【違うのだよ、治安が】外国人が感じた日本人の“平和ボケ”

 

熱心なキリスト教信者で宣教師だったフランシスコ・ザビエルは、世界中にこの素晴らしい教えを伝えたいと考えていた。
あるときマレーシアで極東の島国の話を聞き、そうだ 日本、いこう。と思い立つ。

来日したザビエルは当時の日本人の印象についてこう記している

「彼らは親しみやすく、一般に善良で悪意がありません。驚くほど名誉心の強い人びとで、他の何ものよりも名誉を重んじます。」

また日本人のこんなところに感心した。

「私がこれまで会った国民の中で、キリスト教徒にしろ異教徒にしろ、日本人ほど盗みを嫌う者に会った覚えはありません。」

 

さてきのう3月12日は「財布の日」。
外国人に日本の印象をきくと、「治安が良すぎる」と言う人が多い。というかこれはもはや鉄板。
落とした財布が戻ってくる確率が世界で一番高いのは日本。とは言い切れないとしても、日本が世界最高水準にあることは間違いない。
こういう行為を「恥」と感じる気持ちが日本人にはある。

ザビエルが驚いた日本人の名誉心と盗みを嫌う心情は、セットになっていたのでは。

 

 

戦国時代が終了してから約400年がすぎたいま、このまえザビエルと同じスペイン人と一緒にハイキングをした。
*ザビエルは厳密にはイベリア半島のバスクの人。

このときはほかにもインド人、台湾人、中国人がいて、彼らを乗せて静岡県の掛川市にある粟ヶ岳へGO。
ふもとの駐車場に到着し、みんなが降りたあとにドアを閉め、鍵をかけたらさあ出発だっ、と思ったら、彼らが一様にビックリした顔をする。
個人的に車内に空気がこもるのがイヤなんで、車を停めるときはよく、2センチぐらい窓を開けたままにしている。
このときもそうしたところ、外国人から「いやいやいや、何やってんの?」というツッコミを入れられた。

「それは危ないですよ。やめたほうがいい。窓を閉めることぐらい、すぐにできるじゃないですか」ということを東と南のアジア人、それとヨーロッパ人から言われたことを考えると、この行為は世界的には相当の非常識か。

ボクも知らない場所だったらこれはしない。
静岡県で育ったボクの感覚では、この状況でこの行動に問題はない。
未来を正確に言うことはできんが、ここで窓を少し開けといても、そこからガラスを割られて、車内にあるものが盗まれることはないということは経験上、確信できた。
ただこちらも大人なんで、「チッ。うるせーな」と思いつつ、またエンジンをかけて窓を閉め切った。

これがきっかけで、彼らがこの平和大国でビックリしたことを話し出す。
レストランやカフェで日本人はテーブルの上にスマートフォンを“置きっぱ”にして、平気で食べ物や飲み物を取りに行く。
ほかにも、電車の中でバッグから手を離してやすらかに寝てるとか、荷物だけを置いて席や場所取りをするとか、日本人の不注意に驚くことはよくあるという。
でもそれは治安の良い証拠。
だから日本は素晴らしいし、特に女性にとっては安心して生活できることはみなが認める。

 

最近、【平和大国】現地の日本人がなげく、イタリアの治安 という記事を書いていて、イタリアに住む日本人のこんな声を聞いて震えた。

「私は車とバイクを燃やされたことがあります。閉まらない駐車場だったのがマズかったですね。」
「車の後ろトランクを無理やり開けられて、ゴルフバッグを盗られました。」
「この国では車に物を置いていた方が悪い、という考え方です。」

海外では「自己責任」の範囲が本当に広い。

 

日本語を勉強している彼らに、『平和ボケ』という日本でよく使われるフレーズを伝えて質問すると、母国にそんなことばはないと言う。
まえにアメリカ人にきいてみたときも、『平和ボケ』を表す英単語は知らないと話していた。

ネットを見ると、「We are numb with peace」や「Taking peace for granted」という表現がでてくる。
前者の numb は「無感覚な」、後者は「平和を当然と思う」という意味で、日本人が言う『平和ボケ』とはちょっと違うと思う。
結局、これにピッタリ合うことばはないということだろう。

スペイン人、インド人、台湾人、中国人は『平和ボケ』なんてことばは知らなかったけど、窓を開けたまま車を離れるボクを見てそれを実感できたはずだ。
でもこれは名誉なことではない。

 

 

日本 「目次」

カリブ人から見た日本「自転車が盗まれないってウソだろ?」

外国人が驚く日本社会の2面性「なんでカードが使えない?」

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

 

1 個のコメント

  • ナポリは港に停泊していた軍艦が盗まれたというじょーくがある位に治安が悪いのが基本でしたな。今も定期的にゴミが溢れるのも事業をカモッラのせいだし。

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。