【ルワンダ虐殺】責任は認めるが、謝罪は拒否するヨーロッパ

 

*はじめに注意。
今回のテーマは“虐殺”というダークな歴史なので、これから遺骨の写真が出てきますよ。

先週5月25日は「アフリカデー」ということで、こんな記事を書いたわけだ。

【白人の責務】アフリカ・中東で直線の国境が多い悲しい理由

アフリカ諸国が協力して平和を守って発展いこー!ということで1963年5月25日にアフリカ統一機構(いまのアフリカ連合)が発足した。
アフリカというと貧困や紛争といった“負のイメージ”を持つ日本人は多いかもしれないが、実際のところ、貧困に苦しむ人は億単位でいるし争いも絶えない。
ただ、その大きな原因をつくったのは現在のヨーロッパ先進国だ。
20世紀の前後にフランス、イギリス、ベルギーなどが自分の都合で、アフリカの領土や支配権を奪い合ったことがいまも負の影響を与え続けている。

ヨーロッパ人が現地の事情を無視して、土地や民族を分断したことからいろいろな争いがうまれ、1994年には人類史に記録される悲劇と惨劇がルワンダでおきた。
フツ族出身のハビャリマナ大統領が暗殺されたことをきっかけに、これをツチ族のしわざとみなしたフツ族の過激派や民兵が、ツチ族や穏健派のフツ族を殺しに殺し、約100日の間に80万~100万人が犠牲となる。
同じフツ族でも“ツチ族寄り”とみられた穏健派の人たちは、過激派からみれば“裏切り者”だから彼らにも容赦はなかった。

ここではこの大虐殺の直接的な原因ではなくて、100年ほど前にヨーロッパ人がつくった重大な原因を中心に書いていこう。

 

虐殺の犠牲者

 

もともとフツ族とツチ族には言葉や宗教などでちがいはなく、両民族の起源は同じだったと現在では考えられている。
まフツ族・ツチ族の間での結婚もよくあった。
でも、ヨーロッパ人がこの地に来て両民族を区別するようになってから、この“平和的共存”は崩壊する。

少数の人間が多数を支配するときには、団結して抵抗運動を起こさせないように、支配者する側がされる側を意図的・政策的に分けて統治する「分割統治」がヨーロッパ人のお約束。
こうやって反乱を抑えることは古代ローマ時代におこなわれていたし、イギリスもその政策を採用してヒンドゥー教徒とイスラム教徒を分断し、インドをずる賢く統治していた。

19世紀のヨーロッパ人は彼らの人類学から、現在のルワンダのあたりの人間をフツ、ツチ、トゥワの3民族に分けて考えた。
ベルギーはルワンダを効率的に支配するため、この違いを利用してツチ族とフチ族の分断をはかる。
地方の行政責任者はツチ族の人間にまかせ、納税でもツチを優遇。のにならず、公立学校で教育を受けることができたのもツチだけ。(例外的にフツ族もいたかもしれない)

ベルギーは社会のいろいろな面でツチ族を優先し、結果的にフツ族を差別してきた。
両民族が対立していたら団結して歯向かうことはなく、支配者としてのベルギーの立場はゆるがない。
この体制をさらに強固なものにするため、ベルギーは1930年代にIDカード制を導入し、ツチ・フツの区別をすぐにできるようにした。

その約60年後、そのIDカードでどの民族かを判断し、こんな蛮行を行ったのはこのとき冷遇されていたフツ族だ。

犠牲者は自身の配偶者や子供を殺すことを強いられ、子供は親の目の前で殺害され、血縁関係者同士の近親相姦を強要され、他の犠牲者の血肉を食らうことを強制された。多くの人々が建物に押し込まれ、手榴弾で爆殺されたり、放火により生きたまま焼き殺された。

ルワンダ虐殺

ントラマ教会
この教会へ逃げ込んだ数千人のツチの人たちが、刃物や銃で殺害されたり生きたまま焼き殺された。

 

1994年7月4日にルワンダ愛国戦線が首都キガリを制圧して、この悪夢はようやく終わった。

でもこれで完全終了とはいかない。
つい先日、産経新聞にこんなニュースがあった。(2021年5月28日)

ルワンダ虐殺でフランスの責任認める マクロン大統領、謝罪はせず

当時フランスは、アフリカの数少ないフランス語圏のルワンダを英語圏から“守ろう”とするなど、自分たちの利益からフツ族中心の政権を支持していた。
虐殺には直接かかわっていないとはいえ、それが起きる可能性があることを事前に知りながら、フランスはその警告を無視した。
もしこのときルワンダにいたフランス軍がツチ族保護のために積極的に活動をしていたら、あそこまでの規模の犠牲者は出なかったはず。

それで「最悪の事態へと展開していく中で、圧倒的に重い責任を負った。謙虚さと敬意をもって、私たちの責任を認める」とマクロン大統領が公式に認めた。
謙虚さと敬意をもって責任を認めたが、謝罪は拒否。
この2つはまったくの別ものだから、ルワンダ虐殺についてはベルギーも「責任を引き受ける」と述べたけれど、謝罪はしていない。
これで謝罪すると法的責任がうまれるとか、イロイロ面倒なことになるおそれがあるから、そのへんは国家元首として一線を引く必要がある。
国家は簡単には謝れないのだ。

これに日本のネットの声は?

・しかしお互いよく見分けつくなぁ、、、
とは思った。
・80万人虐殺とかさ
原爆二度落としても50万人だぞ
・でも謝罪もしないし金も払わねえんだろ
・フランス「虐殺が起きそうだからツチ族は、こっちに集まって」
集められたツチ族は フツ族に包囲されて虐殺されましたとさ
・映画でみたんだが凶器はナタだったりするから
おねがいだからせめて銃にしてほしいって…

タラ・レバを言ったらキリがないんだが、ヨーロッパ人が自分たちの考え方から同じ人間を区別し、互いを憎しみ合うように仕向け、さらにIDカードで識別を容易にしなかったら、この虐殺はきっと起こらなかった。

 

 

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1 個のコメント

  • > タラ・レバを言ったらキリがないんだが、ヨーロッパ人が自分たちの考え方から同じ人間を区別し、互いを憎しみ合うように仕向け、さらにIDカードで識別を容易にしなかったら、この虐殺はきっと起こらなかった。

    それはそうでしょうね。
    でも、アフリカ諸国で未だに国家間や民族間の対立による争い事が耐えない現状を見るとなぁ・・・。
    独立した以上、もはや自分たちの国の進むべき道は自分たちで決めなければならない。他国の責任にはできないのですよ。
    日本は昔から島国で本当に運が良かった。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。