日本人とタイ人の価値観の違い。死体はOK、タバコはNG

 

「正しい」の基準は人の価値観や立場、利益によっていくつでもある。
だから海外へ行くと「日本でこの表現はOKだけど、この国ではNGなのか!」と驚くことがあるし、日本へ来た外国人もきっと同じ理由で衝撃を受けるはずだ。
海外旅行の目的は、そんなカルチャーギャップやショックと出会うためでもある。

 

さて20年ほど前、名古屋からタイの首都バンコクへ向かう飛行機の中でタイの新聞を広げていたら、殺人事件の記事を見つけた。
航空会社が用意していた新聞だから、地方紙ではなくて全国紙だろう。

記事はアパートの部屋で、女性が交際相手(?)に電気コードで首を絞められて殺害されたもので、ご丁寧に、そのときの様子を再現した写真がありやがりました。
「新聞が悪趣味なことをするな」と思ってよく見たら、それはなんと“本物”と判明。
死体となった女性は首にコードが巻かれたまま、ベッドの上で仰向けになって目を閉じている。
隣に座っていた日本語のわかるタイ人がそれを教えてくれて、彼の話では、日本と違ってタイの新聞はこういう写真をよく載せるという。
実際タイの新聞で、交通事故で壊れたバイクと一緒に、血だらけになって地面に倒れている死体らしき写真を見たことアリ。

「ああいう写真を読者に見せていいのか?」と宿のタイ人スタッフや日本語ガイドに聞いたところ、殺人現場の“ガチ写真”があると新聞の売り上げがよくなるから“読者サービス”としてタイでは許容されているとのこと。
それでも、腕が取れた遺体の写真を見て「これはやり過ぎ」と思ったというタイ人ガイドもいた。

タイという国名はもともと「自由」という意味だけど、これは自由すぎる。

 

 

日本の新聞がそんな写真を公開したら、批判殺到からのジャンピング土下座はまず避けられない。
逆に日本の基準ならOKだけど、タイでNGというものもあった。

タイを旅行中、ホテルの部屋でテレビをつけたら、音声は日本語でタイ語字幕の日本のドラマを放送していた。
タイでも日本のドラマは人気があるのかとやや誇らしく思っていると、喫煙らしきシーンがでてきる。
登場人物は絶対にタバコを吸っているのだけど、口元にはモザイクがかけられていてハッキリとは見えない。
「タイで喫煙シーンは放送禁止なのか?」と思ってホテルの従業員に聞いたら、「タバコは健康に悪いからね」と言われ、「知ってるわ」と心の中で突っこみを入れた。
「若い人たちが真似するといけないからね。タイの人たちはテレビの影響を受けやすいから、あれは必要な配慮だよ」と先生のようなことを言う。
でもアンタ、お釣りの計算は間違えたよね?
いまから思えば、あれは意図的なミスだったかもしれない。

とにかく、不特定多数の人に死体を見せるのはよくて、タバコはNGというタイ基準が日本人のボクには謎で印象に残った。
表現の仕方や自由の範囲から、日本人とタイ人の価値観や死生観の違いがみえてくる。
ただ話によると最近ではタイの新聞でも、死体の写真は載せないようだ。

 

 

こちらの記事もいかがですか?

世界に広がる日本のアニメ、日本最古のマンガ「鳥獣戯画」。

ユニーク動画で英語を学ぼう㉞世界が驚いた「日本の7分の奇跡」

英会話を学ぼう 85 テーマ:日本の引きこもりを外国人はどう見た?

英会話の話題・雑学に:あなたの都道府県を英語で言うとこうなる。

日本はどんな国? 在日外国人から見たいろんな日本 「目次」

 

2 件のコメント

  • なるほどねぇ。死体の話も、タバコの話も、日本人の感覚からすればごもっともです。
    が、一つ指摘しておきますけど、どちらの話も世界標準に近いのは(どっちかと言えば)タイの方ですよ。たとえば欧米における映画等の年齢規制は、暴力行為に関しては日本なんか問題にならないほど非常に厳密ですが、死体そのものに関してはそう厳しい規制もなくて、TVなんかで露骨にバラバラ死体が映ってしまうとか、時々あります(もちろん後で問題にはなりますが)。
    比較すると日本の方が特殊なんです。アニメにおけるエロ表現に対する考え方と同様です。

    まあ、何でも世界標準側に合せる必要はないとは思います。ただ、余計なトラブルを避けるためにも、日本人の考え方が決して世界標準であるとは限らないことを、よく注意する方がいい場合も多いですね。思い込みは避けて、ケース・バイ・ケースの判断が必要です。

  • まあタイの新聞の場合はただの野次馬根性なんですけどね。
    アニメの性表現では日本は自由すぎます。最近も「異世界レビュアーズ」が海外で放送禁止になって、日本もそうなりました。
    でもアニメは海外市場を意識してつくられるものも多いですから、自制した作品は増えているように思います。

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。