【日本人の名字】その歴史と、いろんな外国人のサマザマな印象

 

このまえ9月19日は、日本人の名前にとって革命的変化があった日だから「苗字の日」って記念日になっている。

*「苗字」と「名字」の違いについて。
もともとは「名字」だったのが江戸時代のころから「苗字」と書くようになって、戦後になると、当用漢字で「苗」の読みに「ミョウ」が加えられなかったから「名字」と書くことが一般になったという。
つーことでこの記事では江戸・明治時代のものは「苗字」、現代は「名字」と表記することにした!

江戸時代には苗字は武士の特権とされ、庶民にはなかったか、あっても苗字を名乗ることはなかった。
でも欧米社会をモデルとする明治時代になると、江戸時代の風習や価値観がリセットされて、国民の誰もが苗字を持っていいこととなる。
それで1870年の9月19日、日本政府から平民苗字許可令がでた。

だがしかし、「苗字を名乗ると新しく税金をとられるのでは?」なんて政府を信用しない国民はたくさんいて、政府が思っていたより苗字は社会に浸透しない。
それでついに1875年2月13日に「平民苗字必称義務令」を出して、国民に苗字を持たせて公の場で使うことを義務付けた。
それで2月13日は「苗字制定記念日」(名字の日)となっている。

 

こんなことがあって、いまではすべての日本国民が名字を持ちフツーに名乗っている。
さて、日本人の名字を見て外国人はどう思うのか?

知人のイギリス人が中学校で英語を教えることになって、「はいこれ」と日本人の先生から渡された学級名簿を見て、思わず「えっ?」とビックリしたという。
それは、生徒の名前がキレイにそろっていたから。
そのとき初めて日本人の名字は漢字二文字がほとんどで、たまに一字姓や三字姓があるという話を聞く。
慣れれば何ともないことだけど、名簿に二文字の名字がズラリと並んでいるのは印象的だったらしい。
でもそれに違和感をおぼえる外国人は、このイギリス人だけではないようだ。

 

日本・中国・韓国・ベトナムは地理的には「東アジア」、中国文化を共有しているという点では「漢字文化圏」ということができる。

中国でうまれた漢字はいい感じに周辺国へ広がっていき、古代の日本・朝鮮半島・ベトナムは漢字を採用してこれで政治文書を作成したり、漢詩などを楽しんでいた。
むかしは日中韓越の人たちは漢字を使って筆談することで、けっこう自由にコミュニケーションをとることができたのだ。
もうそんな日は二度と来ないだろうけど。

人名について東アジアをみると、日本とそれ以外で分けることができる。
中国・韓国・ベトナムでは漢字一文字の名字が主流である一方、日本では鈴木や伊藤など漢字二文字がほとんど。

なんで日本人は名前に関しては中国文化を継承しないのか?
そう疑問に思う中国人は多いようで、中国メディア「今日頭条」に「どうして韓国やベトナムは中国の姓氏文化を継承しているのに、日本は中国式の姓を名乗らないのか」という(やや上から目線の)記事があった。

サーチナの記事(2016-09-21)

どうして韓国やベトナムは中国式の名字なのに、日本だけは日本式の名字なの?

中国人目線によると、朝鮮とベトナムは長く中国の属国あるいは支配地だったため、いまでも中国文化の影響を受けた名字が多い。
韓国では孔・閔・印・左・朱・明・杜・徐・孫・崔など中国から伝わったか、中国皇帝から下賜された(与えられた)姓があり、ベトナムの阮、陳、李、黄、武、鄭、呉、杜といった姓は中国由来という。

でも日本は事情が大きく違っていて、漢字二文字姓が一般的で「中国とは何の関係もない」と今日頭条の記事にある。
東アジアのなかで日本が独特な理由を記事はこう説明する。

一般市民が姓を名乗ることを許されたのは明治維新後であり、その際に地理や方位、動物などさまざまな材料から思い思いの名字が泉の如く湧きだしたと説明した。

 

1870年9月19日に明治政府から平民苗字許可令がでてから、庶民が思い思いの苗字をつくって名乗った結果、世界的に見てもかなり多い10万ほどの名字がうまれたという。
でもこれでは中国式の漢字一文字ではなくて、二文字になっている理由がわからないゾ。

 

韓国やベトナムと同じように、古代の日本は超大国・中国の影響を強く受けた。
でも、韓越が中国式の一字姓を採用したのと違って、日本はそれを受け入れなかった。

実際に、朝鮮半島で姓が生まれたのは、統一新羅時代になったからである。統一新羅の王族、貴族が中国・唐の文化を取り入れるなかで、中国式に姓をもつようになっていったのだ

「人名の世界地図 (文春新書)」

 

どうして韓国やベトナムは中国式の名字なのに、日本だけは日本式なのか?
それは古代の日本人が中国式を採用したなかったから。
漢字二文字にした理由はハッキリとは分からないけど、良い漢字二文字で地名を付けた奈良時代の「好字二字令」の影響だと思う。
くわしいことはこの記事を。

【日本・中国・韓国】東アジアに漢字二文字の地名が多い理由

 

まえに台湾人と話をしていたとき、「山田」や「川島」といった自然に関する名称のある名字を見ると「田舎者っぽい」という印象を受け、「伊集院」や「西園寺」といった名字だと上流階級っぽいと感じると話していた。
このへんの漢字感覚はさすが台湾人で、欧米人にはない。
漢字文化圏以外の外国人なら、キレイにそろった名簿を見て「ワオ!」と言うか、「見分けがつかない…」と思うぐらいだろう。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。