1か月後を前にして日本の街はクリスマス・モードなりつつあるのだけど、日本に住んでいるアメリカ人がそんな雰囲気に冷や水をぶっかるような投稿をシェアした。
まず「atheist」とは無神論者のこと。
日本でも宗教や神を信じないという人は多いから「オレも!」と思うかもしれないけど、欧米のエイシエスト(atheist)の人たちは神や宗教に対して嫌悪や憎悪を持っていて、キリスト教をはじめ世界中の宗教をあえてディスって否定する傾向が強い。
そんなエイシエストが、現代ではキリスト教の行事とされているクリスマスにツッコミを入れているのが上の投稿。
約2000年前に現在のイスラエルで生活していたイエス・キリストはスノーフレイク(雪のかけら)、モミの木(fir tree)、トナカイ(reindeer)なんかを見たことがなかった。
つまりクリスマスとキリスト教は関係なくて、それはもともとペイガニズムのものだったという。
ここでいうペイガニズムとは、キリスト教の前にヨーロッパにあった宗教や信仰と理解しておこう。
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歴史的に “pagan” 及び “heathen” はユダヤ教、キリスト教、イスラム教といった一神教の信者によって自分たちの宗教を信じない者を指す軽蔑語として用いられてきた。
古代ギリシャ・ローマの宗教(多神教)やヨーロッパにあった自然崇拝の他に、ヒンドゥー教や日本の神道などもペイガニズムに分類されることがある。
スノーフレイク、モミの木、トナカイ、雪男といったクリスマスを象徴するものは、エイシエストから見るとペイガニズムのものであってキリスト教とは無関係。
ペイガニズムの文化をキリスト教徒が奪った、と主張しているのだろう。
日本では「仏教徒のくせにキリスト教のクリスマスを祝うなんて!」と批判する人もいるけど、そもそもキリスト教のイベントですらなかったようだ。
たしかに、イエス・キリストが12月25日に生まれたなんて記述は聖書にはない。
古代ローマの宗教、ミトラ教で12月25日は「不滅の太陽が生まれる日」とされていて、太陽神ミトラを祝う祭があったから、これが現代のクリスマスにつながったといわれる。
現在のクリスマスツリーの起源はドイツのペイガニズム(樹木崇拝)にあるという。
北欧神話における世界のイメージ
中心の木は、日本では世界樹と呼ばれるユグドラシルの木
以下、上の投稿に寄せられた、同じくエイシストのコメントを紹介しよう。
熱心なキリスト教信者はこういう考え方を嫌うから、これは一般的な見方ではなくてやや挑発的な意見であることは理解しておこう。
・More like Scandinavian paganism perhaps.
スカンジナビア(北欧)のペイガニズムだろうね。
・Everyone celebrates the season the way they want. Christians just want to FORCE everyone to celebrate the season THEIR way.
誰もが自分のやりたい方法で季節を祝う。キリスト教徒は、自分たちのやり方で季節を祝うことを全ての人に強制したいだけ。
・Let’s face it, Jesus is a figment of an unknown story teller’s imagination!
現実を見てみよう。イエスは見知らぬストーリーテラーの想像の産物だ!
・Like Santa Claus, Jesus is also an imaginary character.
サンタクロースのように、イエスも想像上のキャラクターだよ。
・Even if he did live, he certainly didn’t see Nordic levels of frost and firs in Jerusalem!
彼が本当にいたとしても、エルサレムで北欧レベルの霜(しも)やモミの木を見ていないのは確かだ!
・These symbols may have started out pagan but they have been integrated into the Western Christmas tradition for generations.
これらのシンボルはペイガンから始まったかもしれないけど、何世代もの間に、西洋のクリスマスの伝統に統合されていった。
・Western Christmas tradition has nothing to do with Christianity. It is a pagan festival which has been hijacked by commercialism. Celebrate your commercial festival if you want to.
西洋のクリスマスの伝統はキリスト教とは何の関係もない。商業主義に乗っ取られたペイガニズムの祭りだ。祝いたかったら、商業主義の祭りを祝え。
クリスマス・デザインのカップを見ただけで、ここまで盛り上がってキリスト教を否定するのが欧米の無神論者(エイシエスト)。
でも、「There are no atheists in foxholes」(戦場の塹壕で無神論者はいない=死にそうにれば誰でも神に祈る)という言葉があるように、その程度の信念かもしれない。
日本ではスタバのカップからこんな面倒な議論は起きないから、そもそも欧米と日本では無宗教や無神論の意味が違うのだろう。
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欧米の無神論者は本当の意味での「無神論」者、すなわち超自然的なことを何も信じず、価値を置かない、「唯物論」者です。しかもその方向の思想は「共産主義」者と近い位置にある。なので、欧米で下手に「無神論」を名乗ると「お前、コミュニスト(共産主義者)か?」と疑われます。マルクスが喝破したように「宗教はアヘンである」という見方は、共産主義的唯物論の見方でもあります。
旧ソ連でキリスト教(ロシア正教)の活動が認められたのは、ミハイル・ゴルバチョフ書記長の功績によるものですが、それは結局、ソ連崩壊への第一歩となりました。
中国共産党は未だに宗教活動を正式には認めていません。社会を不安定にする要因であるとして、迫害している。宗教(特にキリスト教)を、反体制運動の一派とみなす傾向も強い。
日本人の「無宗教」なんて、とてもそこまでは及びません。日本人は無宗教なのではなくて、非・一神教であるというだけです。日本人の心には、寛容で包容力のある「八百万の神々」が今でも備わっていると私は思いますよ。