東京五輪でも李舜臣:韓国「問題ない」→IOC「撤去しろ」

 

世界の平和と友好を築くスポーツの祭典がオリンピック。
そんなイベントを開くと、むしろ対立が発生するというのがいまの日本と韓国だ。

東京五輪の開会式まであと1週間ほどとなったいま、韓国側が「反日の英雄」をアピールしたとして日本を騒がせている。
韓国選手団のいる東京の選手村で、16世紀の朝鮮出兵で日本軍を撃破した(と韓国ではいわれる)李舜臣将軍の言葉をもじった「臣にはまだ5000万国民の応援と支持が残っております」と書かれた横断幕をかけた。

この元ネタは「尚有十二舜臣不死(臣にはまだ12隻の船が残っています。私はまだ死んでいません)」と言って日本と戦った李舜臣の言葉。

日本でヒンシュクを買っているこの横断幕に、大韓体育会は「問題なし」の立場だ。
東スポWebの記事(2021/07/16)

「国家の代表選手たちを盛り上げるために、このフレーズを応用した」との意図らしいが、日韓関係がくすぶるなか、反日の象徴を持ち出したことで騒動になった。

韓国選手村“反日横断幕” 発案した大韓体育会は「問題になることではない」

 

FNNプライムオンラインの報道でも、周辺住民の反応はよくない。(2021/07/16)

選手村に韓国チームが“抗日の英雄”思わせる横断幕? 地元の住民は「あんまりやってほしくない」と困惑

 

李舜臣は安重根と同じように日韓で評価の分かれる人物だ。
韓国では日本を撃破して戦いの中で亡くなり、死後、神格化された救国の英雄。究極の、と言っても間違いじゃないレベル。
対して日本では、李舜臣は停戦合意に違反して、後ろから攻撃してきたことから”卑きょう者”のイメージがある。
くわしいことはこの記事を。

【真逆の歴史認識】韓国では英雄、日本では“卑怯者”の李舜臣

オリンピックに参加する目的には、選手がメダルを獲得する、見ている国民に勇気や感動を与えるといったことがあるんだが、韓国では「日本に勝つ」という決定的に大事なものがある。

朝鮮日報の記事からわかるように、あちらでは「五輪=韓日戦」なのだ。(2021/07/15)

東京五輪は「韓日戦」だ 宿命のライバルたちが作るドラマ(1)サッカー 

 

韓国人の日本に対する対抗心はすさまじい。
だから「国家の代表選手たちを盛り上げるため」に、日本に勝ったとされる李舜臣を持ち出すことは韓国の価値観からしたら、これ以上のないほど自然なこと。
でも、そういう歴史観のない人には「反日の象徴」でしかない。
日韓は鏡の国同士で左右反対に映るから、国家の代表選手のやる気アップが「反日」に見えてしまう。
この認識の違いはもう埋められない。

日本のメディアは「五輪本番を前にあえて火種を作る必要はないと思うのだが…」と残念そうに言うものの、韓国側は「問題になることではない」と一蹴。

それどころか問題は日本の“解釈”で、あちらはむしろ”被害者”のように感じているらしい。

朝鮮日報の記事で大韓体育会の関係者がこう語る。(2021/07/17)

この横断幕が政治的に問題化されることは我々も全く望んでおらず、日本がこれを政治的に利用すれるなら、我々にとってもいいことがない

東京五輪:「李舜臣横断幕」騒動…大韓体育会「純粋な応援の意図を歪曲、残念だ」

政治利用しているのは日本で、韓国は困っているというミラクルな展開。

 

「いや、ワシしらんし」と言ってそうな李舜臣

 

スポーツ大会で李舜臣といえば、2013年にソウルで行われたサッカー日韓戦で、韓国のサポーターが「歴史を忘れた民族に未来はない」と記されたドデカイ横断幕と、李舜臣・安重根を描いた垂れ幕を掲げて問題になった。
サッカーの試合で政治的主張をするのは国際サッカー連盟(FIFA)の規定違反。
このときは日本サッカー協会が東アジア連盟に抗議文を出し、菅官房長官や下村文科相も遺憾の意を表明する大騒ぎになった。

すると韓国サッカー協会は「日本側が旭日旗を振って、韓国応援団を刺激したのが発端」として日本のせいにする。
でもよ~く確認すると、すぐに虚偽が判明したというお粗末な展開に終わった。

Jcastニュースの記事(2013年08月01日)

問題となった横断幕は韓国側が先に張り出していた。その上、こうした政治的なアピールは以前からたびたび掲げられていた事実があり、韓国サッカー協会の言い分は、無理筋だ。

「日本が先に旭日旗を…」韓国釈明のウソ 試合開始前から掲示、過去に何度も登場

 

