仏教徒のくせにクリスマス。スリランカ人も日本人と”同じ”?

 

新型コロナウイルス対策の「切り札」となるのがワクチン接種。
そのワクチンに豚成分に由来するものが含まれているとわかって、国民の約9割がイスラーム教徒のインドネシアは大騒ぎになっている。

でも、国民のほとんどが無宗教の日本はそんな騒ぎとは超絶無縁。
日本人は仏教徒(か神道の信者)でも12月になったらクリスマスを”祝う”し、その一週間後には、初詣で神社やお寺に行って神仏に手を合わせる。
そんないい加減で無原則な信仰スタイルにあきれる外国人はいるし、日本人でも疑問を感じる人は多い。

 

 

でも日本に住んでいるスリランカ人に言わせると、「それはスリランカ人も同じですよ」と笑う。

 

 

スリランカってこんな国

面積:6万5,610平方キロメートル(北海道の約0.8倍)

人口:約2,103万人(2016年)

首都:スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ

民族:シンハラ人(74.9%)、タミル人(15.3%)、スリランカ・ムーア人(9.3%)(一部地域を除く値)

言語:公用語(シンハラ語、タミル語)、連結語(英語)

宗教:仏教徒(70.1%)、ヒンドゥ教徒(12.6%)、イスラム教徒(9.7%)、キリスト教徒(7.6%)(一部地域を除く値)

以上の数字は外務省ホームページの「スリランカ民主社会主義共和国(Democratic Socialist Republic of Sri Lanka)基礎データ」から。

 

スリランカは世界的に祝日の多い国で、2021年にはたとえばこんな日がある。

1月28日は仏教の満月祭
3月11日はヒンドゥー教神聖日
5月14日はイスラーム教のラマダン明け大祭
12月25日はキリスト教のクリスマス

 

こんな国から日本語を学ぶためにやって来たスリランカ人のカップル(2人ともシンハラ人の仏教徒)と話をしていたとき、ボクがスリランカ旅行で驚いたこの写真を見せた。

 

 

旅行でお世話になった日本語ガイド(40代のおっさん)から「オレの家に来ないか?」と誘われて、おじゃました家に上の飾りが置いてあった。
ガイドは仏教徒と言っていたけど、これはなんかキリスト教っぽい。
違和感を感じてきいてみたらビンゴ、これはベツレヘムでキリスト(イエス)が誕生したシーンだった。

そうかあの小さな赤ん坊がキリストか。
だが待て。
やつは仏教徒と言っていたのに、このクリスマスデコレーションはおかしくないか?
これはただの飾りを超えて、”信仰”の領域に入っていないだろうか?
家族にキリスト教の信者がいるとか。

でも話をきくと、彼の家族はオール仏教徒でクリスチャンはゼロ。
これはあくまでも飾りだけど、クリスマスをキリスト教徒と一緒に祝う気持ちもあると言う。
いろいろな宗教の平和共存を大事にするスリランカではこんな感じに、クリスマスを楽しむ仏教徒は普通にいるらしい。
彼らはこれを、聖書に書かれているキリスト誕生の場面だと理解しているから、クリスマスツリーを飾ってフライドチキンを食べる日本人よりも、もっと真面目にクリスマスをとらえているようだ。
だとしたらなおさら、仏教徒であることとの矛盾が深まるような気がする。

これは本当にスリランカのフツーなんだろうか、それともこの一家は実は例外なのか。

 

そんなことを在日スリランカ人カップルにたずねると、「それはよくあります。わたしたちもクリスマスになると、そういう飾りをしますよ」と言うから、長年の謎が一瞬でとけた。
スリランカでは、仏教徒がクリスマスシーズンになると飾りをつけることは日常の範囲内で、夫の家族がよく行くお寺にもクリスマス飾りがあったという

日本だとお寺が経営する保育園で、お坊さんがサンタクロースの格好をして、子供たちにプレゼントを配るという話なら聞いたことがある。
「なんつーでたらめ。でも日本らしくて平和でよろしい」と思ったけど、スリランカはもっとデタラメなのでは?
さすがにクリスマス飾りのあるお寺は見たことない。

ググるとクリスマスツリーを出すお寺もあるから、日本でまったくないわけではないようだ。
でも、それを見た人から批判がきたように、仏教的に意義のあることだと住職が説明している。

 

日本でもスリランカでも仏教徒がクリスマスを祝うといっても、背景はまったく違う。
スリランカでは宗教対立が社会問題になっているから、お互いの違いを理解して敬意を払うことが必要で、祝いを共にするのは融和や寛大な精神のあかしだと2人は話す。
各宗教の祭り

日本でもスリランカでも仏教徒がクリスマスを祝うといっても、背景はまったく違う。
スリランカでは宗教対立が社会問題になっているから、お互いの違いを理解して敬意を払うことが必要で、祝いを共にするのは融和や寛大な精神のあかしだと2人は話す。
各宗教の祭りが国の祝日になっているのも、そんなワケからだ。

たしかにスリランカの宗教をめぐる争いは深刻だ。

が国の祝日になっているのも、そんなワケからだ。

たしかにスリランカの宗教をめぐる争いは深刻だ。
2年前には日本人を含む250人以上が死亡する連続爆破テロも起きた。
実行犯はイスラーム過激派のメンバーでこの事件後、社会には異教徒への不信が強まったという。

日本経済新聞の記事(2019年5月21日)

宗教や民族の違いを背景にした内戦が10年前に終結し安定を取り戻していた同国だが、イスラム教徒がらみの衝突が相次ぎ、社会の分断は深まる傾向にある。

スリランカ爆破テロから1カ月 宗教対立で分断深まる

 

「仏教徒でもクリスマスを祝うから、日本人もスリランカ人も似てますよ」と彼らは笑うのだけど、日本人は基本無宗教だし、社会に宗教対立なんてゼロといっていいほどない。
日本でクリスマスは個人的な”お楽しみイベント”だから、やっぱりスリランカとは違って軽くて適当だ。

 

ただスリランカで、仏教徒とキリスト教徒がケンカすることはなまずない。
仏教徒とイスラーム教徒の対立ならよくある。
そしてイスラーム教徒がクリスマスを祝うことはない。
イスラーム教徒もクリスマスや仏教の祭りを簡単にでも祝ってくれるといいと2人は言うが、それが無理なことは彼らがよく知っている。

 

おまけ

スリランカにある「ゾウの孤児院」。
ここは宗教に関係なく人類が楽しめる。

 

 

 

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2 件のコメント

  • >日本人は基本無宗教だし、

    そんなことないと思います。
    まず、日本人の宗教は「神仏混合を基本とする『日本教』」だと思いますね。葬式仏教と揶揄されることもありますが、新年に神社でお参りしたり富士山頂で御来光を拝むなんてのは、宗教的行為にほかならない。そもそも釈尊は「葬式のやり方」なんて、説いてませんよ。仏式の葬式は仏教ではなく、日本人の伝統宗教の一部なんです。
    中国人の多くが、典型的な仏教(=主に東南アジアに残っている上座部仏教)とは少し異なり、仏教や道教や迷信が渾然一体となった、いわゆる「中国仏教」の信者が多いのと同じです。
    日本人が自分たちのことを「無宗教」だと表現するのは、戦後の左派共産主義の影響が残っているのと、一種の「選民思想」にも近い、思い上がりであると私は考えます。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。