天皇とタイ国王の違い・米国人が考える、日本に革命がない理由

 

日本に住むタイ人が最近、SNSでこんなメッセージを投稿した。

「日本の皆様へ タイを助けてください。
この6年間、嘘、不公平、不正当な暴力を起こした現政府、及びその黒幕に抵抗するため私たちは抗議活動を行っています。」

いまタイでは反政府デモが続いていて、首都バンコクでは若者を中心に数千人が集まってプラユット政権の退陣を要求している。

それで日本人に支持を呼びかける声がある一方で、知人のタイ人から話を聞くと、いまの政府は嫌いだけどデモ隊の主張にも同意できないと言う。

現政府を支える「黒幕」とは国王のことで、そのタイ人は基本的に王室を支持ているけど、金を湯水のように使ういまの国王には批判的。
でも王室を改革するには法改正をふくめ長い時間と議論が必要だから、いまはそこまで求めるべきではないと考えている。
いま最も大事なことはコロナで大ダメージを受けたタイ経済を立て直すことなのに、デモ隊は大声で現状を否定し打破を訴えるけど、「そのあとタイをどうするか?」の提案がない。

そんなわけで知人のタイ人は現政権にもデモ隊にもつくことはできないけれど、いままで好きだった国王や王室に対しては確実に心が冷たくなっているという。

国民がコロナで苦しむ一方でぜい沢な暮らしをする現国王を見て、これまで禁止されていた王室批判をはじめる人が増えてきた。

毎日新聞の記事(2020年10月17日)

デモ隊は軍を基盤とするプラユット政権の退陣に加え、従来タブーとされてきた王室への批判を展開し、改革も要求。背景には2016年に即位したワチラロンコン国王の行動に対する不満の高まりがある。
タイ政府は15日に非常事態宣言を発令し、バンコクで5人以上の集会を禁じた

タイで続く混乱 背景に国王批判 王室庁の予算倍増、ドイツでの生活に若者ら不信感

 

「ドイツでの生活に若者ら不信感」というのはこの記事の内容。

ドイツの高級ホテルに愛人20人。タイ国王に国民の思いは?

5兆円近くある王室資産とは別に、王室庁の予算を倍増するというのは、21世紀の民主主義社会にふさわしくない。
日本の天皇を見ると、いまのタイ国王とは考え方やライフスタイルが全然ちがうことがわかる。
先ほどでてきたタイ人も日本に来て、質素な皇室を見てタイとの価値観の違いにおどろいた。

さて話が長くなったけど、いつの時代も国民は王や皇帝の金の使い方に目を光らせていて、不満や怒りを感じやすい。
そして歴史上、それはブーメランとなって王室を直撃して、改革以上の大変化をもたらすことがよくある。

 

御所の正殿竹の間で、トランプ大統領夫妻と会見される天皇皇后両陛下(2019年)

 

友人のイギリス人やインド人がきょねん、天皇は地球上で最後に残ったエンペラー(皇帝)なのに、上の部屋のような簡素な部屋で生活しているのを知って驚き感心した。

神道の影響もあると思うけど、日本人は木が本来もつ美しさを大事にしていて、派手な色を塗ったり木製の家具に精巧な彫り物をほどこすことが少ない。
そんな日本のシンプル・ビューティーに強い印象を受ける外国人はむかしから多くいて、例えば江戸時代にはオランダ人のカッテンディーケがこう言った。

「日本人が他の東洋諸民族と異なる性質の一つは、奢侈贅沢に執着心を持たないことであって、非常な高貴な人々の館ですら、簡素、単純きわまるものである」

*奢侈(しゃし)とは度を過ぎてぜいたくな様子。

日本では天皇のいるところでさえとても簡素だったから、幕末の日本を訪れた清の使節も中国皇帝の豪華さとの違いに目を見張った。

 

勝海舟と深い親交のあったカッテンディーケ
カッテンディーケの影響を受けて、1864年に勝が神戸海軍操練所を設立した。

 

数年前にアメリカ人を京都の修学院離宮へ連れて行ったとき、彼女に感想を聞くと「ここが本当に天皇の別荘だったの?」と逆に聞き返された。

 

 

オマケに言うと、モノを大事にされていた昭和天皇が乗っていたのは型落ちのインテグラだった。

 

 

自由や平等を尊重するアメリカは生まれながらの王や貴族といった身分社会とは無縁の国だから、そのアメリカ人は「高貴な存在」というものに興味を持っていて、フランスに行ったときにはヴェルサイユ宮殿を訪れた。

 

ヴェルサイユ宮殿の鏡の間

 

女王の寝室

 

果てしないほど豪華で巨大なヴェルサイユ宮殿を見て回って、彼女は国王の生活がよく理解できたという。
あれを見たら当時の国民がブチ切れて暴れ出し、革命を起こして王政を廃止した背景がよく分かるし、「自分も平民として生まれていたら、絶対に銃を取っていた」と話す。

ヴェルサイユ宮殿のほかにも地方領主の城に行って、中世ヨーロッパ貴族の光り輝くような生活を知ったアメリカ人からすると、修学院離宮にあった木がむき出しの建物はまるで村の休憩所。
とてもじゃないけど「皇帝」と呼ばれる人間が使っていた部屋とは思えないし、自分が見たどのヨーロッパ貴族の建物より”しょぼい”。

ちなみにイギリス国王・ヘンリ8世(1491~1547)はこんな感じだった。

プレジデントオンラインの記事(2020/10/12)

年間の衣装代は4,000ポンドに及んだとされています。彼が1年間に作らせていたシャツは200着、帽子は37個、タイツは65~146組の間、靴下は60組、サテンの靴、ベルベットのスリッパ、革製のブーツなど履物は175組にのぼりました。

「ガンディーはぞっとするほど不快」チャーチルの極悪非道な人種差別

 

ヘンリ8世は金遣いの荒い国王だったけど、知人のアメリカ人にとってはヨーロッパの王や皇帝、貴族はだいたいこんな感じだ。
修学院離宮や京都御所を見て天皇の生活を知って、それとヨーロッパ貴族の生活と比べると、日本で革命がおきなかった理由がよく分かったと話す。
天皇が質素な生活をしていたことが「安全装置」になっていたから、天皇は滅ぼされずに地上唯一のエンペラーとしていまも存在している。
いままで持っていた「日本の謎」がこの京都旅行で解けたという。

 

おまけ

いまこんなテレ朝ニュースを発見。(10/17)

タイ国王“異例”肉声で 「王室愛する国民が必要」

政府の退陣や王室改革を求める声に対し、国王が「いまタイには国を愛し、王室を愛する国民が必要だ」 と訴えかけたという。国王の肉声が報じられるのはタイでは激レア。
でも、多くのタイ人の思いはその逆だろう。

バンコクに住む知人のタイ人に聞いたらこんな返信がきた。

「Why do you have to pay that large amount of money for someone to luxuriously live abroad」

いま国民は不景気、失業、渋滞、洪水などで苦しんでいるのに、国王が海外でぜい沢な暮らしするための金を払っていることにガマンできないようだ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。