【ではどうする?】幕末と現代、日本人の「外国人嫌い」

 

幕末の日本にたくさんの外国人がやって来るようになると、それに反発した日本人も山ほどいた。

その時代を生きた福沢諭吉は自著『福翁自伝』にこう書いている。

外国人は穢れた者だ、日本の地には足踏みもさせられぬと云うことが国民全体の気風で、その中に武家は双刀を腰にして気力もあるから、血気の若武者は折々外国人を暗打にしたこともある。

 

1858年に日米修好通商条約を結んで日本が開国したとたん、外国人排斥運動(攘夷)も本格化した。

*1859年のきょう(6月28日)、幕府はロシア・イギリス・フランス・オランダ・アメリカの五か国に、横浜・長崎・箱館での自由貿易を許可する布告を出した。だから6月28日は「貿易記念日」になっている。

1859年には横浜で、武装した日本人に襲われたロシア人が死亡する「ロシア海軍軍人殺害事件」が発生。
これが幕末に起きた最初の外国人殺害事件だ。
翌1860年には2名のオランダ人が横浜の路上で襲われ殺害された。
1862年には薩摩藩の行列に侵入したイギリス人2人が殺されて、2人が負傷する「生麦事件」が起きて後に薩英戦争に発展する。(生麦事件
同じ1862年、長州藩士の高杉晋作、後の井上馨、伊藤博文らが建築中のイギリス公使館を放火した。(英国公使館焼き討ち事件

福沢の言う「外国人嫌いの精神」が遺憾なく発揮されている。
でも、明治になると時代も精神も一変し、欧米諸国をモデルに日本を近代化させた。

 

2021年のいま、日本でこんな外国人襲撃事件なんてあるわきゃない。
でもここ数年、在日外国人が急増したことで「外国人嫌いの精神」や、そこまでいかないとしても外国人への警戒や抵抗感が日本社会で増加しているようだ。

例えば茨城県の保健所が新型コロナの感染予防を呼びかけた“啓発文書”で、外国人が働く農家に対しこう書いて問題になった。

NHKニュース(2021年5月22日)

“外国人と食事しないように”感染予防啓発文書に保健所が記載

「外国人から感染した可能性が疑われる新型コロナウイルス患者が多く発生している」という文はOK、でもこの表現はさすがに行き過ぎ。
抗議を受けた保健所は、外国人を差別する意図はまったくなかったと謝罪して文書を撤回した。

外国人感染者の割合が多いという事実の指摘はいい。
静岡県内では外国人の患者が多く発生していて、それをこう報道することは問題ない。

NHKニュース(6月06日)

6月3日には、1日の感染発表のうち、半数以上が外国人だったこともあり、市は引き続き、大人数で集まることが感染につながることなどを

新型コロナ 38人感染確認 バーベキューでクラスター発生

 

日本人と外国人をまとめて感染者数だけを報道すると、実情が見えなくなって、効果的な対応がとれなくなるからこれは必要。でも、「一緒に食事をしないように」は一線を越えている。

 

さて、これは三重県がHPの「外国人の不法就労・不法滞在の防止について」に載せた画像だ。

 

 

日本国内にいる不法就労・滞在の外国人は見つけて取締るのは当たり前。
だから警察が、「不法滞在や不法就労の疑いのある情報を知ったときには、最寄りの警察署などに情報提供していただきますようご協力をお願いします。」と市民に協力を訴えるのはいい。
こういう不法行為をおこなった外国人が、国外追放になるのも世界的には常識的だ。

でも、上の絵には悪意があり過ぎると批判が寄せられ削除された。

つい最近のニュースで、外国人のウーバーイーツ配達員が路上に立っているだけで、日本人に通報されると嘆いているのを見た。
それに対しては実際のところ、こんなコメントが多い。

「外人が運んできたメシなんかよう食えるな」
「あいつら全員不法滞在だろ。警察はウーバー外国人に職質しろ」

三重県が載せた画像はこういう「外国人嫌い」を助長させてしまう。

だがしかし、そんなコメントをする日本人さんに残念なお知らせがある。

産経新聞の記事(6/25)

とりわけ人口減少が進む地方は、路線バスなど地域の公共交通が苦境に立たされ、住民が「生活の足」を失いかねない状況にあるとされる。

「地域の存続困難に」コロナ禍、人口減に拍車 国土交通白書

 

25日に閣議決定された「令和3年版国土交通白書」の内容は衝撃的だ。
少子高齢化が進んでいる日本では2050年までに、全国の市区町村のうち約3割、558の市町村で人口が半数未満となるとみられる。
コロナ禍に人口減という負のコンボをくらったら、病院・銀行・コンビニなどが減少するか、下手したらなくなって地域生活が成り立たなくなるのは必然。

これにネットの反応は?

・病院の無い街で暮らしたいと思う人なんかいないよな
・こんなことわかってたでしょうに(´・ω・`)
・団塊世代→260万人
団塊Jr世代→210万人
氷河期世代→170万人
ゆとり世代→130万人
令和3年生まれ→76万人
企業でいうと売り上げはピークの3割ぐらいだが 全部門維持しろって感じか
GAFAでも無理だな

少子化対策はすでにやっているし、女性や高齢者にもっともっと働いてもらうことが前提でも、日本の人口減少はどうしようもない。
個人の好き嫌いとは別で、外国人に働いてもらわないと日本人の生活は維持できないのが現状だ。
それでイスラム教についての理解を深めようと記事を書くと、こんなコメントがくるからイヤになる。

「下らない記事。こんな事言ってるが結局のところ言いたい事は非ムスリムに対する脅迫そのもの。
しかも書いてる奴から海外出羽の森みたいな腐った思想が見える。
日本人に対して脅迫するのを楽しんでるクズでしかない。」

これからの日本は日本人だけではやっていけないのに、では、どうするつもりなのか?

 

違法行為をする外国人には、国外追放を含む厳格な対応をするのは当然。
2017年にオランダのルッテ首相が国内に住む外国人に対して「嫌なら出て行け」と主張したように、自由を乱用するような外国人に厳しい態度で臨むことも必要だ。
ルッテ首相の発言は「排外的」というレッテルを張られることはなく、そのき然とした態度は国民から多くの支持を集めて氏は首相に再選した。

外国人との共生①課題は「日本が嫌なら出て行け!」と言える厳しさ。

 

幕末は、「外国人は穢れた者だ、日本の地には足踏みもさせられぬと云うことが国民全体の気風」だったけど、すぐに日本人は外国人に学んで国を発展させた。
いまの日本は外国人労働者が必要なのだから、これはもう、なるべく気持ちよく共存するしかない。
そのためには真面目な外国人とそうではない外国人はしっかり分けて考えて、全体をひとまとめにして「外国人嫌い」を国民全体の気風にしてはいけない。
ボクの回りでも、礼儀正しく優秀な外国人が、風評被害を受けて悩んでいるのをたまに見る。
感情的になってこういう人を”敵”に回しても、日本にデメリットしかない。
外国人の力を活かしたほうが日本はうまくいく。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。