日露戦争がはじまる前年、1903年5月24日に日本初のゴルフ場・神戸ゴルフ倶楽部がオープンしたことから、毎年この日は「ゴルフ場記念日」になっている。
ゴルフといえば先月、世界的に有名な大会(マスターズ)で、松山英樹選手がアジア人として初めて優勝する快挙を成しとげた。
*それまでの最高位は2009年の片山晋呉選手の4位
このとき松山選手は当然として、キャディを務めた早藤将太さんも海外で注目を浴びた。
それは優勝が決まった瞬間、日本人を象徴するような態度を見せたから。
Following Hideki Matsuyama’s Masters win, his caddie, Shota Hayafuji, bowed to the course after returning the pin on the 18th hole. #themasters pic.twitter.com/gdLsWSC0Ac
— ESPN (@espn) April 11, 2021
世界中から寄せられたコメントを見ると、「原爆を2発も落とされたのに彼は何をしてんだ?」というのは例外として、「That’s awesome!!」や「So classy」といった祝福と賞賛の山。
The Japanese are such dignified, respectful people. They respect their elders, their families, their traditions and customs, their opponents, each other and nature itself.
日本人はとてもdignified(威厳のある、りりしい、堂々とした)で礼儀正しい人たちだ。
年長者、家族、伝統や習慣、相手、お互い、そして自然にも敬意をしめす。
Heartwarming sign of dignity and respect. We need more of this in the world.
尊厳と敬意のある、心温まる態度だ。世界にはもっとこのようなことが必要だ。
Americans could never understand why.
アメリカ人にはこのジェスチャーの意味が永遠にわからないだろうね。
このとき早藤さんは感謝の気持ちでいっぱいになり、マスターズへの敬意をしめすために、心の中で「ありがとうございました」と言いながら帽子を取って頭を下げたという。
アメリカのいくつものメディアが、このお辞儀を今大会の印象的なシーンとして紹介した。
韓国では朝鮮日報が記事にしている。(2021/04/14)
あらゆるものに神が宿っているという考えが強い日本では、ラウンドの前後にこのようにコースに向かって「良いラウンドになりますように」「良いラウンドができた。ありがとう」と一礼する選手やキャディが少なくない。
「優勝を許してくれてありがとう」 松山のキャディ早藤、マスターズコースに一礼
許してくれてというよりは、「させてくれて」、「認めてくれて」のほうが正しいような。
海外で日本人のお辞儀はどう解釈されているのか?
英語版ウィキペディアの説明には、お辞儀は日本文化の代表的なものであり、尊敬や社会的地位を重視する現代の日本では、社会的エチケットの基本的な部分になっていると書いてある。
「早藤さんの一礼」について知人のアメリカ人に意見を聞いてみたら、こんなことを言う。
日本人の価値観や考え方を知っている人なら、あのシーンを見てすぐに、彼が感謝や敬意をしめしていることがわかるはず。
そうでないアメリカ人なら、わかる人もいれば不思議に思う人もいる。
ゴルフ場は“生きて”いないから、誰かが感謝をしてもそれを感じることができない。
だからお辞儀をしても無意味だし、必要がないと考える人もいるだろう。
でも全体的にはあの態度を「日本人らしい尊敬の表し方」と好意的に受け止めて、手をたたいて賞賛する人が多いと思う。
アメリカ人がスポーツ大会で優秀したら、自分を支えてくれた家族や友人、それとチームのメンバーに感謝する。ゴルフ場などの場所に対してそれはない。
それとテレビカメラの前では、スポンサー企業に感謝することも大事。
ドイツ人に同じことを聞いたら、彼もこれと同じことを言う。
人と自然を含めて、すべてに感謝と敬意の気持ちをあらわすのは、世界でも日本人ぐらいしかいないのでは。
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> Shota Hayafuji, bowed to the course after returning the pin on the 18th hole.
「bow to ~」は、「~に向かって(上半身が虹の形のように深々と)お辞儀をする」ことですね。
「ritirm the pin on the 18th hole」は、(グリーンの)ピンを18番ホールに立てて戻すこと。
日本人にはあまり一般的な表現ではないだろうから、英文の直後にでも翻訳を入れてあげた方が親切なのでは?
こうしてみると、日本人の心の奥底に宿るアミニズム(自然信仰)は、一神教を信仰する外国人にはたいへん理解が難しいのでしょうね。
「本当の神はこの世に唯一人、我らの神と教義だけが正しい。他はすべてニセモノだ」とする思想では、争いの原因となるに決まってます。ダイバーシティ(多様性)を重視することを訴える欧米人たちは、その矛盾に気づかないのかなぁ。あるいは、宗教だけは別物なのか。
「ritirm the pin ⇒ 「return the pin
アミニズム(自然信仰) ⇒ アニミズム(自然信仰) ですね。失礼しました。
ラテン語の anima(生命)は、animation にも通じる単語です。