静岡市には清見寺という昔から有名なお寺がある。
それで、日本の文化や歴史に興味があるという外国人を発見したら、たまにここへ連れて行くのだ。
同じお寺を見て回ってもバックグラウンドはそれぞれ違うから、外国人の反応にはその国の文化や伝統が反映されることもある。
たとえば上の干支(えと)。
*「ねずみ、牛、虎、うさぎ、龍、へび、馬、ひつじ、さる、鳥、犬、いのしし」の12の動物は正確には「十二支」であって、これに十干(じっかん)を組み合わせた干支とは違う。
くわしいことは 干支 を見てもらうとして、いまの日本では十干を省略して、12の動物を指して「干支」と言うことが多いから、ここではその呼び方を使うことにしよう。
この12の動物を見ても、タンザニア人やアメリカ人、ドイツ人などは彼らの価値観に引っかかるところがないようで、そのままスルーすることが多い。
「日本人は何でもかわいくする。ここはお寺なのに、幼稚園児がよろこびそうなものを飾ってあるのはおもしろい」と笑顔を見せるイギリス人がいたぐらいだ。
でも中国人・韓国人・台湾人は違う。
干支を考え出したのは古代中国人でこの文化は朝鮮半島にも伝わったから、欧米人やアフリカ人と違って、これを見ればみんなすぐに何か分かる。
だから自然と「あれ?ブタがいません。なんでですか?」という疑問が浮かぶ。
この前連れてきたベトナム人もここでブタの不在に気づき、「これはイノシシですね。日本の干支は違うのですか?」と首をひねっていた。
韓国やベトナムでは、中国由来のものをそのまま現代でも使っていることが多い。
でも日本は東アジア文化圏の「異端児」らしく、変化を加えて別ものにすることが多々ある。
中国・台湾・韓国・ベトナムはいまでも旧暦の正月を祝うけど、日本も江戸時代までは同じだったが、明治になって西暦を採用し、1月1日に正月を移動してからはひとり別の道を歩むこととなった。文化面での脱亜入欧だ。
だから正月が終わって1か月ほど過ぎたあと、日本のド平日に、中国・台湾・韓国・ベトナム人が「新年あけましておめでとう!」とSNSに投稿しているのを見ると、違和感と「仲間はずれ感」を感じるしかない。
正月も日本の場合は、年神という神道の神さまをお迎えする期間だから独特だ。
ブタの代わりにイノシシを採用した干支も、「日本化」された中国文化のひとつ。
「ね・う・し・とら・う・たつ…」という日本語での干支の読み方とは別に、中国語の読み方もあって、それと韓国語・ベトナム語を並べると発音がわりと近いことがわかる。
子は「し」で、韓国語だと자 (ja)、ベトナム語で「tý」になる。
丑は「ちゅう」で、韓国語で축 (chuk)、ベトナム語なら「sửu」
寅は「いん」、인 (in)、 dần
卯は「う」、묘 (myo)、 mão/mẹo
辰は「しん」、진 (jin)、 thìn
巳は「し」、 사 (sa)、 tỵ
午は「ご」、 오 (o)、 ngọ
未は「び」、 미 (mi) 、 mùi
申は「しん」、신 (shin)、 thân
酉は「ゆう」、유 (yu)、 dậu
戌 は「じゅつ」、술 (sul)、 tuất
そして亥は「がい」、韓国語は「해 (hae)」、ベトナム語では「hợi」となる。
中国・韓国・台湾の干支はまったく同じで変化なし。
日本の干支についてはさっき書いたからいいとして、ここではベトナムの干支に注目しよう。
ベトナムではウサギ(卯)がニャンと猫になっていて、ひつじ(未)の代わりにヤギ、さらに牛は水牛になっている。
ベトナム人に話をきいても彼らにもその理由がよく分からず、スマホで調べてもらうと、ウサギやひつじはベトナムと伝統的にあまり縁がなかったから、身近にいた猫やヤギが代わりに採用されたという。
またウサギの漢字「卯」は、読み方がベトナム語の猫に近いらしい。
ベトナムでは一般的に牛といえば水牛を指すから、自然と牛は水牛に置き換えられたとか。
このへんの“牛感覚”がボクにはなくて、英語で「カウ」と言うと「違う。バッファローだ」とよくベトナム人から訂正される。だから「失礼、噛みました」と言わないといけなくなる。
とにかくこんなワケで、ベトナムの干支にはネコ年とヤギ年、そしスイギュウ年があるのだ。
同じ東アジア文化圏にあっても、正月については日本と他はまったく、干支は少し違っている。
ベトナムの干支は東南アジアの風土に合わせて変化したのだろう。
中国と台湾の伝統文化が同じなのは当然として、韓国はいろんな点で中国とそっくり。
ベトナム人と同じく、韓国人も中国と同じに見られたくないはずだけど、差別化を図るのに苦労しているかもしれない。
ベトナムの水牛
翼君とサッカーボール並みに関係が近い。
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> ベトナム人と同じく、中国と同じに見られなくないはずだけど、
これは本当に分かりません。1)見られたくないはずだけど、2)見られなくはないはずだけど、どちらですか?
ちなみに、韓国が「中国との差別化を図る」ことに挑戦するようになったのは、日本が近代化に成功して世界でも有数の経済大国になってから、韓国が日本からの経済援助で日本の近代化を真似し始めて以降のことですね。日本に占領されるまでの朝鮮・韓国では、朱子学が重視されており、そこでは「いかに中国文化を自分の身に付けるか」が目標とされていたのですから。その意味では、朝鮮半島は間違いなく中国文化圏にあると言えます。
島国だった日本は、そこまで中国の強い影響を受けておらず、平安時代以降には独自の文化を育んできたと言っていいと思います。
「見られたくないはずだけど」が正解です。
すみません、間違えました。
ご指摘ありがとうございます。