今回の話はスリランカなので、まずはこの国について簡単に知っておこう。
スリランカはインドの南に浮かぶ島国で、「インドの涙」とか「インド洋の真珠」なんてオシャレな呼び方をされることもある。
これがスリランカの基本スペックだ。
面積:6万5,607平方キロメートル(北海道の約0.8倍)
人口:約2,103万人(2016年)
首都:スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ
*コロンボは最大の都市だけど首都ではない。
民族:シンハラ人(74.9%),タミル人(15.3%),スリランカ・ムーア人(9.3%)
言語:公用語(シンハラ語,タミル語),連結語(英語)
宗教:仏教徒(70.1%),ヒンドゥ教徒(12.6%),イスラム教徒(9.7%),キリスト教徒(7.6%)
ソース:外務省の「スリランカ民主社会主義共和国 基礎データ」
スリランカは小さい国だけど、国内にはさまざまな民族・言語・宗教があって多様性にあふれている。昔から仏教が盛んに信仰されていて、ミャンマーやタイなどに仏教(上座部仏教)を伝えていたから、東南アジアの国にとっては「仏教の師」のような国だ(スリランカの仏教)。
古代の日本や朝鮮が中国(唐 )で仏教を習ったことと似ている。
スリランカでは仏教と政治が結びついている。最高位の仏教僧はスリランカ大の統領が命じることになっているし、新政権や国会議員は仏教僧から祝福を受けるという。しかし、仏教が国教になっているわけではない。
日本でもスリランカでも「生き物を殺してはいけない」ということは、仏教のとても大事な教えになっている。ボクがスリランカを旅行したとき、現地の日本語ガイドから、日本人とスリランカ人の違いについてこう聞いた。
「日本人は蚊を見るとたたいて殺してしまいますが、スリランカ人はそうしません。フッと息を吹いて蚊を飛ばします」
自分の血を吸ってる蚊ではなくて、宙を飛んでいるだけの蚊をたたく日本人を見ると、このガイドはちょっと引いてしまうらしい。でも、別のガイドから聞いたでは、最近は蚊をたたいて殺すスリランカ人も増えているらしい。
どっちにしても、スリランカ人が日本人より仏教の影響を強く受けていることは間違いない。だから、こんな問題も起こる。
CNNニュース(2019.02.13)
スリランカで処刑人を募集、大統領が死刑復活を発表
これまで死刑が行われていなかったスリランカで、シリセナ大統領が死刑を再開すると発表したため、処刑人をリクルートしているという。新聞広告には、「18~45歳のスリランカ人」「品行方正」「精神力が強いこと」といった条件があるとか。
法的には死刑制度があるものの、スリランカでは最高でも終身刑を言い渡されていたため、有名無実化していた。
上の記事には、「国内でただ一人残っていた執行人は2014年、一度も死刑を執行することなく退職した」とある。
しかし、時代が変われば社会も価値観も変わる。
シリセナ大統領は「麻薬関連の罪で有罪となった受刑者への死刑執行を2カ月以内に再開する」と表明した。
この大統領は、フィリピンのドゥテルテ大統領が行っている麻薬撲滅作戦を参考にしているという。彼がフィリピンを訪問したとき、ドゥテルテ氏の犯罪・麻薬対策を「世界全体の、そして私個人の手本だ」と絶賛した。
シャカさまはそれを聞いてどう思うのか?
しかし、仏教の影響がとても強いスリランカでは、死刑再開に人権団体が猛反発していて、処刑人を確保するのはむずかしそうだ。
このニュースに日本のネットの反応は?
・AIでいいだろ
・ネットでみんながクリックで押せばいいんじゃね
・完全歩合制、明るい方を募集してます
・アットホームな職場です
・北斗の拳でノコギリひかされる村人を思い出したわ。
・ご先祖様が徳川幕府公儀介錯人だった
俺の出番だな
日本人はこんな感じでテキトーなことを言っているけど、現地の人はこれをどう思っているのか?
最近スリランカ人と会ったときに話を聞いてみた。
彼らは日本に住む20代のカップルで、ともにシンハラ人の仏教徒。
「蚊」については息を吹きかけたりして、できるだけ殺さないようにしているけど、ときどき「ペチッ」とたたいてしまうことがある。
このニュースは彼らも知っていて、処刑人の給料は約2万円という。
スリランカでは平均的な月収らしい。
彼らの意見は、「仏教徒だったら、貧しくてもきっとこの仕事はやりたがらない。でも、イスラーム教徒ならする人がいると思う」というもの。
イスラーム教にはヤギの首を斬って殺す儀式があって、スリランカの仏教徒はこれをマジで嫌がっている。
だから処刑人になる抵抗は仏教徒より少ないはず、と彼らは言う。
さて、死刑を復活させたスリランカで、処刑人は見つかるのだろうか?

お土産にもらった紅茶。
スリランカといえばやっぱりセイロンティー。
おまけ
仏教精神と関係があるのか分からないけど、スリランカには「ゾウの孤児院」がある。
両親がいなくなったゾウを見つけたら、ここに運んできて人間が世話をしている。
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