日本に住むイスラム教徒の「土葬できない!」問題をどうする?

 

どんな宗教や民族の人でもこの世に生まれたら、いつかは去らないといけない。
それが人類共通の運命でも、サヨナラの仕方は宗教によっていろいろな違いがある。
仏教やヒンドゥー教なら火葬、イスラム教やキリスト教では伝統的には土葬だ。

後者の風習がほとんどない現代の日本で問題になっているのがこれ。

NHKニュース(2021年6月8日)

“土葬できる公営墓地を” 大分県のイスラム教徒 国に陳情へ

まず、いまの日本で土葬は禁止されているわけではなく、亡くなった人を埋めることは合法だから、イスラム教徒が土葬を求めることは「郷に入っては郷に従え」の原則にしたがっている。
京都・和歌山・山梨など土葬できる墓地は各地にあるものの、国内に住むイスラム教徒の数に比べるとそのスペースは小さくて、埋葬先に困るケースが出ているのが現状だ。
それでイスラム教徒の団体が九州に新しい埋葬地を作ろうと土地を購入し計画を進めていたところ、周辺住民の反対を受けていまは実現の見通しが立っていない。

土葬のための墓地を作るには「地下水などの飲用水に影響しない」、「住民感情に配慮する」といったルールが定められているから、団体としても墓地建設を強行することはできない。
それで困って国に対して、土葬できる公営墓地を整備するよう陳情することにしたという。
日本国籍を持つ代表者はこう話す。

「日本に暮らす外国人が増える中、自分の文化や信仰に沿った墓がないのは深刻な問題で、国に対応を求めたい」

同じ問題は全国のイスラム教徒が抱えている。
きょねんは神奈川県に住むムスリム(イスラム教徒)が、「ムスリムにとって土葬は絶対。火葬は故人の侮辱に当たる。」、「火葬を受け入れることはできない。ムスリムにとって絶対に守られなければならない権利」と訴えた。
海外から来て日本国籍を取得するイスラム教徒や、結婚してイスラム教に改宗する日本人もいて国内のムスリム人口は増えているから、これは日本にいる外国人ではなくて日本人の問題でもある。

ただネットを見る限り、一般人の反応はかなり厳しい。

・戒律を変えればいいだけだろ
宗教とか人間が勝手に作ったもんだぞ
・甘やかすな
・祖国に送って埋めてもらえよ
・他人の家に上がり込んで、あれこれ要求するな
・地域住民の理解なくして、それは出来ないんだよ

これはまだ穏やかなほうで、実際にはここにはとても書けないようなヒドイことばが飛び交っている。

これは結局は、周辺住民の理解と共感を得るしかない。
国が墓地の確保に積極的に動き出したところで、市民の反対を無視することはできないし、どこかで同意を取り付けないと前に進まない。

例外的に、日本では仏教とイスラム教が「コラボ」することもある。
墓地建設に仏教僧が協力して住民を説得して理解を得たり、土葬への不安をなくすためにイスラム教徒用の墓地の周りを壁で囲って埋葬地を作ったケースもある。
こうした取り組みを知って、この墓地を訪れて住職に話を聞く人もいるという。
でもこれは本当にレア、善意に頼るのはやっぱり限界がある。

日本人には死をケガレとする見方があるから、土葬に対する抵抗も大きいのだろう。

奈良時代になると、仏教の影響から火葬墓が増えるが、庶民は絵巻物などの記述から、河原や道端に遺棄されたと見られる。
古代から中世にかけては、穢れの思想が強く、貴人の墓地管理も疎かであった。

日本の埋葬の歴史 

 

日本に住む外国人のなかにはゴミ拾いのボランティア活動や、母国の料理を作ってふるまう交流活動をして周辺の日本人との交流を図る人もいる。

 

 

