イギリスがいま悲しみに包まれている。
エリザベス女王と73年以上過ごしてきたフィリップ殿下がつい先日、99歳で息を引き取った。
ロンドンのウェストミンスター寺院では1分ごとに99回の鐘を鳴らして哀悼の意をあらわし、イギリス各地で追悼のための礼砲が放たれた。
バッキンガム宮殿やウィンザー城には多くの人が来て花をささげたものの、英王室は国民に対して、花束の代わりにフィリップ殿下が支援してきたチャリティー団体への寄付を呼びかける。
英BBCの記事(2021年4月10日)
Duke of Edinburgh: Palace asks public not to lay flowers for Prince Philip
Published3 days ago
新型ウイルス対策として政府が、大勢の市民が一か所に集まらないよう要請していることも背景にあるのだろうけど、故人への献花より慈善活動への参加を求めるところは本当にイギリス王室らしい。
まえにイギリス人と一緒に伊勢神宮へ行ったときに、イギリスにもこれと同じような意味合いの建物や施設があるかきいてみた。
すると彼女の返事はNO。
中世の時代、イエス=キリストが生まれたイスラエルの聖地エルサレムに行きたいと願っても、遠すぎて行けなかったイギリスのキリスト教徒は代わりにカンタベリー大聖堂へ礼拝に訪れたから、昔の日本人がした「伊勢詣で」をあえて例えるならそこだと思うと言う。
でも伊勢神宮で祀られている天照大神は神道の最高神であると同時に、天皇家の先祖神でもある。
一方、イギリス王室とキリスト教には直接的な関係がない。
神(ゴッド)の前では国王も一般のキリスト教徒も立場は同じだし、イギリス国教会のトップはカンタベリー大聖堂にいる大主教(カンタベリー大主教)だから、日本の天皇と天照大神、伊勢神宮のような関係が英王室にはない。
王室メンバーの結婚式や葬儀はキリスト教のスタイルで行うけれど、それは文化や伝統的なもので、基本的に王室と宗教は分かれているという。
日本の天皇にとって最も大事なことは、国民の健康や幸福を神に祈願すること。
1月1日の四方拝に始まり、12月31日の大祓(おおはらい)まで、天皇は一年を通じて国民の安全や幸せを願って宮中祭祀を行っている。
具体的な宮中祭祀は「主要祭儀一覧」でチェックされたし。
知人のイギリス人の話だと、全国民のために神へ祈るのはカンタベリー大主教のすることで、国王や王室はもっと世俗的なこと、チャリティー活動を特に熱心にしていて国民も彼らにそれを期待している。
もちろん日本の天皇・皇室も慈善活動に力を入れいているけれど、日本中の神々に国民の幸せを願う神道の儀式を行うことはとても重要だ。
天照大神の子孫にしかできないことがある。
イギリスの国王・王室はこの点でまったく違う。
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>知人のイギリス人の話だと、全国民のために神へ祈るのはカンタベリー大主教のすること
それはそうなんですが、カンタベリー大主教を指名するのはイギリス王室であり、実際に任命するのはイギリス首相ですね。
日本の場合、天皇家も首相も、伊勢神宮の宮司を指名したり任命したりはしません。(皇室から宮司の家へ嫁入りすることはあるけれども。)
人事任命権が重要と見るか、日常的活動の種別が重要と見るか。
イギリスと日本とで、どちらが王室(皇室)と宗教がより分かれているかは、微妙なところだと思いますよ。
カンタベリー大主教は聖職者と信徒の委員会が候補者を選んで首相がきめて、国王が指名するだけですから形式だけです。
最高神の子孫で宗教行事を主催する天皇とは大きく違います。
> 最高神の子孫で
ははは、その主張がすでに事実かどうかも分からない。単なる伝承ですよね。
天皇家が宗教行事を主催している日本と違って、英国は、国王と政府がカソリック教会から大司教任命の人事権を奪って、自国の政治体制の中に取り込んでしまったという訳です。
日本と英国でその辺の関係が大きく違うのはその通りですが、いま問題としているのは「どちらがより分かれているか」であり、それはすなわち、どちらが近代民主主義の原則である「政教分離」に近づいているかという点です。つまり、その英国人の思い上がった自国の政治体制に対する高評価に、異議を申し立てているのですよ。
思い上がった欧米人たちの考え方にね。
その伝承が天皇の正統性であることは事実です。
これが日本の歴史や文化に決定的な影響を与えてきたことも事実です。
天皇と国王ではなく、政治のことなら話は別ですね。