きょう10月25日は「世界パスタデー」。
この記念日はわりと新しくて、1995年のこの日に宗主国イタリアで世界パスタ会議が開かれたことにちなんでつくられた。
なので今回は現代イタリアのピザの事情について書いていこう。
イタリア料理といえばパスタとピザが双璧で、日本では「つばさ君とみさき君」に例えられることが多い。(は?)
でもいまのイタリアでは、この伝統料理を作るイタリア人は減少中で、代わりに増えているのが外国人、特にエジプト人のピザ職人と店のオーナーだ。
イタリアに数十年住んでいた日本人が書いた下のブログで、ミラノでは外国人経営のピザ屋の66%がエジプト人でローマでは59%、トリノでは49%とある。(2020-10-04)
ピザといえばナポリですが、ミラノでは10人のナポリ人のピザ職人に対しエジプト人は119人いるそうです。ミラノでは実に4人に1人がエジプト人のピザ職人だとか。
これはエジプト人だけの数字だから、外国人全体となるとパーセンテージはさらに上がる。
国際化の21世紀、日本も多文化共生社会に突入しつつあって、コンビニや携帯ショップで外国人店員がいてももはやフツーけど、寿司職人の約半数が外国人というのは考えられない。
いまのところは。
でも外国人比率にはバラツキがあって、移民の多い都市部では外国人のピザ職人が多いけど、田舎に行くとイタリア人が多くなるという。
ピザの母国で宗主国でもあるイタリアで、この伝統料理を外国人が作ってイタリア人が食べている現状を国民はどう思っているのか?
日本でもイタリア並みに、日本の味を継承する日本人が減って外国人が増えたら、メディアに取り上げられて国民的な危機感が生まれそうな気がする。
イタリアに興味があったり住んでいる日本人のSNSグループで聞いてみたところ、現地のイタリア人からは特にそんな話は聞かないようだ。
イタリア人にとって大事な「ピザ条件」は、自分の口に合った味と手ごろな値段、それと店員や店の雰囲気で、ピザ作りと国籍を結びつけるイタリア人には会ったことがないという人ばかり。
イタリア人にこだわるのなら、イタリア人職人が作るピザ店に行けばいいだけのことで。
では、寄せられたコメントを見てみよう。
「今どこの(有名であろうがなかろうが)イタリアンレストランやPizzeriaで働いている調理人さんの中でイタリア人はほとんどいません。」
「ピッツァ作るコンテストに 毎回 日本人が 優勝しています。
なかなか深い問題ですが、アジアでは非日本人のシェフによる和食レストランがミシュラン星を取っていますね。人種問わずスキルと味で評価される時代でしょうか」
「周囲を見回して感じることですが。
ピッツェリアで食べたり買ったりする分には、イタリア人は人種や国籍にこだわってないようです。」
イタリア国民のこだわりポイントは(先ほどと重なるけど)、味・焼き加減・パンの厚さ・値段・ピッツェリア(ピザ店)の雰囲気など。
ただナポリ出身のイタリア人なら、外国人がピザを作っているのを見るとイヤな気持ちになる人がいるかもしれないとのこと。
イタリアの中でも南部の都市ナポリのピザは特に有名で、ナポリに伝わるピザ職人の技「ピッツァイオーリ(pizzaioli)」はユネスコ無形文化遺産に登録され、ナポリピッツァには認定制度もある。
もちろんこれに国籍は関係ない。
「一昔はナポリ出身のピザ職人が多かったのですが、私が住んでいるミラノですが、Pizzeria何処へ行っても焼いているのはエジプト人。面白い事にうちの大家は元ナポリのピザ職人で友人がPizzeriaを経営している現役のピザ職人です^^」
「ピッツァも元々インドやユダヤ系のものがイタリア、ナポリで生まれ伝わって広まったもので、人種や国籍を限定するものではありません。イタリアの有名イタリア料理店のシェフも、ルーツを辿ると外国人だったりします。」
やっぱり大事なものは血より腕前。
人種や民族に関係なく、ピザ作りを何十年もつづけて、技術や伝統を受け継いだ人間がイタリアのピザ職人といえるという。
ピザのルーツについてはこっちにくわしい説明がある。
ピザが現在の形に近くなったのは、16世紀に新大陸からトマトがもたらされてからである。
イタリアのピザ職人にエジプト人などの外国人が多い理由は、母国よりも給料が良いというのはもちろんのこと、料理を作るのに必要なのは言語能力より“テクニック”という点が大きい。
それとこれはいまの日本も同じだけど、きつい仕事を嫌がるイタリアの若者が多い。
「これは世界共通の問題で、飲食で働きたい若者が少ないのが現状です。コストを下げる為、少ない人数で10時間以上の労働時間で安月給なら若者はオフィスを選ぶでしょう。ましてや、イタリアの飲食なんて、税金
、年金すらちゃんと払っている所なんてほとんどないでしょう。」
「イタリアはEUの中で最も難民を受け入れている(やむなく)国です。彼らの働ける場ということもあります。」
日本と違って陸続きのイタリアなら、他の国に行って働くことが容易にできるから、いい条件の仕事を求めてイタリアを出て行く人がたくさんいる。
だから他のヨーロッパの国やオーストラリアで、イタリア料理店で働くイタリアの若者がよくいるという。
ということで以上の話をまとめると、全体的にイタリア人にとってピザと国籍は無関係で、自分好みの味と手ごろな値段、それと店の雰囲気を重視する。
イタリアの伝統や文化を受け継ぐのは、イタリア人でも外国人でも気にしない人が多そう。
だからイタリアに行って、アラブ人がピザを焼いていてもそれはきっと本場の味だ。
日本の寿司も遠からずこうなるのでは。
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日本国内はまだかもしれないですが、海外ではとっくの昔にそうなってますよ。30年くらい前からでしょうか。米国はじめ、東南アジアでも、おそらくヨーロッパでも、どこの国でも、寿司屋で寿司を握っているのは、ほとんどが韓国人です。日本人の寿司職人なんて私は見たことありません(そんな店はすごく高そう)。寿司店を経営している日本人なら何人も会ったことがあります。米国だと、日本人は、鉄板焼肉屋のカウンターで調理をしている人の方がむしろ多いくらいです。
日本国内の寿司は、外国人が握るようになるよりも、ロボットが担当する方が早いんじゃないでしょうか? 回転寿司チェーン店なんか既にほとんどロボットが握っていますよ。人間はネタを上に載せるだけ。とあるチェーン店では来店受付もロボットが担当していますよね。
どのレストラン業界でも、人件費を削減することは重要な課題のようです。