あるマダガスカル人が日本人についてこう言った。
「Japanese people are careful, they think before they act」
日本人は注意深くて、よく考えてから行動する。
これを言い換えると、日本人は安全重視で慎重に考えるけど決断や動き出しは遅い、ということになる。
日本人に対してこんなイメージを持つ外国人はよくいるのだ。
さて隣国を見てみると、中央日報日本語版にこんな記事があり。(2021.04.20)
ワクチン接種率が経済成長率を変える…NYT「接種遅い韓国、経済の足引っ張る懸念」
海外メディアから、新型コロナウイルスのワクチン接種が遅いと指摘された韓国ではいま、「世界的な景気回復の流れから脱落するかも…」という不安があるという。
世界の主要国(OECD加盟国)のなかでワクチン接種率が高い国には、イスラエル(61.73%)、英国(48.16%)、米国(38.72%)、カナダ(23.49%)、ドイツ(18.98%)、フランス(18.07%)などがある。
*国民が最低1回のワクチン接種を受けた割合。
新型コロナから国民を守るには、防疫よりもワクチン接種のほうがいまは有効だ。
これはもちろんゼロか100かの選択ではない。けれど、ワクチン接種をより重視力するのはいまや世界的な常識。
実際これが進んでいる国では、経済や日常生活が順調に回復している。
英国はこの数週間で交通量と通勤が増えて、求人件数や飲食店の予約がコロナ流行後では最高水準に急増した。イスラエルでは外でのマスク着用義務が解除され、来月からはワクチンを打った外国人の団体観光客を受け入れる方針だ。
アメリカではことし2月の失業率は6.2%と、昨年4月(14.8%)の半分以下になった。
知人のアメリカ人の話だと、ニューヨークでは5割ぐらいの人が接種済みで、レストランは深夜までオープンしてもOKとなり、経済は確実に回復している。
ワクチン接種と経済が連動していることは間違いない。
国際通貨基金(IMF)はアメリカとイギリスの今年の国内総生産(GDP)の成長率をそれぞれ上方修正した。
もっともワクチンは無敵ではない。
この効果を過信して封鎖を早く解いてしまった結果、接種率は高いものの、感染者が急増したチリのような国もあるから、ワクチン接種をすればいいという単純なものでもない。
しかし最適解だ。
「接種遅い韓国、経済の足引っ張る懸念」というニューヨークタイムズの指摘に反論できる韓国人はきっといない。
でも、それより遅いのが日本だ。
日本のワクチン接種率はOECD加盟国、37カ国でダントツの最下位。
イスラエル・イギリス・アメリカは別格として、カナダの23%、ドイツの19%、フランスの18%に対して、日本は0.96%と絶望的なレベル。
ワクチンの接種を開始した時期は韓国よりも早くて、そのときは「さすが日本ですよ。それに比べてわが国にはホントにダメです」と知人の韓国人が言っていたのに、いまではかる~く抜かれてしまった。
日本の人口100人あたりの接種回数は1.53回だ。
ワクチン接種が新型コロナ対策の切り札であることは、日本もよくわかっているはずなのに、世界平均の11.61回より大幅に少ない。
いま“内乱”状態になっているミャンマー(1.91回)をも下回っているというのは、一体どういうことなのか。
当然、日本の感染再拡大は止まらない。
それで大阪は昨年4月と今年1月に続いて、3度目の緊急事態宣言を政府に要請することを決めた。
これまでの時短要請ではもはやヌルイ。
飲食店や百貨店などに対して吉村知事は、
「より厳しく、強い措置を集中してやるのが重要ではないかと思う。都心への人の動きを止めるような措置が必要。街全体で人流を止めることをしないといけない」
ということで、今回は休業要請を行う考えで、実質的にはロックダウン(都市封鎖)に近いようだ。
アメリカやイギリスとは反対のことがいまの日本で起きている。
大事なゴールデンウイークにこの直撃を受ける人たちの怒りや嘆きは、いま日本に住んでいる人ならだれでもわかるはず。
でも病院がパンク状態で入院できない人が増える一方なのだから、これもやむなしか。
これにネットの声は?
