2週間ほど前、テキサス出身のアメリカ人と静岡県内をドライブしていたら、彼が急に笑い出した。
そのアメリカンは30を超えたおっさんで、箸が転んでもおかしい年ごろ(昭和っ)でもないし、「何だろう?」と思って前をよく見たら理由が判明。
「JUST FUCK IT!」
正確な意味は分からないけど、おそろしく下品な意味に違いない。
そう思って助手席のアメリカ人には聞かなかったけど、ネットで調べてみると「ほっとけ」のラフな言い方らしい。
アメリカでfuckは放送禁止用語だから、もっとヒドイ意味を想像してたけど意外とマイルド。
でもアメリカ人の感覚だと、これは車に付ける言葉じゃないらしい。
といっても彼に不快感はなくて、ただ「日本人らしくて面白い!」と思っただけだった。
それから彼は、「こんなのは全然問題じゃない。アメリカでは「南軍旗」をこれ見よがしに車に貼るヤツがいる。ムカつくのはそういう連中だ」と話しだす。
南軍旗とはアメリカ最大の内戦、南北戦争(1861年~1865年)で敗北した南軍(アメリカ連合国)が使っていた旗のこと。
アメリカでこの南軍旗に対する見方は大きく二種類に分かれる。
その人の価値観と、あえて言えば“皮膚の色”によって違っていて、北軍に抵抗した「南部の誇り」と考える人もいるし、南北戦争のとき南部は奴隷制に賛成していたから「人種差別・白人至上主義の象徴」とみる人もいる。
アフリカ系アメリカ人や南部以外の住民の中には、これらの旗を奴隷制や有色人種差別を正当化する人々のシンボルとして忌避する者も多い。
有色人種に対して差別意識を持つ白人にはこの旗を好きな人が多いという。
ことし5月、黒人男性が白人警官から暴行を受けて死亡する事件が起きて、「Black Lives Matter」(黒人の命は大切)という人種差別撤廃運動が全米に広がって、いまも盛り上がっている。
2020年6月のピュー・リサーチ・センターの世論調査では、人種や民族を問わず、アメリカ人の大多数がBlack Lives Matter運動への支持を表明していることが明らかになった。
近年では、デモと言うよりも黒人による国家アメリカに対する「復讐」としての側面が強い。
それで南軍旗に対する見方も厳しくなっていって抵抗のシンボルよりも、奴隷制・人種差別・白人至上主義の象徴といった負の面が強調され、最近ではアメリカ社会からの「退場」を命じられることが多くなった。
読売新聞の記事(7/18)
「分断の象徴となる」奴隷制支持した南軍の旗、米軍基地で掲揚禁止へ
朝日新聞の記事(7/18)
南軍旗の使用、米国防長官が禁止 トランプ氏と一線画す
在日米軍基地でも使用禁止になったし、スポーツ観戦での持ち込みもダメになったらしい。
さて話を冒頭のアメリカ人に戻そう。
彼の出身地テキサスは南北戦争のとき、南部(アメリカ連合国)の中心だったから、いまでも南軍旗を家に掲げたり車にステッカーを貼る人が多くいる。
彼はヒスパニック系アメリカ人で、中学・高校時代に白人から人種差別的ないじめを受けてきたから、この旗を激しく嫌っている。
いじめをした側にはこれを「誇り」にするような人が多いと思う。
非白人で歴史を学ぶ彼にとって、南軍の将軍の像や南軍旗などは過去の記念物ではない。
それを見たり使ったりすることで今のアメリカ人の意識が、人種差別や白人至上主義を当然と思っていたころのアメリカ人につながって、現代にその意識が「再生産」されてしまう。
だから、そうしたシンボルは社会からなくさないといけないと彼は考える。
彼が日本を好きな大きな理由はいきなり南軍旗を見せつけられて不快になることはないし、アメリカのような暴力的な人種差別行為もないから。
それと「JUST FUCK IT」みたいに不意打ちで笑わせてくれるから。
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>彼は、「こんなのは全然問題じゃない。アメリカでは「南軍旗」をこれ見よがしに車に貼るヤツがいる。ムカつくのはそういう連中だ」と話しだす。
そのアメリカ人といい、韓国人といい、なんでそこまで「旗」に重要な意味を見出すのですかね? たかが「旗」でしょう。
日本人にはその感覚は分かりませんね。
それぞれ旗の内容は違いますが、現在の価値観に影響を与えているからでしょう。