台湾人からみた日本統治:マラリア退治で、瘴癘島から美麗島へ

 

人類がまだ克服できていない小さな悪魔、それが蚊。
蚊によってマラリアに感染し、毎年数十万人が死亡している。
ということを前回書いたので今回は、日本人が海外(国内ともいえる)でこの撲滅に大きく貢献した話を書いていこう。

 

「マラリアの蚊を入れぬよう、破れた網戸を修理しなさい」と呼びかけるアメリカのポスター(1940年代)

 

先々週、知人の台湾人がこんなパイナップルケーキと、観光地が描かれた台湾島の板を送ってくれた。

 

台湾は「美しい島」という意味で、フォルモサと呼ばれることがある。
16世紀にこの島を見たポルトガル人が「イーリャ・フォルモーザ(美しい島)」と感嘆の声をあげたことがこのニックネームの由来という。
漢字で書けば「美麗島」だ。
現代の日本人にとってはグルメの島で「美味島」か。

 

日台関係と書いて「マブダチ」と読んでも特に違和感がないほど、日本と台湾の関係は良好だ。
2011年に東日本大震災が起きたとき、台湾の人たちは日本人の痛みを自分のもののように感じて全力支援をしてくれた。
その気持ちを日本人は忘れない。
それから10年たったことし3月、感謝の気持ちを伝えるこんなドでかいボードが台湾の中心都市・台北の地下鉄構内にはり出された。

 

 

たまたま通りかかった知人の台湾人がこれを見つけて、「あれは本当に感激しました!」と送ってくれたのが上の写真だ。

それからすぐあと、中国から輸入停止を告げられて、台湾産パイナップルの行き場のなくなって農家が困っているという話が日本へ伝わった。
すると今度はわれわれの番と、日本人が「買って応援キャンペーン」を始めた。

そんな日本での動きを知人の台湾人にしたところ、「マジですか!」と感激して、「最近人気のパイナップルケーキがあるんですっ。ぜひ食べてください」と送ってくれたのが先ほどのもの。

 

 

日本と台湾が現在のように感謝と感謝の気持ちで結ばれた、すこぶる良い関係になっている理由のひとつに過去の日本統治がある。
1895年~1945年の日治時代には光と闇があり、現在ではそれを公平に評価して、良いことは良いと言ってくれる台湾人は多い。

たとえばこのまえ、「Hsu Hsu」さんという台湾人が日本に関する投稿をSNSにしていた。
日本が台湾統治をはじめたころ、現地でマラリアなどの伝染病で死ぬ日本人がたくさんいたことにふれ、「Hsu Hsu」さんはこう言う。

「明治天皇陛下の命令で当時の台湾総督府は遂に台湾島で11箇所の避病院(伝染病治療病院*済生会病院)を設置しました。
このきっかけで、もともとは医療技術水準が低下していた台湾島は当時の日本人の医療技術の導入のお陰で、台湾島の医療水準が徐々に向上して来ました。」

「日本人のおかげで、台湾の医療水準が徐々に向上していった」というセリフは、日本人の立場で言うと自画自賛のホルホルになりかねないが、台湾人の言葉なら別だ。

国立台湾大学歴史学科の元教授、張秀蓉氏も、そのことを台湾人に広く知ってもらうために『日治台湾-医療公衛五十年』(日本による台湾統治-医療公衆衛生の50年)という本を書いた。

TAIWAN TODAYの記事(2012/04/13)

台湾の近代的な医療公衆衛生の基礎は日本統治時代における日本政府が築いたことをより多くの人が知るよう期待した。

歴史学者:台湾の医療公衆衛生は日本統治時代に基礎

 

さまざまな伝染病があったことから台湾は昔、「瘴癘(しょうれい)の島」と言われていて、なかでも最も恐れられていたのがマラリア。
「瘴」は山や川で発生する毒気、「癘」はマラリアなどの感染症のこと。
マラリアの語源は「悪い空気」を意味するイタリア語(mala aria)。

台湾のマラリア蚊については木下嘉七郎をはじめ多くの日本人が研究し、台湾人と一緒に上下水道を整備するなどして公衆衛生を向上させていった結果、マラリアとかいう悪魔はなくなった。
毒気のただよう瘴癘島が美麗島になる。
パイナップルケーキをくれた知人の台湾人も、台湾からマラリアをなくしたことは日本統治のすごく良い面だと評価し感謝もしていた。

 

で現在はどうか?

新型コロナウイルスの脅威にさらされているのは日本も台湾も同じこと。
でも日本政府が何度も緊急事態宣言を出していることを、台湾のテレビニュースで知った「Hsu Hsu」さんはため息まじりにこう話す。

「当時、最新医療技術を台湾島に導入したのは元大日本帝国だったのに、なぜ、今の台湾政府の防疫対策の水準は日本国を優れているのでしょうか?」

多少の日本語の多少のミスはどうでもいい。
医療技術の面で日本が台湾に負けていることはないとしても、政治については何も言えねぇ。
今度は日本が台湾から防疫対策を学んでもいい。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。