・変異株なら学校や保育園閉めないと意味ないと思うぞ
・緊急事態を早めに解除したくせに今度はヤバいってマジ草🤣
・もう今年の収束もないからな
そのつもりでいた方がいい
・吉村じゃなかったらもっと酷いことになってるわ。
・引きこもり歴10年の俺に死角なし
東京も、休業要請を含む緊急事態宣言を検討している。
それほど切迫していなくてもそれに近い、ギリギリの都市は全国にいくつもあるはずだ。
ドイツではきょねん12月からワクチン接種が始まった。
年を越して2月になっても、まだ日本ではスタートしていないことを知った友人のドイツ人は「え~」と驚いて、「そんなに遅いの。日本は夏にオリンピックをやるんだよね?コロナ対策がうまくいっているから、ワクチン接種は遅くてもいいのかな」なんてことを言う。
ネットを見ていたら、同じようなことを言われたフランス在住の日本人がいた。
五輪開催を世界に向けて宣言しているけど、ワクチン接種が進んでいない。
そんな現状に矛盾を感じるとフランス人から言われて、その人は何も言えなかったとか。
では、なんで日本はこんなに遅いのか?
国内でワクチン生産ができないことはもちろんある。がそういう国はたくさんある。
「nippon.com」の記事(2021.01.27)で、聖マリアンナ医科大学病院の感染症センター長・國島広之氏がその理由を3つ指摘している。
日本のコロナワクチン接種はなぜ遅いのか?
・感染症などの希少医薬品を開発できる製薬企業やベンチャー企業が日本に少ない
・新規医薬品の治験に関わる医療機関の体制が弱い
この2点のほかに、これが最も大きな理由なんだろうが、「日本人が従来からワクチンの安全性や有効性について慎重な国民性であること」を挙げる。
具体的にいえば、副反応を不安に思うから日本人はワクチン接種に積極的になれない。
実際に始まってみると予約が殺到したという報道もあるし、これもゼロか100ではなくて、海外と比較した話のはず。
外国は副反応のリスクと、感染拡大を早く収束させるメリットを考えた結果、ワクチン接種を選んだ。
ワクチンの承認を早めた国が多い一方、日本は通常の手続きだったらしい。
「誰も死なせない!みんな助ける!」というのはアニメの話で、現実には毎日コロナの犠牲者が出ている。
副作用で最悪亡くなる人がいるかもしれないけど、感染収束が遅れれば、それだけ死者も増えるし経済回復は確実に遅れる。
五輪開催を本気で考えているわりには、外国人が不思議に思うほどこの国のワクチン接種は遅い。
「決められない政治」は日本政治の昔からのお約束だ。
それに「Japanese people are careful, they think before they act」と思う外国人は冒頭のマダガスカル人だけじゃない。
海外から見ると日本は安全を重視しすぎるらしく、今月それで国際水泳連盟(FINA)が激怒した。
「審判など関係者が入国後3日間隔離が必要」といった日本ルールに不満を持ったFINAは大会を中止すると発表。
でもこれは五輪最終予選の大会だから、中止になったら日本が困る。
ということで日本が譲歩して、大会は開かれることとなった。
朝日新聞の記事(2021年4月9日)
五輪最終予選の3大会、一転実施へ調整 国際水泳連盟
世界が共通の危機をむかえると、その対処の仕方で国民性が現れる。
日本人はやっぱりリスクを嫌って、安全を重視・優先する傾向が特に強い。
場面によってはそれは長所でも、ワクチン接種ではOECD加盟国のなかで、ダントツの最下位という最悪の結果をまねく原因になっている。
とはいえ「政府は遅い!何やってんだ!」と怒っても、重大な副作用が発生すると「政府のせいだ!」と怒るんだろうから、これは仕方ないですね。
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