大久保利通が暗殺された「紀尾井坂の変」が起きた1878年(明治11年)、江戸時代の負の遺産がまだ残っていた日本にイザベラ・バードというイギリス人が旅行でやって来た。
船が横浜港に着いたとき、彼女は日本の印象をこう記す。
わたしの受けた第一印象は、この国はよく統一されているというものです。上陸したとたん、サンパンや人力車の料金表、掲示板の広告文、きちんとした警察官、乗り門の提灯、外国紙幣の拒絶、郵便規則などなど、『規則』に出会うのですから。それにこれも言わなければならないでしょうか。ぼられることがまるでないのです!
「イザベラ・バードの日本紀行 (講談社学術文庫) 」
栃木県壬生町から鹿沼市の日光杉並木に至る例幣使街道では、よく手入れされた大麻畑や街道沿いの景色に日本の美しさを実感したと書いている。
イザベラ・バードほどじゃないけどボクも旅行は好きで、これまでに東アジア・東南アジア・中東・アフリカを旅行した経験があるから、たまにおススメの国をきかれることがある。
はじめて海外旅行に行くなら、何といっても微笑みの国タイがいい。
今回はタイの話だから、まずはこの国について基本的なことを知っとこう。
1 面積:51万4,000平方キロメートル(日本の約1.4倍)
2 人口:6,572万人
3 首都:バンコク
4 民族:大多数がタイ族。その他 華人,マレー族等
5 言語:タイ語
6 宗教:仏教 94%,イスラム教 5%
数字は外務省ホームページのタイ王国(Kingdom of Thailand) 基礎データから。
日本のタイの首都を重ねるとこんな感じ。
「自由」という意味の国名のタイは物価が安いし、東南アジアの中ではかなり発展しているから、地下鉄・電車・飛行機でどこでもラクに移動できるし、コンビニやスーパー、屋台がそこらじゅうにあるから必要な物はすぐ手に入る。
観光地としても魅力も申し分なし。
南に行けばグルメエメラルドグリーンの海が広がっていて、北では象に乗って少数民族の村を訪問することができるし、疲れを感じたらマッサージ店へ行けば解決できる。
*気持ちよすぎて寝てしまい、気づいたときには財布からお金がなくなっていたという日本人もいた。
とにかく、いろんな旅のニーズを満たしてくれるのがタイという国。
でもそんなパラダイスには、「外国人料金」というものがありやがります。
観光地にある博物館や公園、ゴルフ場などでは、タイ人の数倍の料金を外国人に請求するのが呼吸なみの常識となっていて、大抵の観光地ではこれが設定されているから、普通の旅行者がこれを避けることはまず不可能。
だから、タイで出会った日本人旅行者がよくこの不満を言っていた。
お寺の場合、タイ人なら無料のところを外国人だと数百円を払わないといけないことが多い。
不平等を否定したのが仏教なのだけど。
個人的に外国人料金というのは横入りと同じで、現実的なダメージは少ないものの不快感が大きいから、これが何度もあるとマッサージでは除去できないストレスがたまってくる。
お土産屋とか旅行代理店といった店ではなくて、国立施設もこういうことをするから「国を挙げてのボッタくりだ!」と怒る日本人もいた。御意。
その思いは他の国の人も同じで、タイに存在する外国人料金には前から抗議の声は上がっていた。
数年前、タイで生まれ育ったアメリカ人が友人とクラビというリゾート地のプールを利用しようとしたら、タイ人の入場料金20バーツ(約60円)の10倍の200バーツ(約600円)を請求されて、SNSで「これは差別だ!」と怒りをぶちまけた。
これには外国人からの共感が殺到して、現地でちょっとしたニュースとなった。
そんな外圧に押されたこともあり、タイ政府もついに決断したようだ。
タイランドハイパーリンクスの記事(2020年9月6日)
外国人料金廃止に一歩前進か?タイ在住外国人に身分証明証を発行する案
いま外国人旅行者の入国をシャットアウトしているタイでは、日本の「GO TO トラベル」のように、国内旅行を盛り上げるための「We Travel Together」というキャンペーンをしている(これから始まるかも)。
それに合わせて、タイ政府は外国人料金を可能な限り早く終わらせると約束したという。
といっても、シャンパンを開けるのはまだ早い。
それはタイに住んでいる外国人が対象で、海外から来る普通の旅行者には適用されない。
でもこれまでは議論があっただけで具体的な動きはなかったから、これは廃止に向けた大きな一歩になりえる。
タイを訪れる全ての外国人が、「この国ではぼられることがまるでないのです!」と言える日が早くきてほしい。
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> それにこれも言わなければならないでしょうか。ぼられることがまるでないのです!
> 「イザベラ・バードの日本紀行 (講談社学術文庫) 」
> タイを訪れる全ての外国人が、「この国ではぼられることがまるでないのです!」と言える日が早くきてほしい。
イザベラ・バードによる評価は(自由市場経済を旨とする日本にとって)大変名誉なことであるとは思いますが。
ただなぁ、それほど他国のことを言えた立場でもないような。
おそらく、江戸時代という長い期間にわたり外国人と接触する機会がほとんどなかった日本人にとっては、「外国人旅行者向け特別料金」などという発想が、思いつかなかっただけというのが実際のところでしょう。
日本だって、「地元民やなじみの客にはお値打ち価格で、他所からの一見さんには観光客向け価格で」と言う考え方が、今でもありますよね。ぼったくりと騒ぐほどではないかもしれないですが、考え方の基本は同じでは?
「イザベラ・バードの日本紀行」を読むとわかると思います。
当時の日本の様子もわかっておススメです。
タイの外国人料金は金閣寺や東京国立博物館が設定するようなものです。
>タイの外国人料金は金閣寺や東京国立博物館が設定するようなものです。
世界は様々だ。