さて選手村の横断幕は結局どうなったか?
「国家の代表選手たちを盛り上げるため」で「問題になることではない」と主張する韓国に対して、国際オリンピック委員会(IOC)はオリンピック憲章に違反にしていると撤去を命じた。
すると韓国側はすぐに応じて一件落着。
でも、日韓の歴史認識や価値観の違いはそのままだから、平和の祭典でまた同じような争いが起こるはず。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

国 「目次」 ①

韓国 「目次」 ②

韓国 「目次」 ③

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ①

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ②

近くて遠い日本と韓国 「目次」 ③

 

9 件のコメント

  • そんなに気に入らないのであれば、ボイコットすればいいのに。

  • 一つ前のブログ記事に対して【秀才かっ】
    今回のブログ記事対して【馬鹿かっ】
    まあ、韓国が先進国になるには、

  • どうせ競技でもロンドンやシドニーどころかソウルでもやった事を繰り返す事でしょ。

  • オリンピックに参加し、政治的な意味を持つスローガンを掲げたことは、韓国選手団の誤った行為でした。
    それについては弁解の余地がありません。しかし,上の文章で一つ正すことがあります。
    李舜臣将軍は、「反日の英雄」ではなく”救国の英雄”でした。
    当時、李舜臣がいなかったら、朝鮮は日本に征服されていたでしょう。
    もちろん、あのPLACARDをかけた選手団は反日のヒーローだと思っていると思いますけどね。

  • >李舜臣将軍は、「反日の英雄」ではなく”救国の英雄”でした。
    当時、李舜臣がいなかったら、朝鮮は日本に征服されていたでしょう。
    なるほど。韓国ではこう考えられているのですね。
    ただ日本では違います。「反日の英雄」は日本メディアが使った表現で、日本ではこういう見方があります。
    日韓は違う国なので見方も違います。
    でも日韓は自由民主主義の国だから、自分と違う価値観を認め合うことが大事です。

  • 私は日本の考えを理解します。
    韓国選手団が”反日”の意味で李舜臣将軍の文章を引用したものと思われますが、これは非常に間違ったものです。韓国人の歴史において、李舜臣将軍は日本に対する敵がい心のアイコンであってはなりません。
    日本ではなくいかなる国であれ、侵略者に対抗して自分を犠牲しながらも祖国を守るという愛国心のアイコンでなければなりません。日本は韓国の敵国ではありません。壬辰倭亂(文禄·慶長の役)はすでに429年前の歴史で、その時、朝鮮を侵略した日本と戦いましたが、今の韓国にとって、日本は友好国です。
    韓国選手団の行動は正しくありませんでした。

  • > 上の文章で一つ正すことがあります。
    > 李舜臣将軍は、「反日の英雄」ではなく”救国の英雄”でした。
    > 当時、李舜臣がいなかったら、朝鮮は日本に征服されていたでしょう。
    > もちろん、あのPLACARDをかけた選手団は反日のヒーローだと思っていると思いますけどね。

    ははははは、言ってるそばから矛盾してる。
    李舜臣は、あなたにとっては「救国の英雄」かもしれないですが、あの選手団を含め、大半の韓国人にとっては「反日の英雄」なのでしょう? それは、ほとんどの日本人にとっても同じことです。
    なぜ、韓国人の中でも少数意見であるあなたの考え方に合せて、記事の文章を正さねばならないのですか?
    あなた自身の考えを述べたいなら、その考えを他人に強制するのではなく、「~と私は考える」という形の主張をまずすべきですね。

  • >今の韓国にとって、日本は友好国です。
    まったくその通りです。
    韓国の歌や食べ物を楽しんでいる日本人は多いですし、韓国でも日本のグルメやアニメを楽しむ人は多いです。
    お互い対等で友好的で、加害者・被害者という設定はありません。この設定を当てはめるとうまくいきません。

  • > 壬辰倭亂(文禄·慶長の役)はすでに429年前の歴史で、その時、朝鮮を侵略した日本と戦いましたが、今の韓国にとって、日本は友好国です。
    429年前の文禄慶長の役(壬辰倭亂)の話をどうしても前提としたいのであれば、その約800年前に、元寇で日本を侵略してきたのはモンゴル・高麗の連合軍であったことをお忘れなく。日本人は決して忘れていないですからね。

    まあ別に、韓国人が友好国となりたくないのであれば、無理にそんな関係を構築する必要もないでしょう。たとえ友好国ではないにしても、別に日本側から攻撃を仕掛けるつもりはありませんが、何でもかんでもこちらの行動を見てケチつけるのをやめていただきたい。
    隣国どうして敵対している地域なんて、世界中にありますよ。別に珍しいことじゃない。

    という認識が、現在の日本では非常に増えていると思います。

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。