日本政府は海外でピンチの国民を救えるか? とトルコの恩返し 

 

政権が崩壊しタリバンの支配下に置かれたアフガニスタンで、いま現地にいる日本人が大ピンチ。

読売新聞の記事(2021/08/27)

アフガンの邦人退避は中止せず、官房長官「さらに努力を」…バスで空港へ移送検討

現在の法律なら、自衛隊法84条の4「在外邦人等の輸送」で自衛隊機をアフガニスタンに派遣することは可能だ。
もちろんすでに政府はそれをやっている。が、26日には退避対象となる日本人や、日本大使館で働いていたアフガン人などが空港にいなかったから、2機の輸送機は”空”のまま隣国パキスタンの空港へリターン。
両機はいまもそのままウェイティング状態にある。

現行法では自衛隊の活動は空港内に限定されているから、市内から空港までの避難民の救出や警護については何もできない。
それでも何とかして、邦人らをバスで空港へ移送できないか検討しているのがいま。

ただこの大前提は、米軍がカブール空港の安全を確保していることだ。
でも米軍は8月末には撤収すると明言しているから、もしそうなったら、救出作戦は最初から練り直しをしないといけない。
米軍なしでは、日本人を救出することなんて現実的には不可能だろう。
つまり、本当に本当に緊急事態なのだ。

これにネットの反応は?

・先手先手で邦人の安心安全を守るため、今日から検討致します。
・ヨーロッパとかは逃げ出してるのにな
・時間全然ねえええ
テロこええええ
もう祈るしかない
・内閣吹っ飛びそうだなw
・今のところ何しに行ったんだレベル
・この状況でバスで助けに行ったら群衆に止められて酷いことになりそう

 

朝鮮日報の報道を見ると、隣国はすでに全員が入国済みのようだ。(2021/08/27)

アフガン現地職員ら13人が韓国到着 390人全員の入国完了 

アメリカはアメリカで、13人の米軍人が死亡するテロ事件がきのう起きて、国内ではバイデン政権への批判が上がっている。
報道官は「テロリストを見つけ、戦い、殺害するという取り組みに賛同してほしい」と言うぐらいだから余裕なんて1ミリもないし、日本がアメリカにいま以上の何かを期待するのはムリっぽい。
あと3日しかないのに「移送を検討」「さらに努力を」という現状で、日本人救出はうまくいくのか。

 

話はガラリと変わって、日本とトルコの関係について書いていこう。
これを語るには、その原点となった「エルトゥールル号遭難事件」を抜かしてはいけない。

神戸へ向かっていたトルコのエルトゥールル号が1890年9月、和歌山県の沖合で台風にあい、強風と高波のため沈没する。
この事故で乗組員587名が死亡するも、付近の住民による懸命の救助活動によって69人が助け出された。
彼らはこの後、日本海軍の巡洋艦でトルコへ送り届けられる。
また国内では、犠牲者に対する義援金の募集が行われた。

こうした日本人の”仁の心”がトルコの人たちの心を動かして、両国友好の基礎が出来上がったのだった。

このときに新聞を通じて大島村民による救助活動や日本政府の尽力が伝えられ、当時のオスマン帝国の人々は遠い異国である日本と日本人に対し、好印象を抱いたといわれている。

エルトゥールル号遭難事件

遭難するエルトゥールル号を描いた絵画

 

時代は流れて1985年、イラン・イラク戦争のときに超緊急事態が発生する。
イラクがイラン上空を飛ぶ航空機について、48時間後から無差別攻撃を行うと宣言。
これを受けて、世界各国はすぐに救援機を出して自国民を救出した。
でも、そんな当たり前のことができなかったのがわれらが日本。

「安全の保証がされない限り臨時便は出さない」ということで民間機が乗り入れることはできず、当時の法律では自衛隊による救援もできなかった。
国民の命を守るために法があるはずなのに、その逆のバカげた状態が生まれていた。こんな国は世界で日本だけだっただろう。
もう時間がない!
日本の窮状を知ったトルコ大使が、今度は自分たちがエルトゥールル号の恩返しをさせてもらうと、トルコ航空の旅客機をイランに飛ばして日本人を乗せてくれた。

これは串本町のホームページの記述。

トルコから駆けつけた救援機2機により、日本人215名全員がイランを脱出することに成功しました。タイムリミットのわずか1時間前のことでした。

日本とトルコの絆をつないだ物語

こうしてイランにいた日本人全員が無事に帰国することができた。

 

これはこれで美談として語り継いでいくとして、法律のせいで、海外にいる日本人の命を守ることができないというのは本末転倒だ。
この教訓から自衛隊法が整備され、在外邦人の輸送が可能になったのだろうけど、現状をみるとそれだけでは足りなかった。
タリバンやテロ組織がいるカブール市内で、日本人を空港まで丸腰のバスで移動できるのか。
「だれかー!!!!はやくきてくれーっ!!!!」とクリリンみたいに叫んで、外国の軍隊に守ってもらって空港までたどり着くつもりなのか。
(そんな国は日本以外ないだろう)
もう時間はないけど、政府として国民の命だけは責任を持って救ってもらいたい。
そしてその後は法律の欠陥を修正しないと。

 

 

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4 件のコメント

  • この記事で、一つ重要な情報が欠けています。それは、「日本大使館員である日本人は、主に米国の輸送機に乗って、とうの昔に全員が日本へ避難できている」ということです。したがって、いま現地にある自衛隊機は、大使館員以外の日本人、ならびに大使館等日本の組織に従事していたアフガン人スタッフを救出するために(そんなことができるかどうか知りませんが)、出撃しているのだということです。

    > 現行法では自衛隊の活動は空港内に限定されているから、市内から空港までの避難民の救出や警護については何もできない。
    にも関わらず、このような法整備の状況ですからね。周囲をタリバン勢力や更に過激なISに囲まれているのに、自衛隊(軍事力)の助けがなくて、どうやって空港へたどり着けと言うのでしょうかね? 馬鹿ですか?
    大使館員が先に避難してしまっているのに、軍隊が空港の外では活動できないとしたら、これはもうどうしようもない。

    > もう時間はないけど、政府として国民の命だけは責任を持って救ってもらいたい。
    > そしてその後は法律の欠陥を修正しないと。
    政府の考える「国民」とは、大使館員である日本人だけなんでしょうね。
    法律の欠陥なんて、もう何年も前から分かっているのに今頃ですか? このような状況に陥ったのは、どの政党の、どの政治勢力の、どんな政治家の責任なんですかね?

    国民の命を守ってくれない、そのための活動を邪魔する、そんな政党はとても支持できません。

  • 残念ながら、自衛隊機によるアフガンからの撤退作戦は、27日をもって終了するようですね。ISの自爆テロに対して、よほど危機感を抱いたのでしょう。
    でもこんなことで、いざというとき大丈夫なのかなぁ・・・。

  • 自衛隊法84条の3(在外邦人等保護措置)
    治安が維持されていない状況での邦人救出、措置の実施には
    1現地当局が治安が維持し、戦闘行為が生じないこと
    2領域国の同意があること
    3現地当局との連携が見込まれること

    日本としてはタリバン政権を認められないので領域国の同意は難しく、その流れで現地当局との連携もほぼ不可能な上に大使館員は真っ先に逃亡。

    ネックになっているのはこの辺りでは。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。