以前、トリニダード・トバゴ人と話していたときに「日本人の迷信」の話題になった。
*トリニダード・トバゴは南米ベネズエラの近くにある国。
日本の小中学校で英語を教えていたその人は、あるとき同僚の日本人から誘われて、一緒に京都旅行へ出かけた。
すると事件は宿泊するホテルでおきた。
「悪いんだけど、部屋をかえてくれないかな?」と日本人から頼まれたから、何事かと思ったら、その友人の部屋の番号には数字の「4」があったからだった。
「あなたはカリブ人だよね。だから”シ”は関係ないよね。」
確かにカリブの人間に、極東の島国の迷信は通じない。が自分も日本語を学習していて、「死」の意味は知っている。だから何となく嫌になった気持ちは、「おいしいオムライスをおごるから!」ということばで吹き飛んだという。
日本人にとって4や9は死や苦を連想させる縁起の悪い数字で、特に病院で嫌われている。
病院事務をしている知人から、入院や退院する日にこだわる人がわりといて、「大安の日に入院(退院)したい」「「仏滅の日は避けてほしい」と同時に言われるとベッドの調整に苦労する、という話を聞いた。
ネットをみると、病院ではやっぱり4や9を避けるところが多いようだ。
対応は病院によってまさに千差万別で、こんな対応がある。
4と9で終わる部屋番号はない。
4号室はないけど、9号室ならある。
4病棟と9病棟はないけど、建物の4階と9階はある。
4階と9階は職員の更衣室や会議室に使っていて、患者には関係ないないように配慮している。
もちろんトリニダード・トバゴにも迷信はあって、たとえば、黒い猫が目の前を通り過ぎると不幸なことがおこると言われる。
でも、「ホテル事件」で興味をもった彼女が調べてみると、海外(特に欧米)と比べると、日本の迷信では数字が大きくかかわっていることがわかった。
英語版ウィキペディアにも同じような説明があって、日本の迷信には、大部分が言語に関係しているという特徴がある。
特に、響きから「死」や「苦」を連想させる言葉のある数字やモノは不吉と考えられている。(まさに4のある部屋)
だから「死」や「苦」の同音異義語は嫌われる。
A significant portion of Japanese superstition is related to language. Numbers and objects that have names that are homophones (Dōongo / Dōon Igigo (同音語 / 同音異義語, lit. “Like-Sound Utterance” / “Like-Sound Different-Meaning Utterance”)) for words such as “death” and “suffering” are typically considered unlucky.
「4」のない駐車場
画像:Halowand
でも、「4」は「死」に通じるから縁起が悪いという迷信は当然、漢字文化圏での話。
香港人にホテルの話をすると、「自分も4の部屋には泊まりたくない。オムライスぐらいなら断る」と言う。香港人はけっこう迷信深い。
でも漢字文化とは無縁の外国人、たとえばトリニダード・トバゴ人には一切関係ないし、オムライスのほうがよっぽど重要だ。
*中国系のトリニダード・トバゴ人については知らない。
その事情は日本人も同じ。
中国から漢字の「死」が伝わるまでは、日本で「四」を忌み嫌うことはなかった。
古い神道の考え方では、神を拝むときの最大の礼式は四度拝礼することだと『古事記』に書いてあるし、普通の神社では二拍手のところ、出雲大社ではいまでも拍手を四度打っている(四拍手)。
「四」の理由として、出雲大社のガイドが幸せの「シ」を表すから、と説明したという話が参拝者のブログにあった。
*ちなみに出雲大社の正式な読み方は、「いずもたいしゃ」ではなくて「いずものおおやしろ」。
ということで、日本人は「死」を連想させる同音異義語を嫌う傾向がある。
英語が当たり前になりつつあるいまの日本社会では、「そうなんです」といった敬語の「です」が「DEATH」を想起させるとして、忌み言葉になっているという話は聞いたことがないから安心してほしい。
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>普通の神社では二拍手のところ、出雲大社ではいまでも拍手を四度打っている(四拍手)。
>「四」の理由として、出雲大社のガイドが幸せの「シ」を表すから、と説明したという話が参拝者のブログにあった。
へー、そんな説があるんですか。井沢元彦「逆説の日本史(古代言霊編)」によると、出雲大社は日本古来の神であった大国主命を、征服王朝(元は大陸系?)である天照大神が殺して封じ込めた神社であり、その「死」を封じ込めるために「シ拍手」を打つのだという説が載っていました。
>英語が当たり前になりつつあるいまの日本社会では、「そうなんです」といった敬語の「です」が「DEATH」を想起させるとして、忌み言葉になっているという話は聞いたことがないから安心してほしい。
そりゃそうですよ。ですの「す」もDEATHの「TH」もカタカナで書けばどちらも「ス」でしょうが、発音が全然違いますから。英語が当たり前になりつつあるいまの日本社会で、混同されることはないと思う。
よい子の皆さんは当然間違えませんよね?
RとLの区別もそうですが、正しく発音するにはまずその単語のスペルを覚えて、それを頭に浮かべながら発音することだと思います。聞く場合も同じで、スペルを思い浮かべながら聞くことです。
出雲大社のホームページにくわしい説明がないので、「理由は諸説ある」ということでしょうね。