きょう8月31日は、
マレーシアの独立記念日(1957年にイギリスから)
トリニダード・トバゴの独立記念日(1962年にイギリスから)
キルギスの独立記念日(1991年にソビエト連邦から)
と3か国の誕生日なわけなんだが、独立したことのない日本にそんな記念日なんてあるわけない。
でもその代わり(になるか?)、8月31日は「野菜の日」だ。
なので今回はあの夏野菜について書いていこう。
きゅうりを漢字で書くと「胡瓜」。
胡椒(こしょう)や胡麻(ごま)など、シルクロードを通って西方から中国に伝わった物には「胡」という文字が付けられたのだ。
くわしいことはこの記事を。
胡瓜(きゅうり)は約2000年前、漢の時代に張賽(ちょうけん)が西域のペルシャから種を持ち帰ったのが中国での始まりで、日本には遣唐使が伝えたといわれる。
水戸黄門で知られる徳川光圀が「毒多くして能無し。植えるべからず。食べるべからず」
貝原益軒が「これ瓜類の下品なり。味良からず、かつ小毒あり」
と「能無し」「下品」と書いているように、この野菜は江戸時代にはあまり人気のある野菜ではなかった。
しかしきゅうりには、他の野菜では代えられないような重要な役割をまかされていた。
毎年7月の終わりごろになると、病気にならず、健康・安全に夏を乗り切るために日本の各地で「きゅうり封じ」の行事が行われる。
暑さで体調を崩しやすい夏の無病息災を願うこの行事は、「きゅうり加持(かじ)」とか「きゅうり加持祈祷会」といった呼び方がある。
ちなみにこの場合の”息”とは呼吸ではなくて、「やめる、防ぐ」といった意味。
病気は体にウイルスが侵入することでおこる、という常識は科学の発達した現代のもので、平安時代の日本人がウイルスなんてものを知るわけもなく、当時は、目に見えない鬼・悪鬼・邪鬼などの人外の存在、つまり「物の怪」が病の原因と考えた。
となると、その対応策が生まれるのは必然。
当時の人びとは、理解しがたい病気や災難を「物の怪」にとりつかれると考え、一種の強い怪異感で受けとめていた。そこでこの怪異感からの解放を加持祈祷に求めたわけである。その要請に応じたのが密教である。
「日本人とは何か。(上巻) 山本 七平」
密教の力で病魔である「物の怪」をやっつけて、無病息災を願うというのもひとつのやり方だ。
ほかに日本人がよくしていたのが加持祈祷で、「きゅうり封じ」もそのひとつ。
一説には空海が中国でこの秘法を知り、日本へ紹介したことから始まったというけれど、これは後付けだろう。
この方法は地域やお寺によって違う。
その一例としてここでは、京都の伝統行事としての「きゅうり封じ」のやり方を紹介しよう。
まず、自分の名前や病名を書いたきゅうりをお寺で祈祷してもらう。
そしてそれを持ち帰ったあと、自分の身体の悪い部分をきゅうりに当てそれを土に埋める。
これでおしまい。
要するに、自分の病魔をきゅうりに移して封じ込めればOKだ。
病魔を移したきゅうりを川に流すというやり方もあるし、これは結局気持ちの問題だから、「怪異から解放された感」を味わえたらそれでよし。
科学的な知識がなかったころ、日本人が頼りにしていのたは神さま仏さま。
昔はこういう発想で無病息災を願っていて、いまではユニークな伝統行事になっている。
きゅうり封じを英語で言うと「Cucumber blessing」になる
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