きのう4月25日は「世界マラリア・デー」。
2000年のこの日、ナイジェリアでマラリア撲滅国際会議が開かれて、国際社会が「地球上からマラリアを撲滅するぞー!」と宣言。それを記念して「アフリカ・マラリア・デー」がつくられ、2008年から世界保健機関が「世界マラリア・デー」とした。
最も多くの人間の命を奪う生き物という意味では、いま人類最悪の敵は蚊だ。
*「いや違う。それは人間だ!」みたいな揚げ足取りをしなければ。
この小さな悪魔によって世界では年間2.16億人がマラリアに感染し、44.5万人が死亡している(2016年)。
この犠牲者は特にアフリカで多いから、ナイジェリアで会議が開催されたことと無関係ではないだろう。
さてそのナイジェリアの近くにはマリという国がある。
漢字で書くと「鞠」なら平安貴族っぽい優雅な国名だったけど、実際のところは音訳で「馬里」になる。
マリってこんな国
面積:124万平方キロメートル(日本の約3.3倍)
人口:1,966万人(2019年)
首都:バマコ
民族:バンバラ、プル、マリンケ、トゥアレグ等
言語:フランス語(公用語)、バンバラ語、フルフルデ語、マリンケ語等
宗教:イスラム教(80%)、伝統的宗教、キリスト教
外務省ホームページ「マリ共和国(Republic of Mali)基礎データ」から。
「馬里」だとたくさんの馬が草を食べている平和なイメージがあるんだが、マリという国名はバンバラ語で「カバ」を指す。
日本の動物園や絵本で見るカバさんと違って、アフリカにいるリアル・カバはデカくて重いし、とても強いのだ。
想像してごらん。
1トンの巨体がスクーター並みの時速60キロで襲ってくる瞬間を。
しかもカバの嚙む力はすさまじく、ワニさえ嚙み殺すことがある。
アフリカ人にとっては恐怖の化身のようで、強さのシンボルとしてマリ(カバ)の国名になったという。
20ねんほど前、セネガルからマリへ列車で移動していたとき、たしか郵便局の職員をしていたマリ人からそんな国名の由来を聞いて「なるほど」と感心。
では、マリで最も恐ろしい生き物はカバなのかたずねたら、「バカ。それは違う」と秒で否定された。
「それはマラリアなどの病気を運ぶ蚊だな。一対一で向き合えばカバのほうが恐ろしい。でも、日常生活でそんな機会はない。北部のサハラ砂漠ならいいけど、蚊は田舎にも都市にもどこにでもいるし、逃げられないからね」
現地の人は免疫があるからマラリアにかかっても、普通は数日、高熱でうなされて終わり。
でも、子供や体力のない人はそれで死ぬことも珍しくないという。
アフリカが野生動物の楽園といっても、日本の動物園で初めてライオンを見たアフリカ人もいるように、人間界と動物界は基本的には別々で、サファリにでも行かない限り、猛獣を見ることはないという人がほとんどだ。
ということで現実的には縁のないカバやライオンより、あえて言えば、病気を運ぶ蚊やハエに恐怖を感じるとマリ人が言う。
すると、まわりのアフリカ人も「そうそう」とうなづく。
列車から見えた川
この鉄格子は、窓から人が入ってこないようにするためらしい。
日本でも昔はこの病気があって、平安時代にできた源氏物語にもでてくる。
マラリア(瘧:おこり)にかかった光源氏がお坊さんに祈祷してもうために北山を訪れると、そこで見かけた10歳ほどの少女に心をひかれる。
その後なんやかんやあって、その少女を光源氏が引き取ることになり、自分好みの女性に育てる。
現在なら犯罪のニオイがするような話が源氏物語の「若紫」にある。
光源氏がこの少女と出会ったきっかけは、ある意味マラリアが提供してくれたようなもの。
平安時代の日本人にとっては一般的な病気だったのだろう。
明治時代には年間20万人いたマラリア患者もその後は減りつづけて、1959年に彦根市で発生した事例を最後に(沖縄県では米軍統治下の1962年に)なくなった。
海外で感染して、帰国後にマラリアを発症するケースならある。
アフリカがこの脅威から抜け出すには、まだまだ時間がかかりそう。
こちらの記事もいかがですか?
アフリカの負の世界遺産(黒人奴隷):ガーナのケープ・コースト城
日本とエチオピアの関係・民族の文化「窓から悪霊」、「唇にお皿」
アフリカの旅(国)が、こんなにひどいなんて聞いてなかったから。
日本の「kawaii(かわいい)文化」!海外の反応は?由来は?
> 「馬里」だとたくさんの馬が草を食べている平和なイメージがあるんだが、マリという国名はバンバラ語で「カバ」を指す。
カバは漢字で書けば「河馬」です。マリ(馬里)という国名は「河馬の里」を意味すると解釈すれば、単なる音訳とは思えない。発音だけでなく意味においてもその通りです。
これから温暖化が進むと、日本でも蚊を媒介者とする南国由来の伝染病が増えてくるのでは? と懸念されています。最近では、ヒトスジシマカに刺されて「デング熱」に感染する人が出ていますね。いずれマラリアも復活することになるのかもしれません。
私は光源氏のようにモテモテでなくてもいいから、マラリアに感染するのはまっぴっらゴメンです。日本でも、山林に行くときは必ず長袖・長ズボンで行きましょう。虫よけスプレーや電池式香取も役に立ちます。
自然を楽しむのもいいが、命あっての物種ですよ。