対運動を行って、それに疲れた日本が譲歩する形で「日本が徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じる」ことを条件に登録が認められた。

それがいまの韓国ではこうなっている。

日本政府は、「1940年代、韓国人らが自らの意思に反して動員され、過酷な環境下で強制労働をしたことがあった」と認め、展示施設に被害者をたたえる内容を盛り込むと約束した。

日本、軍艦島「強制労働」表現の合意破りながら約束をうんぬんする資格はあるのか

 

日本は「強制労働」という表現を一度も認めていない。

軍艦島は炭鉱だったから、そこでは日本人や朝鮮人労働者(台湾人?)が過酷な労働をしていたことは事実だけど、それは国民徴用令にもとづくもので「強制労働」とは違う。
強制労働はナチス=ドイツが収容所でユダヤ人などにさせていた戦争犯罪のことで、合法的に行われていた軍艦島での労働とはまったくの別もの。

当時の読売新聞の社説(2015年07月08日)を見ると、韓国側がこの表現にこだわり、日本はガンとして否定していたことが分かる。

日本側が抗議し、事前調整は難航した。韓国は、徴用が「強制労働」であるかのような国際的な宣伝に力点を移したのだろう。文化財保護を目的とする場で、歴史問題での自国の立場強化を狙うのは、筋違いなロビー外交である。

産業革命遺産 祝賀に水差す韓国の政治工作

 

このとき韓国は施設を奴隷輸出港になぞらえたというから、これはもう徴用工の話ではなくて、大航海時代に欧米人がした奴隷貿易のようだ。
もっとも国際社会にそう印象づけるのが「韓国の政治工作」なのだけど。

 

日本政府が「強制労働」を認めたと朝鮮日報は書いているけど、日本が韓国の一方的な歴史認識や表現に同意するとは考えられない。
これはあちらが都合よく解釈しただけのこと。
韓国側いまでも、「徴用が「強制労働」であるかのような国際的な宣伝」をしているのだろう。

朝鮮日報は日本がユネスコを利用して、「国際社会との約束を破ったのだ」と強く非難するけど、それは事実ではなく、日本が当時、徴用政策を行っていたことはちゃんと展示して説明もしている。

でも韓国は自分たちの歴史認識と表現しか認めないから、日本が説明しても理解は深まらない。むしろ都合のいい解釈をされてさらに亀裂が深まる可能性が大。

結局、いまの韓国が全力で言いたいことはこれだ。

そのような日本に、日帝強制徴用に関する2018年大法院判決を韓日請求権協定違反だと言い、「韓国は国際法を守らない」と批判する資格があるのだろうか。

 

慰安婦合意や日韓請求権協定で、日本はすべての約束を守ったけど韓国は破った。
韓国は慰安婦財団を解散せたし、請求権協定をひっくり返して日本企業に賠償を命じたのだからこれは間違いない。

でもそれだけに、日本から「約束違反」と何度も責められることに韓国は、大きなフラストレーションを感じていた。
「だったら約束を守ればいいじゃん」という常識的なツッコミが通じる相手じゃない。

いままでの劣勢を挽回するべく、韓国としてはとにかく「日本こそ約束違反をした」という構図をつくり上げて、日本に対して外交・道徳的に優位なポジションを確保したいだけのこと。
そもそも、していない約束は破れない。

さて先ほどの読売新聞の社説はこう結んでいる。

今回の騒動で、日本国内の「嫌韓」感情はさらに高まった。日韓関係改善の機運にも、冷や水が浴びせられたのは間違いない。

今回も「韓国の政治工作」もきっと同じ結果に終わる。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。