日本初のアパートはいつどこで? マンションとの違いは?

 

知人のアメリカ人が平仮名とカタカナを覚えたばかりのころ、街の看板のいろんな文字を読むのを楽しみにしていた。
あるとき「アパマン」という言葉を発見した彼は、その文字を読むことはできるけど意味がさっぱり分からない。
それで一緒にいた日本人に聞くと、「アパート・マンションのことだよ。なんでアメリカ人が英語を知らないの?」と言われて、「いやいやいや、それ英語じゃねーし。アパマンなんて日本人がつくった日本語だし」と思ったとか。

 

 

いまの日本では全国どこにでもあるアパート。

この建物が日本で初めて建てられたのは1910(明治43)年のこと。
この年の11月6日、東京・上野に日本初のアパート「上野倶楽部」(5階建て70室の木造)が完成したことから、この日は「アパート記念日」になっている。

それから時代が流れていまでは「アパマン」のように、アパートとマンションが同じような建物として並べられているのだけど、この違いはわかるだろうか。

 

アパ・マンの違いがよく分からない人は多そうだ。

 

「上野倶楽部」のあと木造のアパートがいくつもできたけど、1923年の関東大震災のときに火災で大きな被害をだしたことから、不燃性の集合住宅が求められるようになった。
そこで登場したのが鉄筋コンクリート造りの「同潤会(どうじゅんかい)アパート」だ。

 

東京の表参道につくられた同潤会アパート

 

大正から昭和初期にかけて東京や横浜の各地に、鉄筋コンクリート造りの同潤会アパートが建てられた一方で、木造で質の低い集合住宅も同じように「アパート」と呼ばれるようなったため、「一緒にすんな!」と思った“鉄筋派”が別の言い方をするようになる。

差別化を図ろうと鉄筋コンクリート造り建造物についてはマンション(本来は「邸宅」の意味)という名称がよく使われるようになった。

アパート

 

本来海外でマンションは邸宅や豪邸という意味だけど、日本ではこんな特殊事情から、木造の集合住宅はアパート、鉄筋コンクリート造りのものはマンションと呼ばれるようになった。

21世紀のいまでは、アパートとマンションの違いに明確な定義はない。
その区別は物件を取り扱う企業の社内規定によって違うから、A社が「アパート」と呼ぶ物件がB社では「マンション」になることもあり得る。
*いまネットで見たところ、マンションは売買の対象となる点でアパートとは違うらしい。

業者によって見方が違うぐらいだから、一般人には「どっちも似たようなモノ」という認識でよく、あとは個人の見方にまかされる。
だから他人がどう言おうと、その人にそう見えれば「これはマ・ン・ショ・ン」で正解。
でも一般的には、マンションのほうが大きくて豪華というイメージがあるだろう。

 

「〇〇荘」というネーミングはアパートのもの

 

英語の「mansion(マンション)」とは金持ちの住む豪華な邸宅のことで、集合住宅の意味はない。
これはアフガニスタンで副大統領をしていた人物の家。
英語でいうマンションとはこんな豪邸を指す。

 

 

 

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1 個のコメント

  • 「アパート」「マンション」というのは建築用語ではなくて、この記事にも書かれている通り、素人向け営業効果を理由に分類・命名された不動産業界用語です。建築分野や法律分野では、正式にはどちらも「集合住宅」と呼びます。

    マンション(mansion)は記事に書いてある通り「大邸宅」という意味です。最近、海外でも「mansion」が「豪華なapartment」の意味で使われ始めているのは、おそらく、日系企業の手によって「数階建ての豪華な集合住宅」が、特にシンガポールを中心とした東南アジア地域で次々と建てられるようになっており、それを現地の日本人が(日本語と同じように)「マンション」と呼んでいるのが拡がったのでしょう。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。