きのう韓国に住んでいるアメリカ人と久しぶりに話をした。
彼女はむかし日本に住んでいて、いまはソウルにある小学校で英語を教えている。
そんなアメリカ人に韓国社会の『反日感情』についてきいてみると、意外にも「それはほとんど感じない」とのこと。
これについてくわしいことは別の機会に書くとして、「日本よりもいまは中国を嫌っている人が多くいて、そういう話はよく聞く」と言う。
数年前には中国から飛来する有害物質による大気汚染で韓国国民は苦しんだし、いまはコロナウイルスを「中国が原因」とする考え方が一般的だからそれが悪感情につながっている。
もちろんこれはそのアメリカ人の話で、中国は違う主張をしているから真実は闇の中。
ちなみにきょう中央日報にはこんな記事がアリ。(2021.03.29)
ソウルと仁川(インチョン)の空気汚染度は世界最悪だということが分かった調査結果も、ネットユーザーの関心を集めた。
「マスクしてものど痛む」…中国発の黄砂でソウルの大気汚染、世界1位に
そんな韓国人の”中国キライ”がついに大爆発。
朝鮮時代に実在した人物が登場するけれど、国を支配しようとする悪霊から人々を守るという設定のフュージョン時代劇『朝鮮駆魔師』が国民からNOを突きつけられた。
これは悪魔はらいをテーマとする”エクソシズム・ファンタジー”。
そんなドラマでも、たとえばこんなシーンで「歴史をわい曲した!」と国民から批判と怒りが殺到した結果、韓国の放送史上で初めてたった2話で終了に追い込まれた。
中央日報日本語版の記事(2021.03.28)
忠寧大君がバチカンから来たカトリックの駆魔司祭に月餅と中国式ギョーザ、ピータンなどで接待する場面だ。食べ物だけでなく建物や衣装もやはり韓国ではなく中国風という指摘もあった。
歴史歪曲議論の『朝鮮駆魔師』、放送史上初の電撃打ち切り=韓国
制作スタッフの説明によると、これは中国からやって来た駆魔司祭一行が休憩するシーンで、明と朝鮮の国境に近いところだったから、「中国人の往来が多かったのでは」と考えて中国料理を用意した。
ほかにも視聴者を怒らせるポイントがいくつかもあって、もはや『地雷原』と化したこのドラマには、「即刻中止を求める」という国民請願が韓国大統領府ホームページに寄せられ、多くの国民がそれを支持する。
もはやタイタニック号だ。
スポンサー企業が次々と徹底を表明し、撮影に協力していた自治体は支援金を回収すると言い出す。
そして『国民の敵』となったこのドラマは韓国の放送史上初の事態を迎えた。
放送業界にいる人間も「国民的な反中感情がこんなに大きいとは知らなかった」と驚くほど、中国を嫌う韓国人はいまたくさんいるのだ。
冒頭のアメリカ人の話を裏付け数字がある。
新聞通信調査会がこのまえ発表した世論調査によると、日本に好印象を持つ韓国人の割合は31.3%だったのに対し、中国は26%と5ポイントも低い。
中国を見る韓国人の目は冷え切っている。
ちなみにこれが、日本への好感度が高かった国のベストスリー。
1位:タイ(89.6%)
2位:米国(79.6%)
3位:フランス(77.8%)
中国は39.7%で韓国は31.3%だから、日本への見方は中国のほうがやや良い。
中国への反感や怒りからドラマが打ち切られたというのは、韓国では衝撃的な出来事として受け止められている。
全体の80%の撮影をすでに終えていて、制作会社に放映権料のほとんどを支払った放送局のSBSはこれで大損害をこうむった。
ドラマの海外版権は契約解除となり、すべての海外ストリーミングも取りやめた。
(これもまた韓国側での見方だが)高句麗を自国の歴史とする中国の『歴史わい曲』や、キムチや韓服を自国の文化と主張する『文化盗用』に対して、国民の怒りのボルテージは高まっていた。
それでこのドラマは「これまで積もり積もってきた反中感情を爆発させる導火線になった」という。
ただ反中感情を理由に放送が中止されたと知ったら、中国国民の反発は避けられない。
韓国のエンターテインメント企業に投資する中国企業にも悪影響を及ぼすはず。
たとえば中国企業の「テンセント」は韓国の大手ゲーム製造会社の主要株主だ。
いろいろな国の人や企業の支援を受けて韓国が大きな利益を得ているのは事実だから、「民族主義を前面に押し出す盲目的な反中・嫌中には用心すべきだ」という指摘が韓国にもある。
朝鮮日報の記事(2021/03/27)
大衆文化評論家のハ・ジェグン氏は「規模が膨らんだドラマ制作費を回収するには、PPLをはじめ海外からの投資を受けるしかない」と、全北大学社会学科のソル・ドンフン教授は「誤った中国の主張を事実通り正す努力とは別に、感情を前面に出して中国を非難すれば、逆風にあうかもしれない」と語った。
「裸キムチ」「韓服工程」…積もり積もった反中感情でドラマ打ち切り
「韓服工程」とはさっきの文化盗用のこと。
「裸キムチ」というのは韓国に出回った画像で、上半身裸の中国の男性が白菜を漬ける姿を見て、韓国で中国産キムチのボイコット運動が起きた。
当然、この逆をすると好感度は爆上がり。
BTS(防弾少年団)のメンバーが米ファッション誌のインタビューで、「大韓民国の服・韓服が一番好き」と発言すると「韓国のファンたちの歓声を浴びた」という。
民族主義や愛国心の強さなら中国だって韓国に負けていない。
中国人の好きな月餅やギョーザが理由で放送中止になったと聞いたら、それは別の戦いの導火線になるだろう。
日本としてはこんな隣国同士の争いを、毛沢東が演説で使って有名になった『反面教師』にさせてもらおうか。
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