和食ではないが日本料理のドリア。由来はイタリアの名門貴族?

 

この前ネットでイタリアに住んでいる日本人が、「サイゼリヤのミラノ風ドリアってなんなの?」と投稿しているのを見た。
まずイタリア料理に「ドリア」という料理はない。
それに何が「ミラノ風」なのかわからないという二重の謎。

すると同じくイタリア在住の日本人が「タバスコもイタリアでは使わない」、「ミラノ風というのは、ご飯をサフラン風に黄色くしているからでは?」と書き込む。
静岡在住のボクにはよくわからんが、お米が黄色いとそれは「ミラノ風」になるらしい。

天津にはない天津飯や台湾にはない台湾ラーメンとか、日本では現地にはないオリジナル料理がよくある。

 

 

これと同じようなことを数年前、東ヨーロッパから来たリトアニア人も言っていた。
その人はイタリアに半年住んでいたことがあるから、かの地の料理についてはそれなりに知っている。
値段と味を考えるとサイゼリヤが無敵ということで、そのリトアニア人は外で食べるときはよくサイゼをチョイスしていた
そこでピザやパスタはいいとして、ドリアとかいう謎料理と出会う。
たしかにヨーロッパ風だけど、こんな食べ物はイタリアでもフランスでもオーストリアでも見たことない。

それまでボクはドリアを、ピザやパスタと同じぐらい代表的なイタリア料理と信じていたから、「いやそれ日本料理だぜ」とリトアニア人から聞いて、「なに言ってんだこいつ」と思ったけれど、それでも一応調べてみたらホントだったでござる。
ドリアは和食ではないけど日本料理だった。

1930年ごろ横浜ホテルニューグランドの料理長サリー・ワイル氏が、体調を崩したヨーロッパ人客のために即興でつくって出したのがドリアだった。
それはバターライスに、エビのクリーム煮とホワイトソースをかけてオーブンで焼き上げたもの。
これが現在日本にあるドリアの始まりになったと言われる。

日本料理のレシピを紹介する海外のサイト「THE GOOD WOK」には、ドリアとはクリームソースがかかった日本の米料理(キャセロール)で、見た目は日本っぽくなくてもこれは日本料理で、多くの若者やお年寄りが大好きだという説明がされている。

Doria is a Japanese rice casserole dish that comes with a creamy sauce. The dish is a western-style one and is very similar to baked gratin. The food doesn’t look Japanese but is from Japan and many youngsters and old people love the food.

The Yummy And Famous Doria Japanese Food Recipe 

キャセロール

 

ドリアとは Japanese Food。
数年前にこの事実を知って衝撃を受けたから、その後、日本に来たイタリア人が「ドリアってのを初めて食べた!おいしかったよ。イタリアでも流行らないかな」なんていうメッセージをSNSで見ても、もう驚かなくなった。

ということで「客の3人に1人が注文する」というサイゼリヤの看板メニュー、ミラノ風ドリアはかろうじてミラノ風ではあるものの、イタリア料理ではなくて日本生まれの日本料理だ。

 

じゃあ、「ドリア」ということばは一体どこからきたのか?
これはイタリアの貴族、ドリア(ドーリア)提督に由来するらしい。

そんなことがクックドアのサイトに書いてある。

日本で生まれた創作料理「ドリア」の由来 

あるフランス人シェフがドリア(ドーリア)家の貴族のために、きゅうりやトマトなどを使って「緑」「白」「赤」のイタリア国旗を模した料理を作り、それを一族の名前である「Doria」と名付けた。
これは日本にあるドリアとはまったくの別ものらしい。

このドリア家を調べてみると、アニメに出てくるような超名門貴族だったことが判明。

 

ドリア家の紋章

 

ドリア城

 

ドリア家は歴史のあるとんでない金持ちで、12~16世紀のジェノヴァ共和国の歴史の中で大きな役割を果たしたという。

the name of an old and extremely wealthy Genoese family who played a major role in the history of the Republic of Genoa and in Italy, from the 12th century to the 16th century.

Doria (family)

 

このドリア一族の中でも、ジェノヴァ海軍のアンドレア・ドーリア提督が特に有名。
サリー・ワイル氏は即席で作った料理に彼の名前か、この家にために作られた料理「ドリア」の名前を付けたのだろう。
それ以外の由来は見つからない。
そしていまではイタリア在住の日本人や、来日イタリア人を不思議な気持ちにさせる日本料理のドリアが確立された。

 

アンドレア・ドーリア(1466年~1560年)

 

 

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1 個のコメント

  • > 「ミラノ風というのは、ご飯をサフラン風に黄色くしているからでは?」と書き込む。
    > 静岡在住のボクにはよくわからんが、お米が黄色いとそれは「ミラノ風」になるらしい。

    スペインのパエリアとか、ギリシャ料理でもサフランライスを使うことが多いですから、「ミラノ風」というよりは「ラテン風」ですかね?
    また、インドから東南アジアにかけて、カレー料理のレストランでも「黄色いご飯」が出てくることが多いです。ただし、向こうのカレー店では、ほとんどが「ターメリック(=ウコン)ライス」でしたけれども。
    サフランライスとターメリックライスとでは明らかに後者の方が安価なのですが、どちらが日本人の好みに合うか?と言えば、人それぞれですね。サフランライスの特に高級なものは、その香りがきついです(石鹸みたいだと思うことも)。
    日本のインド料理店だと、店によってそのどちらかです。でもやはり「サフランライス」の方が高級店に多いみたいです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。