【イギリスの複雑】サッカーは別々、五輪では「GB」で参加

 

惜しくも敗れた先日のサッカー女子、日本対イギリス戦を英BBCはこんな見出しで報じた。(2021年7月25日)

【東京五輪】 サッカー女子 イギリスが日本に1-0で勝利

で、この記事の基となった英語の記事がコレ。

Team GB beat Japan to qualify for knockout stages

ここでは「GBが日本に勝利した」とある。
このGBは「ギガバイト」や「じじい・ばばあ」のことではなくて「イギリス」を意味するんだが、なんで五輪イギリス代表は「ジービー」になるのか?

イギリスの正式名称は「United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」(グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国)で、イギリスとはイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの地域ではなく、4つの「国」から構成される1つの国。
海外で外国人と英語で話すなら「U.K(ユーケー)」と言えば通じる。
イギリスは元をたどるとイングランドに由来する完全な日本語だから、知人のイギリス人が日本に来たとき、イギリスと聞いてもそれが何のことかわからなった。
ボクもそんな事情を知らなかったころ、ベトナムで出会ったイギリス人に「イギリス」と言っても「は?何言ってんだコイツ」という顔をされて話が通じなくて困った。

*関係ない話なんだが、日本語を勉強している外国人が「五輪」という言葉を見て、「これって何だろう?」と思って調べたら「Olympic」とわかってビックリしたとSNSでコメントしてた。
その国の人間には当然の言葉でも、外国人からしたら謎ワードというのはよくある。

イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの人たちは独立心にあふれているから、サッカー・ワールドカップではそれぞれ別々に参加している。
でもそれは日本を四分割するようなもの。
この4か国がまとまってW杯に出場したら激しく強くなって、優勝もかなり近づくはずなのに、イングランド出身のイギリス人に聞くと「それは無理」と即否定した。
それぞれ別々に出場したほうが愛国心を刺激されて、応援にも熱が入るから見ていて燃える。それで負けても本望。
そのイギリス人いわく、4か国連合のU.Kが世界チャンピオンになってうれしくないし、きっとみんなシラケる。

 

サッカーだと一つにはなれないけど五輪ならOK。
だから、イギリス選手団は「GB」(Great Britain)の名称で参加している。
でもこれだと北アイルランドをハブっているから、「Team UK」のほうがふさわしいと主張する人もいたけれど、イギリスオリンピック委員会 (BOA)  はその案を却下。

 結局 BOA は愛称を “Team UK” に変更することを拒否したが、これに際して、”Team GB”・”Team UK” のどちらも英国の選手全体を指すには不適切な名称であり

Team GB

 

この理由はハッキリわからないが、イギリスは1896年の第1回アテネオリンピックから「GB」で参加しているからでは?
それにしてもイギリスの呼び方としては、GBもUKも「不適切な名称」というところにこの国の複雑さがよく表れている。

「あいうえお順」で参加国が入場してきた東京五輪の開会式で、イギリスが「い」でもGBの「し」でもなく、英国として「え」で出てきたのもこういう面倒な事情が反映されてのことだろう。
でも、「英国」も厳密には不適切な名称のはず。
同じ君主制の島国でも、愛国心や地域性の在り方が日本とはまったく違う。

 

 

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1 個のコメント

  • > イギリスは元をたどるとイングランドに由来する完全な日本語だから、
    イングランドに由来すると言っても、もちろん間違いじゃないですが。もうちょっと詳しく説明すると、イングリッシュマン→エケリシュ→エゲレス→イギリス という変化でしょうね、おそらくは。(この程度の方が外国人にはよく分かるのでは?)

    Americanも、発音まで考えると、明治時代の「ぁメ・リケン(←最初の「メ」を強く)」という言い方の方が正しい気がしないでもない。

    > イギリス選手団は「GB」(Great Britain)の名称で参加している。
    > でもこれだと北アイルランドをハブっているから、「Team UK」のほうがふさわしいと主張する人もいたけれど、イギリスオリンピック委員会 (BOA) はその案を却下。
    うーん、それもそうなんですけど。
    そもそもBOAって、ブリティッシュ・オリンピック・アソシエィションの略ですよね? これも、北アイルランドは含まない、「グレートブリテン島」に限定される名称では?
    まあ、日本とは違って、19世紀になってようやく現在の英国領域が一つの王国(Kingdom)として統合(United)されたくらいですから、国民感情や地域感情がややこしくなるのも無理ないのでしょう。
    でも下手すると、現在のEU脱退の騒ぎで、また北アイルランドが独立しちゃうかもですね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。