NHKの記者が書いたこの記事の、秘密資金とやらをご存じだろうか。(2021年3月9日)
GHQの秘密資金?「M資金」詐欺を調べてみた
太平洋戦争のあと、実質的に日本を支配していた連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が接収したとウワサされる秘密資金がM資金。これは現在も極秘裏に運用され続けているという。
GHQの経済科学局長を務めたウィリアム・マーカットの頭文字をとって『M資金』の名称ができたらしい。
困ったことに、この旧日本軍の秘密資金を語った詐欺にだまされる人が昔からいるのだ。
M資金詐欺は、昭和30年代から平成を超え令和に至るまで60年以上、ほぼ同じ手口・内容の詐欺が繰り返されている。
きょねん6月には、約32億円をだまし取った疑いで3人の男が逮捕された。
上の記事によると、主犯は「イギリスでスナイパーをしていた」や「アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)で働いている」とかアニメの世界のような経歴を告げて、いつも皇居に近い高層ビルの1室で被害者と面会していた。
M資金について、誰にも話さないと約束する『秘密保持契約書』も示されたりして、この男を信用するようになって最後はだまされたと気付く。
こういうM資金に関する詐欺事件はネットではわりと有名だ。
・M資金も長いな。まだ現役とは知らなかった
・日本は政策金融の比率が高いことと、「行政は民間企業を支援すべきだ」と信じる経営者の割合が高いことがあって、M資金詐欺の話に対して「とうとう私の所にも来たか」と詐欺師を信用して歓迎する経営者が不思議なぐらい多いのだとか。
・ゴルゴの読みすぎ
日本でこんな詐欺事件が報じられた翌年、いま韓国では日本統治時代の「隠し財産」をめぐって騒動が起きている。
朝鮮日報の記事(2021/03/09)
「金塊2トンが埋められているそうだ」…全羅北道益山市で騒ぎに
韓国にいたある日本人が終戦後、急いで本国に戻ったため、『残していった金品などがたくさんある』というウワサがここ数十年の間、この地域で飛び交っていたとか。
それで今回、日本人が埋めた2トン(約133億円)の金塊があるという話が出回って、「地域社会が揺れている」と記事にある。
益山市は「金塊が埋められているという説はデマ」とこの話を否定しているけれど、それでも「何かがある」と考える人は多いようだ。
この手の日本の隠し財産をめぐるウワサで最も有名なのは、フィリピンの「山下財宝」だろう。
このせいで知人のフィリピン人は口をそろえて、「フィリピンで一番有名な日本人はヤマシタだ!」と言っていた。
山下 奉文(やました ともゆき:1885年 – 1946年)は日本陸軍の大将で、「マレーの虎」というニックネームを持つ。
フィリピンで語り継がれている伝説によると、欧米が植民地支配していた東南アジアの国々から集めたばく大な財産を、日本軍はフィリピン国内のどこかに隠したまま敗戦を迎えて、関係者が戦犯として処刑されたためにそれが分からなくなった。
「財宝はいまもどこかに眠っている!」と信じて、山下財宝を掘り当てようとがんばるトレジャーハンターがいてトラブルも多いらしい。
日本や韓国とちがって、とても“らしい”と思うのが、地面を掘って財宝を発掘するためには環境天然資源省に10000ペソの手数料を払わないといけないこと。
これならフィリピン政府は手堅くかせげる。
あのイメルダ・マルコスも山下財宝について語っているから、「ひょっとしたら」と期待しちゃう人が絶えないのかも。
1992年、不正蓄財の嫌疑をかけられたフェルディナンド・マルコス元大統領夫人のイメルダ・マルコスは、夫は山下財宝を発掘して財をなしたと主張した。
日本のM資金も韓国の2トンの金塊も、フィリピンの山下財宝も存在しないというのに、いまでも多くの人を動かしている。
「死せる孔明生ける仲達を走らす」みたいな。
結局みんな、心を欲望に支配されるから、「日本の隠し財産」なんて見えないものが見えてしまう。
こういう話はきっと忘れたころにニュースになる。
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まぁでも、今なお時々昔の沈没船が引き上げられて大量の金貨など財宝が発見されたりしているから、「山下財宝」や「M資金」の話に引っかかる人間がいるのも、無理はないかな。