日本人よ、これが奴隷制度だ。アメリカの黒人女性から聞いた話

 

このまえの6月19日はといえば、”最古のおにぎり”が発見されたということで、日本では「おにぎりの日」というほのぼのした日になっている。が一方、アメリカでは奴隷解放の記念日という、意義深くて重い日だ。

南北戦争中の1862年、リンカーン大統領によって奴隷解放宣言が出され、この戦争の目的は奴隷制の完全廃止であることが明確になった。
でも言っただけじゃ終わらない。
宣言が出さたあとも各地に奴隷制度が残っていて、その最後の州だった南部テキサス州で奴隷が自由になったのが1865年6月19日だった。
それにちなんでアメリカではこの日を「ジューンティーンス」と呼び、奴隷解放を記念する日となっている。

人種差別の解消を目的に、このたび約40年ぶりにアメリカの新しい国の祝日がうまれた。
しかしこれは終わりではなくて、むしろ始まりのようだ。

NHKニュース(2021年6月18日)

署名に先立ってバイデン大統領は「黒人奴隷の解放によって平等の実現に向けた取り組みが終わったわけではなく始まっただけだ。われわれはまだそこにたどりついていない」と述べ、根強く残る差別の解消に取り組むことが必要だと強調しました。

米 奴隷解放を記念する6月19日 新たな国の祝日に

 

アメリカでは2020年に、黒人男性が白人の警察官にひざで首を圧迫され死亡する事件が発生し、それをきっかけに人種差別への全国的な抗議活動(ブラック・ライヴズ・マター)が起きた。
これが今回の法律成立の背景にあるはず。

ちなみに前回、新しい祝日が定められたのは1983年で、このときも人種差別とたたかったキング牧師を記念して彼の誕生日が祝日となった。
その40年ほどあとにBLM運動が起きたのだから、かつての奴隷制度と密接なつながりのある人種差別の根絶はアメリカ社会の永遠の課題だろう。

アメリカの奴隷制度についてくわしいことをここをクリック。

黒人を働くように説得しようとすることは「豚に真珠を投げること」に似ている。奴隷は働くように仕向けなければならないし、その義務を果たさなかったらそのために罰を受けることを常に理解させて置くべきである。

アメリカ合衆国の奴隷制度の歴史

 

数年前、日本で英語を教えていたアメリカの黒人女性と話をしていたとき、彼女が「日本語の数の数え方が複雑すぎる!」と文句を言いやがる。

人間を一人、二人と数えることは分かるし、鳥の一羽、一匹も理解できる。
けれど、犬や猫が一匹、二匹で、牛や豚を一頭、二頭と数えるのはWHY?
日本語で動物で、「匹」と「頭」を使い分ける基準は一体なに?

そんな質問をする彼女には、大ざっぱにみて人間より小さい動物は「匹」で、大きい動物は「頭」と数えると答えておいた。
もちろんこれには例外もあって、警察犬のように人の役に立つ生き物は小さくても「頭」と数える。

すると彼女、「頭」ということばが引っかかって、「アメリカでも豚や牛などの家畜はヘッド(head)と数える。日本語でも『頭』を使うのね」と言う。
だから例えば20頭の牛なら、英語だと「twenty  head of cattle」になる。
それについては「なるほど」としか思わなかったんだが、次のこんなことばを聞いて絶句。

「むかしアメリカで奴隷制度があったとき、白人は黒人奴隷もheadと数えていたの。彼らにとって奴隷は人間ではなくて家畜と同じだったから」

奴隷は「人のことばを理解するやや知能の高い家畜」とみられていたから、奴隷オーナーが彼らを数えるときは「ワン・ヘッド、トゥー・ヘッズ…」と言っていたという。

日本でもヒトが売買の対象にされた時代はあった。
けど、「1頭、2頭」と家畜と同じ数え方はしなかっただろう。
だから大航海時代に、アフリカからアメリカに連れてこられた黒人奴隷はほかの国であった人身売買とは違い、「牛や豚と同じ扱いを受けていた」と彼女が指摘する。
日本の歴史で、そんな意味での奴隷がいたのかは知らない。
戦国時代、ヨーロッパ人が日本人を奴隷にしていたこと知った豊臣秀吉が激怒したことからも、こういう野蛮な制度は、少なくともアメリカと同じ時代の日本にはなかったことがわかる。

奴隷制度のなかった日本、キリスト教徒の野蛮に秀吉が激怒

ちなみに秀吉による「奴隷解放令」はリンカーンの奴隷解放宣言より300年ほど先だった。

 

人権や自由をはく奪された奴隷は家畜と同じ扱いを受けていた、ということは世界史でならった。
でも、こういう「黒人奴隷の数え方」を聞くのは生々しくてなかなか衝撃的。
言われみれば、この時代のオーナーが奴隷を人間としてカウントしていたら、むしろそのほうが不自然だ。

アメリカでは1619年に黒人奴隷の記録があり、それから1865年までこんな扱いが常識的だっただろうから、いまのアメリカ社会の人種差別問題を日本人が正確に理解するのはきっとむずかしい。
バックグラウンドが違い過ぎる。

 

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奴隷が収容されていたセネガルのゴレ島

 

『マンディンゴ』という映画にアメリカであった奴隷オークション(競売)のシーンがある。

その映画の中で、奴隷たちは牛や馬とまったく同様に、歯を調べられ、血統書を付けられ、親子別々に売られてゆく。

「近代世界と奴隷制 (人文書院) 池本 幸三」

 

先ほどのアメリカ人はこうした人の子孫だ。
奴隷だった先祖が解放されて苗字が必要になったとき、その人は苗字の付け方が分からなかったから、かつてのオーナーの苗字を自分のものにしたという。

そんな彼女から教えてもらったサイトを見ると、1800年代のアメリカでは黒人奴隷の扱いはオーナーによって違うものの、でも基本的には「牛(cattle)」と同じような「動産(chattel)」と考えられていたとある。
だからオークションに出されて売買の対象になったし、「適切に飼育する」という概念もあった。

But on plantations that did have slaves many were considered ‘chattel’ slaves. ‘Chattel’ is a word similar to cattle. This means slaves were seen as livestock and treated as such. So of course there were also concepts like chattel auctions and proper chattel breeding.

Flights to Freedom

 

2008年にアメリカ大統領選挙が行われたときのこと。
オバマ氏が黒人として、初の合衆国大統領になったかどうかはまだ知らなかった彼女が、大学から寮へ戻ると入り口で知らない黒人女性が泣いていた。
自分と目が合うと「オバマが勝った!」と言って抱きついてきて、そのまま一緒に泣いたという。
家畜として「ワン・ヘッド、トゥー・ヘッズ」と数えられていた存在から、「プレジデント」になった感激はアメリカで暮らす黒人にしか分からないだろう。

 

 

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アフリカの旅(国)が、こんなにひどいなんて聞いてなかったから。

 

2 件のコメント

  • > 「アメリカでも豚や牛などの家畜はヘッド(head)と数える。日本語でも『頭』を使うのね」と言う。
    だから例えば20頭の牛なら、英語だと「twenty head of cattle」になる。

    「twenty heads」でしょうね。cattle は sheep なんかと同じく集合名詞(常に複数扱い、単数形がない)ですから、例えば a cup of coffee なんかと同様に、数えられる名詞をくっつけて頭数を表現する必要があります。
    欧米語は、概して家畜の表現が面倒ですね。雄・雌で単語が違ったり、去勢の前・後で変わったりとか。
    だけど魚(fish)とか家畜とか、どうして単数形・複数形のある名詞にしないんですかね? 誰がどう見たって、数えられると思うのですが。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。