【税関の話】米でリンゴに5万円の罰金、日本では夢の関税免除

 

10日ほど前のことなんだが、11月28日の記念日は「税関記念日」だった。

「なあ日本、そろそろ起きようか?」とアメリカから小突かれて、泰平の眠りから覚めた日本は鎖国をやめて、1872年(明治5年)のこの日、長崎・神奈川・箱館にあった「運上所」の呼び方を「税関」にかえた。
これによって日本に「税関」が誕生したことを記念して、財務省が1952年(昭和27年)にこの記念日を制定した。

運上とは江戸時代、商業・工業・漁業などで働く人に課せられた税のことで、長崎や神奈川にあった運上所では、税金の徴収や輸出入貨物の監督をしていたという。機能でいえばまさに税関。
いまでは国際社会の常識となっているこの税関、世界初かどうかは分からないけど、この制度は1203年にイギリスのジョン王の下で確立された(ウィンチェスター関税条令)。

 

そして、税関はとてもルールに厳しいというのも世界の当たり前。

2018年のアメリカでこんなことがあった。
機内食で配られたリンゴを「あとで食べよっ」と女性がバッグに入れて、そのまま乗り継ぎのミネアポリスで降りて税関を通過しようとすると、税関職員からストップをかけられる。
申告しないで生の農産物を持ち込こもうとしたことで、注意を受けただけでは済まされず、リンゴ1つのために約5万4000円の罰金を科せられた。

女性は抵抗してみたものの、職員から「フライト代は高かったか。それがもっと高くなることになる」と脅迫めいたことを言われてギブアップ。別室へ連れて行かれ、20日以内に罰金を払うよう言い渡される。

米CNNニュースで女性はこう語る。(2018.04.24)

女性は「私の経験が少なくともだれかの助けになれば」とコメント。デルタが袋にりんごに関する注意書きを入れるなどしてくれればいいと話している。

機内食のりんご、税関で見つかり罰金5万円 米空港

 

知らないと日本人も同じミスをやってしまいそう。
そうなったらまず間違いなく、何を言っても見逃してはくれない。

 

さて、海外での日本人のイメージにはこんなものがあると思う。

ルールや約束、期限を必ず守り、時間や計画どおりに物事を進める。1分単位で正確に運行している電車を見ればそれが分かる。
だからやることは正確だけど、日本人は融通が利かないし柔軟性に欠ける。

日本人に対するこんな印象はむかしからあるから、良い意味で予想を裏切ると外国人はよろこぶ。
昭和の時代、日本の粋な計らいにキャサリンという女性がこう言った。

「日本人は厳格ですが、寛大でもあります。外国人はクリスマスの直前に限り玩具は関税を払わずに持ち込んでよいと決めたのは、実に日本人らしいと思います。話が子どものこととなるとどんなに厳しい日本人の心もなごむのです。」

これは昭和いつごろの話だろう?戦前?
いまの日本人も子どものこととなると顔がゆるむけど、税関での関税免除は1000%ない。
「クリスマス直前!期間限定でおもちゃの関税取っ払いマス!」なんてサービスを、世界で最もやりそうにないのがこの国。
そんなルーズでのどかな日本は昭和で終わったのだ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。