【日本人とところてん】簡単な歴史・漢字で「心太」のワケ

 

きのう6月10日は「ところてんの日」ということで、農林水産省が公式ツイッターにこんな投稿をアップップ。
*「ぬ」の洪水の中に「ね」があるから探してみよう。

 

*「ぬ」の洪水の中に「ね」があるから探してみよう。

 

これが何のことかサッパリわからなかったんでネットを見てみたら、アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』に出てくるキャラ「ところ天の助」が持ってる「ぬのハンカチ」のデザインらしい。
著作権で問題はないし、「農水省がふざけすぎ!」という苦情もなく、このツイートは好評で6万以上の「いいね」をゲット。

 

 

なんで6月10日が「ところてんの日」なのか?
この原料となる海草のテングサの漁がこの時期に解禁されること、それと「てん(10)」はいいとして、6を「ところ」と読ませるというチカラ技でこの記念日ができた。
ところてんの良さや文化・伝統を広めていくことが目的で、これが農水省の「ぬぬぬ」ツイートにつながる。

では、日本で最もテングサがとれるところはどこか?

それはわが静岡にある伊豆半島で、質の高いテングサから作られる「伊豆ところてん」は別格のウマさだ。食べたことないけど。
ではここで、ところてんの歴史を見てみようか。

 

日本には6世紀、中国から精進料理のこんにゃくと一緒にところてんの製法が伝わったと考えられている。
という話もあるんだが、ところてんの由来には、海草を煮たスープをほったらかしにしたら偶然できたという説もある。
どっちにしても東大寺・正倉院の書物の中にその記述があるから、ところてんは奈良時代にはもう日本にあった、1000年以上の歴史のある食べ物なのは間違いない。
そのころのところてんは宮中行事で食べられる、貴族など上級国民のためのスペシャル・フードだったようだ。

これがいまのように庶民が気軽に食べるようになったのは、天下泰平の平和な世の中になった江戸時代になってから。
この時代の日本人は砂糖や醤油をかけて、ところてんをおやつ感覚で食べていた。

ところてん売りの天秤棒は透かし格子にすることで涼感を演出した。値段は寛永通宝一文(現在の価格で25~40円)であった。

ところてん

 

俳句で「ところてん」は昔から夏の季語になっていて、

小林一茶は「軒下の拵へ滝や心太」
松尾芭蕉は「清滝の水汲ませてやところてん」

という句を詠んだ。
*芭蕉の言う「清滝」は京都・右京区にある清滝のことだろう。

「心太」を「こころぶと」と読んじゃった人がいるかもしれないが、それも正解。
もともとこの食べ物は奈良時代には「こころぶと」と呼ばれていて、心太の漢字があてられた。
それが後に「こころてい」になり、さらに「ところてん」となったという。
いまでも「こころぶと」を漢字変換すると「心太」がでてくるから、その読み方でもOKだ。

 

「伊豆ところてん」を販売するサイト、セレクトフードコパンの「ところてんとは?」によると、テングサを煮てドロドロに溶けたものが「さめて煮こごる藻」であることから、「こごる藻葉(コゴルモハ)」とよばれるようになり、これが「ココロブト」になった。
江戸時代には一般的にトコロテンとよばれていた。

さて暑くなってジメジメ蒸し蒸ししてきたから、江戸時代の庶民が愛した一品で涼をとろうか。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。