「火葬は故人の侮辱に当たる」、「ムスリムにとって絶対に守られなければならない権利」というのは分かるとして、そういうイスラム教の教義の説明のほかに、住民の共感を得るような活動も必要だ。
合法的に進めればそれでいいというワケじゃない。
この「土葬できない問題」の詳細は分からないけど各報道を見る限り、イスラム教団体は自分たちの思いや願いを強調する一方で、周辺住民の心をつかむ活動をしている様子がない。
*もちろんボクが知らないだけで、実際にはゴミ拾いなどを定期的にしているかもしれない。

急がば回れ。
そうした地味な交流活動をスキップして国に何とかしてもらおうとすると、かえって日本人の反発をよんで、結果的には墓地建設をよりむずかしくさせるとしか思えない。
「絶対に守られなければならない権利」と主張するだけではダメで、反対意見に耳を傾けてその声を小さくする努力はやっぱり必要だ。

 

 

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6 件のコメント

  • > まず、いまの日本で土葬は禁止されているわけではなく、亡くなった人を埋めることは合法だから、イスラム> 教徒が土葬を求めることは「郷に入っては郷に従え」の原則にしたがっている。

    どうしてそのようなデタラメな主張をするのですか? しかも、まるで「NHKがそのように報道した」かのように見える。やり方が卑怯だなぁ。ハッキリ言ってデマ情報拡散のレベルですよ。
    まあ、ブログ主さんの気持ちは理解できますが、私個人の考えでは、許しがたいですね。

    <間違いその1>
    まず、いまの日本では、原則として行政は土葬よりも火葬を「強く」奨励しています。土葬が法的に禁止されている地域「も」多いです。以下、Wikipedia「火葬」より:
    > 墓埋法では土葬など、火葬以外の方法を禁じてはいないが、環境衛生面から行政は火葬を奨励している。特に東京都(島嶼部以外では八王子市、町田市、国立市など10市2町1村を除く)や大阪府などでは、条例で土葬を禁止している。
    なお、自治体の「条例」は「法律」の一種ですからね。そこを間違えないように。

    <間違いその2>
    「合法だから、『郷に入っては郷に従え』の原則にしたがっている」という説明がウソです。ここで言う「郷に従え」の「郷」は、法律ではなく、地域の慣習や伝統を指しているからです。
    ブログ主さんの主張に沿った言い方であれば、「法治国家では法に従え」とでも言わないと。

    今回のこのブログ記事を読んで、ますます、イスラム教徒およびカソリック教徒の主張する「土葬」には、反対する気持ちが強くなりました。
    住んでいる地域の伝統的な考え方が気に入らないなら出ていきなさい。ここは我々の国だ。
    これは、イスラム教徒が頑なにイスラム教にこだわるのと同じで、日本人は「日本教」にこだわるのです。宗教っていうのは「経典宗教」であるかどうかは問題じゃない。

  • 移民の最大の問題は彼らが生活様式まで持ち込んでその国の様式に従う、、馴染もうとしない事。それこそ古代から。
    日本も土葬だったのが火葬になったのはきちんとしら理由がある。それを理解せずに宗教上の戒律で拘るのなら土葬の可能な国へ行ってもらうしかない。戒律という割にはアルコール摂取しているムスリムなんて結構いるけど。

  • 内容を確認しましたが、特に間違いはありませんでした。
    まず土葬は合法でそれ自体は問題ありません。だから国も陳情を受け付けました。
    「郷」の解釈は人それぞれですが、ここでは個人の主観を抜きにして法律に絞りました。
    日本の憲法の範囲内のことなら、『郷に入っては郷に従え』の原則に当てはまります。
    個人的な思いは人によっていろいろあると思います。

  • 東南アジアにもイスラム教徒の方がたくさんいるので、土葬できる公営墓地は実現してほしいです。
    廃村など人里離れた場所なら反発が少ないかもしれない?

    死体というなら野生動物の死体は土に還るわけで自然なことだと思います。人間の死体なので嫌な印象を受けるのかもしれませんね。
    イスラム教やキリスト教の国で問題があったなら火葬になってるはずで、現代も土葬が続いてるということは大きな問題は無いのでしょう。

  • 法的な問題はクリアされていると思います。
    あとは周辺住民から理解を得られるかでしょうね。
    時間はかかると思います。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。