【めでたい地名】日本人とキリスト教徒の発想のちがい

 

どうせ住むのなら、幸せな気分になれる場所がいい。
ということから、その地におめでたい名前を付けることは世界中である。
たとえばキリスト教文化圏の国なら、立派な行いをして深く尊敬されている聖人の名前にちなんで、都市の名前を付けることは伝統的に山盛りある。

聖人フランシスコからサンフランシスコ、ルイからセントルイス、ペテロからサンクトペテルブルクやサンパウロ、モニカからサンタモニカなどなど。
「山盛り」という表現は盛り過ぎとしても、キリスト教の聖人に由来する地名はぜんぜん珍しくない。

知人にサンクトペテルブルク出身のロシア人がいて、前に「日本にもそういう地名はあるの?」と質問されたことがある。
徳の高い僧侶にちなんで付けられた都市なんてあったっけ?
それは知らんけど、めでたい意味・良い意味のことばが由来になった地名は日本各地に山盛りある。
いわゆる瑞祥地名(ずいしょうちめい)ってやつ。
ではこれから、日本全国の瑞祥地名をみていこう。

 

北海道の千歳市は文字通り、「長生き」の意味だからめでたい。
浜松市にも千歳町があるし、そんな地名はほかにもあると思われ。

宮城県仙台市は、伊達政宗が「千代(せんだい)」から、仙人のいる台地という意味で「仙台(旧字では仙臺)」に改名したといわれる。

茨城県日立市は、徳川光圀が海から昇る朝日を見て「朝日の立ち上る様は領内随一」として一帯を「日立」と命名した。

群馬県高崎市は、「成功高大」の意味を込めて井伊直政が「和田」から「高崎」に改名。

富山県高岡市は、前田利長が中国の古典『詩経』の中の「鳳凰鳴矣于彼高岡(鳳凰鳴けり彼の高き岡に)」を基に命名。

石川県七尾市は、七尾城があった山の7つの尾根にめでたい意味の菊尾、亀尾、松尾、虎尾、竹尾、梅尾、龍尾と名付けたことに由来するという。

福井県福井市は、「北ノ庄」の北の字が「敗北」を連想させて不吉だということから、松平忠昌が「福居」に変えてその後に「福井」となった。

長野県松本市 は、小笠原貞慶が「松の目出度さ」にあやかったという説と、「待つ(松)こと久しくして本懐を遂ぐ」と述べたという説があり。

岐阜県岐阜市は、織田信長が中国の「岐山」と「曲阜」にちなんで付けたという。

滋賀県長浜市は、織田信長の名をとって「今浜」から改称された。

京都府福知山市は、「明智氏に福あれ」ということで、明智光秀が横山から福智山に変えた。その後、現在の福知山となる。

京都府亀岡市は、明智光秀が縁起の良い亀から「亀山」と名付けた。が明治2年に、三重県の亀山市とごっちゃになるということから、亀山から亀岡へと改称。

 

江戸時代、縁起の良いものを順に「一富士、二鷹、三茄子」と言った。日本人にとって富士山は超めでたいから、「富士」の付いた地名は全国各地にある。
ほかにも浜松市千歳町のように、町単位でみれば瑞祥地名は日本中にあるはずだ。

海外からみると日本人の迷信の特徴に、言語にかかわるもの(特に同音異義語)が多いということをきのう書いた。

外国人からみた「日本人の迷信」。その特徴は?

 

瑞祥地名をみると、さもありなん。
やっぱりキリスト教徒のように人物ではなくて、日本人は文字にこだわっていることがわかる。
もちろん山形県天童市のように、その地に天童城を築いた北畠天童丸(北畠親房の孫)のようなところはあるし、乃木希典にちなんで付けられた函館市の乃木町もある。
なかにはオランダ人のヤンヨーステンに由来する八重洲(東京)なんてところもある。

人物にちなんだ地名は町レベルで、都市名では、いまざっと見たところではほぼない。
それにこれは記念碑的な意味だから、めでたい地名とはちょっと違う。
でもそういえば、天皇陛下の来訪(行幸)にちなんで付けられた「御幸町」なら瑞祥地名になるか。

 

 

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2 件のコメント

  • >キリスト教文化圏の国なら、立派な行いをして深く尊敬されている聖人の名前にちなんで、都市の名前を付ける

    そういう見方もあるでしょう。でも私には、欧米人の「フロンティアを開拓し原住民を征服したことの証」であるように思えますね。米国各都市の名前なんかその代表例です。米国でも、オーストラリアでも、アフリカでも、現地先住民族がつける地名は、日本と同様、その土地の特徴や瑞兆に因んだ地名が多いですよ。
    「サンクトペテルブルグ→レーニングラード(レーニンの町)→サンクトペテルブルグ」なんて名前の変遷も、キリスト教と共産党の都合に合わせてつけられたものであり、いかにも欧米人の傲慢さを感じさせます。

    日本人で歴史上初めて、自分が権力者であることの証として、地名を変えたり、首都移転をしたり、(天皇家以外で)暦を定めたりしたのは、日本人離れした独裁権力を手中にすることを目指した織田信長だったとか。その一例が、「周の文王、岐山に立つ」に因んだ首都の地名「岐阜」です。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。