1年のなかで3月1日と8月15日は、隣国で反日感情が特に高まる日だ。
後者は日本の終戦記念日で韓国では「植民地支配」が終わった日になるし、前者は1919年に抗日独立運動が起きた日だから。
それできのうの3月1日、文大統領が国民や日本に向けてどんな演説をするかに注目が集まった。
政権維持のために国内向けには「反日」、日本に向けては「友好」をアピールすることは予想できたとして、具体的にどんなメッセージを発したか。
韓国政府の対日認識がわかるこのスピーチを知る前に、まずはここ数年の文大統領による「3・1演説」の内容を確認しておこう。
2018年
大統領となって初めて迎えた3月1日、気合の入った文氏は「日本は人類普遍の良心で歴史の真実と正義を直視しなければならない」と言い切った。
さらに慰安婦問題については「反倫理的人権犯罪行為」ときめつけて、「加害者である日本政府が『終わった』と言うべきではない」と話す。
国内しか見てませんね。
言うまでもなく慰安婦問題は、15年に韓国自身が「最終的な解決」を確認したはずだ。
この約束破りの演説に日本は、(いまとなってはなつかしい)菅官房長官が「日韓合意に反するものだ。全く受け入れられず極めて遺憾だ」と怒る。
以後、韓国による合意・国際法違反と、日本の「遺憾砲」発射が繰り返されることとなった。
2019年
この年の「3・1演説」はわりと穏やかだった。
前年がひどすぎた、ともいえる。
「過去を直視することで傷を克服することができ、未来に進むことができる。日本がこのような姿勢を持つことを願う」
「力を合わせて、被害者たちの苦痛を実質的に癒すとき、韓国と日本は心の通じる親友になることだろう」
だがしかし、この「謙虚さ」にはワケがある。
この数か月前、韓国の最高裁が徴用工判決で日本企業に賠償を命じて、「国際法に違反する判決だ。全く受け入れられず極めて遺憾だ」と日本が反発して両国関係は決定的に悪化。
翌年1月の記者会見で文大統領は、「日本は不満を表明することはできるが、不満があっても仕方ないという認識を示さなければいけない」と判決を受け入れるよう主張した。
さらに韓日の「不幸な歴史」について「日本政府がもう少し謙虚な姿勢を持つべきだ」と発言し、また日本を激怒させた。
この2か月後だったから、文大統領は反日を抑えたメッセージを発したのだろう。
2020年
きょねんの3月、韓国国民の関心はコロナに集まっていた。
日本は日本で、何を言っても反日で返ってくる隣国に愛想をつかし「戦略的無視」を貫いていた。
韓日関係は最悪のまま凍結されていたせいか、文大統領は反日よりも友好に重点をおく。
「過去を直視することで傷を克服することができ、未来へと進むことができる」
「過去を忘れないが、われわれは過去に留まることもない」
「日本もまた、そのような姿勢を見せてくれることを期待する」
でことしの3月1日、文大統領は演説でこう話した。
「われわれは過去の歴史を直視しながら教訓を得なければならない」
「われわれが越えなければならない唯一の障害は時折、過去の問題を未来の問題と分離できず、一緒にすることで未来の発展に支障をきたすということ」
「日本は人類普遍の良心で歴史の真実と正義を直視しなければならない」「(日本が)過去を直視することで」と言った数年前と違って、主語を「われわれ」にしている。自分たちをふくめている。
こういう“責任分担”はちょっと記憶にない。
ここ最近、日韓関係にかかわる重大な変化が起きた。
アメリカではバイデン大統領が誕生し、日本との関係を改善するよう韓国に要求している。
そしてことし1月には韓国の裁判所が慰安婦訴訟で、日本の主権を無視して元慰安婦に賠償を命じる判決をだして、韓日関係にとどめを刺した。
国の内外から圧力をうけているいま主語を変えるなど、「反日度」は抑えめにしたほうが得策と判断したのだろう。
「3・1演説」の移り変わりをみると、文大統領はだんだんと過去の自分に追い詰められていることがわかる。
いまごろ、「加害者である日本政府が『終わった』と言うべきではない」なんて言ってしまったあの日の自分を殴りたいと思っているかも。
しかしすべてはアフターカーニバル。
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