11月21日の産経新聞にこんな記事があった。
台湾南端の屏東県恒春の岬にある「潮音寺」で20日、台湾とフィリピンの間のバシー海峡で戦死した日本人将兵の慰霊祭が行われた。遺族ら約120人が参加し、読経の後、岬の先端から海に向けて献花した。
台湾で日本人戦没者慰霊、バシー海峡で沈没
太平洋戦争中、バシー海峡とその近くで、多くの日本軍輸送船がアメリカ軍の潜水艦などによって撃沈された。それでバシー海峡は「輸送船の墓場」と呼ばれた。
バシー海峡で起きた悲劇について、いまの日本で知っている人は少ないと思う。
でも日本人が戦争と平和を考えるなら、知っておくべきところだ。
ミャンマーにある慰霊碑
小松真一氏という人がいた。
この人は太平洋戦争に従軍した人で、自身が体験した記録を「慮人日記」に残している。
この慮人日記の中で、小松氏は日本がアメリカに負けた理由を21あげている。
その1つに、「バアーシー海峡の損害と、戦意喪失」ということがある。
「バアーシー海峡」は先ほどの「バシー海峡」のこと。
フィリピンと台湾の間にある海峡で、海上交通の要所になっている。
この「輸送船の墓場」バシー海峡では、10万人から26万人の日本人が犠牲になったといわれている。
台湾とフィリピンの間に位置するバシー海峡。この海峡は大東亜戦争末期、南方に向かって航海中の船舶が、米軍潜水艦の魚雷により撃沈され“魔の海峡”、“輸送船の墓場”と恐れられました。少なくとも10万、最大で26万とも言われる多くの犠牲者が眠っています。
10万人といえば、東京大空襲で犠牲になった人の数と同じ。
26万人となると、広島・長崎の原爆犠牲者の合計に匹敵する。
日本の学校で戦争や平和について考えるとき、原爆や東京大空襲について学ぶことはよくある。
でも、バシー海峡について教えられることはない。
先ほどの小松真一氏は、日本の敗戦の理由にバシー海峡の損害を挙げていた。
さらにここでは、原爆の犠牲者と同じぐらいの死者を出している。
それにもかかわらず、今の日本ではバシー海峡の名はまったくといっていいほど知られていない。
それはなぜか?
とても簡単な理由で、記録がほとんど残されていないから。
このバシー海峡の地獄を経験して生き残った人があまりに少ないから、記録も残っていない。
だから今の日本では、忘れられた地名になっている。
この10万から26万人の尊い命も、今の日本人の記憶からはほぼ忘れられている。
でもここで起きたことを、歴史から消してはいけない。
冒頭の記事で、この悲劇の慰霊祭が台湾でおこなわれていることを知って、バシー海峡について書こうと思った。
日本人なら、知っておいてもいいことのはず。
このバシー海峡で、どのようなことが起きたか?
当時、日本軍は日本兵をフィリピンに運ぶため、輸送船に多くの日本人を詰め込んで出航させていた。
問題は、日本には制海権も制空権もなかったということ。
ということは、アメリカ軍は簡単にこの輸送船を攻撃することができてしまう。
この輸送船はアメリカ軍に対して反撃できない状態で、数ノットという遅さで進んでいた。
アメリカ軍の潜水艦はこの輸送船を見つけ次第、次つぎと魚雷で沈没させている。
相手から攻撃が来ないことは分かっているのだから、米軍にしてみたらゲームのような感覚だったのではないか?
こんなことは考えられない。
この輸送計画を立案し、承認した日本軍がまったく理解できない。
輸送船を撃沈させたアメリカ軍より、こんな計画を現実におこなった日本軍の方に怒りを覚える。
沈没した船から流れ出た日本人の遺体は、台湾の浜辺に流れ着いた。
マオビトウの浜辺は遠浅です。
この浜辺にも約15000体ものご遺体、軍馬が打ち寄せられたこともあったそうです。ご遺体収容は主として陸軍が行い、地元の台湾人の青年団が収容に協力をしました。
何日も海をただよっていた遺体は、凄惨な状態だった。
後年、中嶋氏は収容に当たった人から「遺体の軍服を持ち上げると、体全体に蛆のような小虫がびっしり取り付き肉体を食い散らし、骨片がボロボロと地面に落ちた」と聞いたそうです。
台湾の海岸には多くの日本兵の死体がたどりつき、台湾にある共同墓地にトラックで運ばれたという。
バシー海峡でたくさんの日本人が命を落としてしまったことを、頭のどこかに入れおいてもいいと思う。
戦争や平和を考えるきっかけになるはず。
同時に、海岸に漂着した日本人の遺体を、台湾の人たちが収容して埋葬してくれたことも覚えておくべきだと思う。
次回、このバシー海峡での悲劇について、もう少しくわしく描きます。
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時速数ノット・・・間違い。
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ノットにはすでに「時速」という意味があるのですね。
訂正しておきました。
ご指摘ありがとうございます。