世界は残酷で美しくない:中国・西洋のオソロシイ刑具や処刑法

 

食欲の秋にスポーツの秋、読書の秋。
アキにはいろんな顔があるんだが、今回は学問の秋として、中国と西洋の刑具や処刑法を見ていこう。
ある意味これは人間の発想力の現れだ。

さて、「幸せ」って何だろう。
この質問の答えは各自で考えてもらうとして、この漢字の成り立ちから言えば、それは殺されないことであり、身体の一部を切断されないことだ。

「幸」という漢字は古代中国で手を拘束された状態や、その刑具(手かせ)を表している。
数ある刑の中でも命や手足などを奪われることなく、手かせを付けられて、手の自由を制限されるだけ刑は比較的ラッキーだったということで、「幸」は「しあわせ」を意味するようになったという。
くわしいことは共同通信のコラムをどうぞ。

「幸」 手の自由を奪われるだけ

 

中国の歴史教科書に、「幸」の由来となったとみられる手かせ(首かせ)の絵がある。

 

「商」とは古代中国の殷王朝のこと。

 

罪を犯した人間には罰として、身体を道具で拘束し、自由を奪うことは古代から世界中で行われてきた。
犯罪者に警察が行う手錠もそのひとつ。
これは清朝末期だから、およそ100年前の中国で執行されていた刑罰だ。

 

 

木の箱から首だけ出ている刑具は、明の時代に登場した「立枷」といわれるもの。
これは犯罪者が何とか立っていられるぐらいの高さに調整され、疲れて体を支えられなくなると、首が伸びきって(窒息して?)死んでしまうというかなり残酷なシロモノだ。
最初から足がつかないような高さにして、首だけで体重を支えるようにしたこともあったらしい。
どっちにしても死は不可避。
よくこんな刑具を考え出したもんだな。
ただ動画のモノは殺害を目的としないで、見世物として立ちっぱなしにする拷問のように見える。

中国・五千年の歴史の中で生み出された最も残酷な処刑法は、何と言っても「凌遅刑」(りょうちけい)だろう。
ギロチンのように一瞬で終わらせるのは最も慈悲のある処刑法で、反対に、命がなくなるまで苦痛を与えつづける最悪のやり方がコレ。
受刑者の体に刃物を当てて肉を少しずつ削(そ)ぎ落とていき、死ぬまで激痛を味わわせるという、執行人にとっても拷問のような凌遅刑という処刑法が中国にはあった。

 

中国で凌遅刑を受けるフランス人(1858年)

 

するかどうかは自己責任にまかせるとして、「凌遅刑」で画像検索するとその写真がけっこうたくさん出てくる。
その理由は、写真が登場した清朝末期までこの刑は公開で行われていたし、この執行写真は西洋人に“人気”で絵はがきとして売られていたから。
こんなものをお土産や絵はがきとして購入するなんて、頭がどうかしている。と現代の感覚では思ってしまうが、むかしの西洋ではヒトが苦しむ姿を見るのを、一種の”娯楽”とする考え方があったのだ。

 

まえにこの記事で、「ストックス」という刑具について紹介した。

【ストックス】人に屈辱と苦痛を与える、英米のムゴイやり方

昔のヨーロッパで罪人は公の場でこの道具で身体を固定され、通行人から、ツバを吐きかけられる、蹴とばされる、ムチや棒でたたかれるといった侮辱や苦痛が与えられた。

 

 

ストックスのさらに上を行く、よりムゴイものにピロリーと呼ばれる「さらし台」がある。
罪人に対する刑罰や、そう疑われる人物への拷問で西洋ではこんなモノが使われていたのだ。

 

画像:Flominator

 

ピロリーにはめられると、こんなみじめな姿になる。

 

 

罪人はその罪が記されているプラカードと一緒に、この状態で人通りの多い広場や交差点などに放置され、肉体的苦痛と屈辱という精神的苦痛が与えられた。

ピロリーを使われるのは重罪を犯した人間で、公共の場で放置されるのは「辱しめ」を与えるためというのはみんな分かっていたから、これを見るために多くの人が集まって罪人をバカにしたり笑いものにした。
だけじゃない。
この無抵抗の人間をできるだけ苦しめるため、人びとは腐った食べ物、泥、動物の内臓や死骸、排泄物などを投げつけることもあった。
さらには興奮した群衆が石やレンガなどを投げたため、失明したり殺される犯罪者もあったという。

In addition to being jeered and mocked, those in the pillory might be pelted with rotten food, mud, offal, dead animals, and animal excrement. Sometimes people were killed or maimed in the pillory because crowds could get too violent and pelt the offender with stones, bricks and other dangerous objects.

Pillory

ピロリーでさらし者にされ、民衆に殺された「John Waller」という人物(イギリス、1732年)

 

「この世界は残酷だ。そしてとても美しい」とミカサは言うが、ピロリーに関しては残酷なだけで美しさなんて皆無だ。
ただひたすら臭くて汚い。

 

腐った魚、死んだ猫、泥で作った玉、野菜などを投げられて、もうカオス状態の罪人(イギリス、1810年)

 

刑具のpillory (ピロリー)はいまでは英単語になっていて、「(公然と)人を強く批判する、責め立てる、さらし者にする、つるし上げる、嘲笑の的にする、物笑いの種にする」という意味がある。

 

中国の「立枷」とか西洋のピロリーとか、人間に苦痛や屈辱を与えるオソロシイ刑具を本当によく思いつくもんだ。
こう見てくると、一周まわって殷の時代のコレが一番人道的だったかも。

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。