インドの春祭り”ホーリー”:色をかける理由・カーストとの関係

 

春を告げる花といえば、日本では桜できまり。
外国人に聞くと、中国人は梅、韓国人はツツジとレンギョウだと言う。
ドイツ人はクロッカスで、ロシア人と東ヨーロッパのリトアニア人はスノウドロップと答えた。

 

さて話はインドだ。
春夏秋冬の四季と違って、季節はホット・ホッター・ホッテストの3つと言われる国。

まえにインド人を花見に連れて行ったとき、インドで春の到来を告げる花は何かきいてみると、それは特にないと言う。
では、春を感じさせるイベントや象徴はあるかたずねると、「それはホーリーですね」という答えが返ってきた。

ホーリー。
それはヒンドゥー教の春の祭りのことで、キリスト教のイースター(復活祭)、ヤマザキの春のパンまつりと並ぶ『世界三大春の祭典』のひとつ、という話を昔どこかで聞いたような気がする。

辞書的にはこういう祭りだ。

ヒンズー暦パールグナ月(2~3月)の満月の日に行われ、火をたいてけがれを払い、健康や豊作を祈る。また、民衆が色つきの粉や水をかけあう風習がある。

デジタル大辞泉の解説

 

もともとは豊かな収穫を願う春の祭りだったのが、ケガレや悪魔を払うといった意味が加わり、さらに北部カシミール地方で、家に入ってくる悪鬼を追い払うため泥や汚物を投げつけたという話もミックスされて、今ではインドの『色かけ祭り』になったという。
黄色は尿、赤は血、緑は田畑を象徴するとか。

こういう粉を水に溶かしたものを道行く人にぶっかけるから、参加者(または犠牲者)は当然こうなる。

 

この日のインドは無礼講。
バラモンやクシャトリヤといったヴァルナ(カースト)や性別に関係なく、色水や粉をひたすらかけ合ってはしゃぎまくる。
知人のシク教徒も毎年ホーリーをすると話していたし、これに参加するイスラーム教徒もいる(きっと例外的)ということだから、これは全インドの春の祭典と言っていい。

ホーリーの日は『何でもアリ』の状態になるから、違法の大麻(ガンジャ)が堂々と店で売られていたり、酔っぱらって前後不覚におちいる人がよくいるらしい。
だから治安も悪くなるから、この日は引きこもって家から出ない人も多い。

そんなホーリーは、2021年は3月29日だからもう終わってた。
バンガロールに住んでいる知人のインド人にことしの様子をきいてみると、

Sorry!! This time due to Corona, it’s not allowed by the government. (Also my family doesn’t celebrate it much… Generally less in South India)

すまぬ!ことしはコロナのせいで政府に禁止された。
それにわたしの家族はホーリーをそれほど祝わない。一般的にインド南部では盛大にやらない。

「いや、コロナという悪魔を退治するために、今年こそホーリーを大いにやるべきだっ!」とインド政府が言わなくてよかった。

 

日本でインドといえば、カレー・カースト・仏教の「CCB」がよく知られている。
年に一度のホーリーの日には、いろいろな色をかけ合うことで、ヴァルナ(カースト)から解放されるという意味もあるようだ。

おたがいにかけあったさまざまな色が混じり合い、何色とも表現できない色に皆が染まることで、身分の色(ヴァルナ)もなくなるというわけだ

「色彩の世界地図 (文春新書)」

 

 

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。