米国人に聞く「アメリカに原爆ドームのような場所はある?」

 

毎年8月6日と9日は、日本国民が頭を下げて黙とうをおこなう日。
それでもう一方の当事者であるアメリカ人と原爆投下について話をしていたとき、あちらにも原爆ドームのような場所があるか聞いてみた。
ちょっと考えてから彼は、人種や宗教を超えて全国民が祈りをささげる場所だったら「グラウンド・ゼロ」だろうねと言う。
そうか。そこがあったか。

 

画像:UpstateNYer

 

2001年9月11日、テロリストにハイジャックされた旅客機がニューヨークの世界貿易センタービルに突っ込む「アメリカ同時多発テロ事件」が発生し、24人の日本人をを含む約3000人が犠牲となった。
それから昨日でちょうど20年になる。

NHKニュース(2021年9月11日)

アメリカ同時多発テロ事件から20年 各地で追悼式典

各地で行われた犠牲者を悼(いた)む式典のなかで、バイデン大統領が足を運んだのはニューヨークの世界貿易センタービルの跡地、いわゆる「グランドゼロ」だ。
*ground zeroは爆心地の意味。

広島・長崎への原爆投下が日本史における最大級の悲劇なら、アメリカにとってのそれは、本土を直接攻撃され多くの人が殺害された9・11テロになる。
世界中の人種や宗教の人がいるアメリカは、多種多様な価値観や考え方があってなかなかまとまれない。
7月4日の独立記念日でも、「奴隷としてアフリカから連れて来られた、わたしのような黒人にその日は関係ない」と言う人もいるし、いろんな時代・いろんな場所から来た移民の国アメリカでは国民の歴史的な共通点が少ない。

20年前にニューヨークにいて、あのテロを身近に感じたアメリカ人が「原爆ドーム」と聞いて、世界貿易センタービルの跡地で、あの悲劇を象徴する「グランドゼロ」を思い浮かべるのは自然な発想だ。

実際、この呼び方は原爆ドームに由来するのだから。

倒壊した跡地(英語版)が、広島の原爆爆心地(原爆ドーム、正確には原爆ドーム近隣の島病院付近)を連想させるとして、WTCの跡地を「グラウンド・ゼロ」とアメリカのマスコミで呼ばれ、これが定着した。

アメリカ同時多発テロ事件

グラウンド・ゼロ
画像:Ryssby

 

全国民が犠牲者に哀悼の意をささげて、「こんな悲劇は二度と繰り返さない」と誓う場所。
そんな意味では原爆ドームとグランドゼロは同じ。
でも先ほどのアメリカ人の話ではそのあとの発想や行動が日米ではまったく違って、9・11テロのあと全米世論が沸騰して軍に志願する国民が激増、そしてそのままの熱でイラクやアフガニスタンでの「テロとの戦い」に突入した。

毎年その日になれば、決意を新たにする。
そうしていればテロが自然になくなるワケはなく、その原因となる人間を攻撃して排除、ハッキリ言えば殺害する必要がある。
それが国際常識としても、アメリカの戦争は果たしてどこまで必要で正しいものだったのか?

上のNHKニュースによるとテロにより死亡した人は、

2009年までの10年間で7万1862人
2010年から2019年までの10年間で18万2060人

と「テロを終わらせる戦い」を進めると、テロの犠牲者が増えていったという皮肉な現実がある。
9・11テロの首謀者であるビンラディンを殺害し「テロとの戦い」に勝利したとして、アフガンから軍を撤退させたバイデン大統領は、テロから20年という節目の年に「結束こそ私たちの最大の強みだ」と訴えた。が国民の反応は冷ややかだ。

これからも9月11日になると、米大統領や国民はグランドゼロで祈りをささげるのだろうけど、その後の戦争で出した犠牲者を思うと心中複雑なのでは。
このへんは日本人にとっての原爆ドームとは違う。

 

おまけ

あるアメリカ人がきのうこんなメッセージを投稿していた。

「Never forget, the 9/11 that we caused.
Everyone remembers 2001, so I don’t need to remind you of that one.」

決して忘れてはいけない、9.11テロは我われが引き起こしたものだ。

アメリカが中東諸国を圧迫したことで、あのテロを引き起こしたという。
これは例外的だろうけど、こんな見方をするアメリカ人もいる。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。