インターネットをする人にとって大切なこと。
それはリテラシーの能力でしょ。
まずは辞書で意味を確認しよう。
リテラシー(literacy)
1 読み書き能力。また、与えられた材料から必要な情報を引き出し、活用する能力。応用力。
2 コンピューターについての知識および利用能力。→コンピューターリテラシー
3 情報機器を利用して、膨大な情報の中から必要な情報を抜き出し、活用する能力。→情報リテラシーデジタル大辞泉の解説
ネットには、いろいろな情報がある。
そのなかから、自分に必要な情報を選ぶ力やウソを見抜いて正しい情報をえることは本当に大事。
2016年12月26日の毎日新聞の社説では、そんなリテラシー能力の重要性を伝えていた。
ネットには、参加者全員が情報を共有し、見知らぬ者同士を結びつける力がある。一方で情報は玉石混交だ。広く情報を扱うネットメディア全体の自覚を求めるとともに、利用する側が情報の質を見極められる教育を進めなければならない。
「まとめサイト ビジネスといえるのか」
「利用する側が情報の質を見極められる教育」というのは、そのままリテラシー教育のこと。
ネットを使う側が正しい情報を見極めるということは確かに大事。
今回はそのために、今回は「比較のトリック(操作)」ということについて書いていきたいと思う。
その例として、前回まで書いてきたTOEFLの結果と最近ネットで大炎上した池上彰さんの番組を取り上げていきます。
日本人がどれだけ英語ができないのか?
それを示すために、TOEFLの結果が使われることがある。
これは今でもある英語サイトの文章。
ところが、英語能力判定テストTOEFL(iBT)では、アジア36か国中34位という何ともお粗末な結果だったとの事でした。
日本人が英語が苦手な理由に迫る!
「日本はアジアの国中でも、最下位に近い」と日本人の英語力のなさを強調する文を見たことがあると思う。
でも、前回書いたようにこれは間違い。
「TOEFLで、その国の英語力を知ることはできない」ということは、ずい分昔から言われていた。
下の文は、2005年ごろに書かれた文章だけど、このなかでも「TOEFLの国別のランクで、日本人の英語力をはかるのはアヤシイですよ」ということが書いてある。
日本人の英語力の判定基準として、よくTOEFLのスコアが用いられますが、果たして日本人の英語力の指標として、TOEFLのスコアはどれだけの妥当性をもっているのでしょうか。
(中略)
TOEFLの成績順位を問題にするとき、しばしば欠落しているのが国別の受験者数の片寄りです。ほかの国々の受験者に比べて、日本人の数が文字通り桁違いに多いのです。
前述のデータによれば、日本人の受験者数は144,572人でダントツ1位です(ちなみに、上位10か国中9カ国がアジアの国々で占められています)。それに対して、アジア25か国中、平均スコアで日本より上位に位置する国々の半分近くは、受験者数が非常に少ないのです。
ここに書いてあるように、日本と他の国とでは、受験者の数が全然違う。
当たり前だけど、パキスタンやバングラデシュの母国語の読み書きができない人たちが、アメリカの大学に入学するためにTOEFLという英語の試験を受けるわけがない。
これらの国でTOEFLを受ける人というのは、限られたエリートだけ。
バングラディシュのエリートが通うプライベートスクールでは、英語で授業をしているところも多い。
発展途上国の受験者の多くは、国のエリートで本気でアメリカ留学を考えている人たちだ。
それに対して、日本ではかなり幅広い人がTOEFLを受けている。
しばらく英語から離れていた人が、「腕試し」で受けることもある。
日本では限られたエリートではなくて、ふつうの人たちもたくさん受けている。
ということで、受験者の条件(種類)が大きく違うのだから、TOEFLの結果で日本の英語レベルを知ることはできない。
さらにいえば、バングラディシュやパキスタンはかつてイギリスの植民地でもあった。
この点でも日本とは大きく違う。
だから、TOEFLを主催するところでも、「データを扱うときは注意ください」とわざわざ書いている。
「TOEFLの結果から国別のランキングを作ることは、データの誤った使い方ですよ」
「そんなのは、テストを作成しているETSは認めていませんよ」
こうした注意を与えている。
結局、同じ条件でなかったら比較することはできない。
違う条件なのにそれを隠して比較していたら、それはただのトリックだ。
先ほどの英語サイトを始め、「日本人は英語ができない!なぜなら、TOEFLで日本はアジアで~」と書いてある英会話ブログや英会話教室では、そういうことを知っててわざと書いたとしか考えられない。
読者に正確な情報を伝えるのではなくて、自分たちの金儲けのために読者を誘導するためにこんなことをしているのだろう。
こうしたことを見抜くには、やっぱりネットのリテラシーの力が大事だと思う。
次に紹介するのも、同じようなトリック。
最近の池上彰さんの番組で、違う条件で比較してしまったことから、ネットで「印象操作だ!」と激しいバッシングをうけることになった出来事がある。
このことは下のサイト(秒刊SUNDAY)にわかりやすく書いてあったので、これを紹介させてもらいたい。
池上彰さんの番組のグラフが「印象操作」だとネットでは批判殺到
この中のアメリカのグラフの赤い線は池上さんが言っているとおりで、日本の赤い線は大きく下がっているように見える。
でもこのグラフでは、日本とアメリカの条件(目盛り)が違うというトリックがあった。
そのため、それに気づいた視聴者からメチャクチャにたたかれることになった。
問題となっているグラフは日本の平均所得の推移と、米国の平均所得の推移。一見、米国の赤い色(下位90%)推移のほうはあまり変わっておらず日本はとんでもなく変化しているように見えますが、実はこれ目盛りの値が全く違い、日本のほうは0.8~1.4、対して米国は0.5~3.0と全く異なる。
従ってこれを比べると、日本がものすごい格差が広がっているようにみえるのですが、同じ目盛りの表にしてみると・・・。
ということで、何かを比較しているものがあったら、比べる条件が同じかどうかを確認するようにしましょう。
条件が違っているのに、それを隠したりわかりづらくさせたりして比較することはよくあると思う。
でも、「ネットのリテラシーが大事ですよ~」といっている自分も、間違った情報を信じているかもしれないし、いつか騙されるかわかってものではない。
お互い気を付けましょう。
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