「おまわりさん」の由来:京都の新選組と江戸の新潮組

 

日本に比べるとインドやアメリカで警察官はあんまり信用されてなく、「おまわりさん」みたいなフレンドリーな呼び方はない。
一般国民と警察には距離があって、親近感を感じることはないらしい。
ということを昨日書いたのだ。

【日本の警察官】インド人とアメリカ人が話す母国との違い

それはイギリスも同じで、「the pigs(ブタ)」とか「the filth」なんてヒドイ呼び方もある。
「the filth」はゴミ、汚物、道徳的な腐敗や堕落、悪党の意味で、警察官を軽蔑してこう言うことがある。

「Police」という英語は「公共の秩序、行政、政府」を意味するフランス語の「police」が由来だ。
くわしいことは Police を確認されたし。

世界各国で警察にはいろんな呼び方がある。
でも、日本の「おまわりさん」に相当する言葉は聞いたことがない。
泣いてばかりの小猫に困ってしまって、ワンワンワンと泣き出す「犬のおまわりさん」は日本で超有名。
こういうカワイイ場合は「デカ」や「サツ」ではなくて、「おまわりさん」がいちばんイメージに合う。
でもこの言葉の由来は幕末にあって、わりと血なまぐさい。

 

 

京都で反・徳川の立場で尊王攘夷を唱える武士、いわゆる尊王志士が京都で暴れ回って治安が乱れた。
それを憂慮した幕府は清河八郎の案を採用し、尊王志士を取り締まる浪士集団を江戸で組織した。

*志士とは『論語』にある「志士仁人(ししじんじん)」を語源にし、世のため人のために、自分の命をかけても正しいと信じたことを貫くような人間を意味する。

将軍・徳川家茂(いえもち)を警護しながらこの浪士組も京都へ向かい、到着後は壬生(みぶ)に拠点をかまえた。
でもここで清河八郎が、「これから自分は尊王攘夷のために活動する。みなで江戸に戻ろう」と言い出す。
それに賛同しなかった芹沢鴨・近藤勇・土方歳三らは京都に残ることを決め、「新選組」を結成した。そのあとの彼らの活躍は『銀魂』を見ればわかる。

歴史作家の司馬遼太郎が『竜馬がゆく』の中で、「幕末の史劇は、清河八郎が幕をあけ、坂本竜馬が閉じた」と 書いたように、清河八郎はとんでもない策士でありアジテーターだった。

 

一方、江戸に戻った清河八郎が暗殺された後、残った浪士で「新徴組」を組織した。
京都の治安を守っていたのが新選組、江戸の治安維持活動をしていたのが新徴組で役割はどちらも「Police」になる。
ちなみに沖田総司は京都に残って新選組の幹部、江戸に戻った義兄の沖田 林太郎(おきた りんたろう)は新徴組の幹部となった。

新選組に匹敵したかはワカランけど、新徴組のメンバーも猛者(もさ)ばかり。
さらに幕府は彼らに、見つけた犯罪者が抵抗したら、その場で斬り捨ててもいいという許可を与えていたという。
そんな新徴組が五十人二組で昼も夜も毎日、巡回を始めると江戸の治安はみるみる回復していった。
そして江戸の庶民からは、「酒井なければお江戸はたたぬ、おまわりさんには泣く子も黙る」と言われるようになる。
*新徴組は庄内藩酒井家の指揮下にあった。

これが現在の「おまわりさん」につながったという。

おまわりさんとは、古来からある市中巡回の官職である御見廻り(おみまわり)から由来する愛称であるが、この呼称は明治になって近代警察の巡査に受け継がれ現代の警察官にも続いている。

新徴組

 

夕刊フジのコラムでも「おまわりさん」の語源を新徴組に求めている。(2021.6.1)

そんな街を見回る彼らを、江戸の庶民は親しみを込めて「御回りさん」と呼んだ。実は、これが、警察官を「お巡(まわ)りさん」と呼ぶ語源になったのだという。

【編集局から】江戸の治安を守った「お巡りさん」の語源 東京・大手町に残る歴史

ちなみに、このあと始まった戊辰戦争で新徴組は庄内藩について負け組となった。

 

新徴組が街を歩けば江戸の治安は良くなり、彼らなしでは江戸は成立しない(お江戸はたたぬ)と言われ、庶民は敬意や親しみを込めて「おまわりさん」と呼んでいたのだろう。
このニュアンスは現代の日本語にも残っている。
ただ「泣く子も黙る」でかなりの数の浪士を斬ったはずで、「犬のおまわりさん」とはまったく違う。
「the pigs」とか「the filth」なんて言葉はやっぱり日本の警察官にはふさわしくない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。