【和食の4つの特徴】日本の寿司がおいしいワケ

 

5年前、日本にはベスト・レストランが世界でもっとも多いことが判明した。

Record Chinaの記事(2016年12月7日)

世界のベストレストラン1000に中華圏から100店、日仏に次ぐ規模―中国メディア

フランスのパリで発表された「世界ベストレストラン・ランキング1000」で中国が3位(100店)、フランス(113店)が2位、そして116店のベスト・レストランのある日本が世界ナンバーワンになった。

そしてきょう11月1日は「すしの日」だ。
なんで秋のお寿司はオイシイのか?
それはまず新米が出回るのがこの時期だし、寿司ネタになる海や山の幸がおいしい季節でもあることから、全国すし商環境衛生同業組合連合会がこの日を寿司デーに定めたという。

これと同じ理由で10月30日は「卵かけご飯の日」になっている、ということはこのまえ書きました。

日本独自の食文化「卵かけご飯」:外国人の反応・その歴史

 

上の116店の中にも、きっと何軒か寿司店があるはずだ。
現在の日本の寿司とは見た目も作り方もまったく違うけど、その「起源」は東南アジアにあると唱える人もいる。
東南アジアで高地に住んでいる人が入手のむずかしい魚を、長期保存する手段として発達したものが日本のスシにつながったという。
くわしいことはここを見てくれ。

寿司につながった魚介類の保存方法 

 

 

ベスト・レストランの数が世界最高だったことからも分かるように、日本は世界に冠たるグルメ大国だ。
その3年前、2013年には「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産の登録された。
それが認定されたときに農林水産省が公開した「和食」紹介リーフレット」と見ると、和食とはどんな食べ物なのか、改めて確認することができる。
ここで挙げられている和食の四つの特徴は、寿司に当てはまるものも多いと思う。

1、多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重

南北に長い日本の国土は豊かな自然に恵まれているから、それぞれの地域に根差した多様な食材がある。

2、健康的な食生活を支える栄養バランス

「一汁三菜」をベースとする日本食の食事スタイルは理想的な栄養バランスと言われていて、また、「うま味」を使うことで動物性油の使用を少なくすることができる。
これが日本人の長寿や肥満防止に役立っている。

3,自然の美しさや季節の移ろいの表現

その時々の季節の花や葉などで料理を飾りつけたり、季節に合った器を利用するなど、食事に自然の美しさや四季の移ろいを表現することも和食の大きな特徴だ。

4、正月などの年中行事との密接な関わり

日本の食文化はさまざまな年中行事と関わって発達した。

 

この中で寿司について言えば、最も重要なポイントは「多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重」だろう。
アニメ『美味しんぼ』に出てくる海原雄山のモデルとなった人物で、日本を代表する食の巨匠・北大路 魯山人は著書『握り寿司の名人』でこういう。

いったい寿司のウマイマズイはなんとしても魚介原料の問題で、第一に素晴らしいまぐろが加わらなければ寿司を構成しない。(中略)とにかくまず材料がよくなくては上等寿司には仕上がらない。海苔もよくなければいけない のは勿論である。

北大路 魯山人(明治16年 – 昭和34年)

 

日本の自然が育てた素材の味を、人が最大限に引き出すことで最高においしい寿司を作ることができる。
外から味を加えるのではなく、寿司職人は魚介類が本来持っている味を活かすという考え方は日本人なら誰でも納得できるだろう。

2021年に「日本で寿司がウマイのはどこか?」というネットアンケートをしたところ、3位が北海道で2位が石川県、そして第1位に富山県が選ばれた。

「同じ日本海に面していて、隣り合う石川と富山で獲れる魚に味の違いなんてあるんか?」

と思ってしまったんだが、海底谷のある富山湾は「天然のいけす」と呼ばれてるほど良い漁場になっている。
ボクは石川・富山の寿司の食べ比べをしたことがないんで、詳しいことはわからないけど、富山の寿司がおいしい理由は富山湾で獲れる魚を使っていることが大きいという。

食材の味はその土地や季節など日本の自然が育ててくれるし、日本の料理人にはその持ち味を尊重し調理する技術がある。
だから本物はおいしい。
寿司や卵かけご飯のように、素材を生で食べる発想は日本食の大きな特徴だ。

知人のタイ人は、日本とタイでは素材(魚)の味が違うから、タイの魚を使うと日本の寿司のような味は出せないと話す。
チーズやマヨネーズを使った海外の創作寿司は、「持ち味の尊重」という点で日本の寿司とは考え方が違うと思う。
そんな和食の特徴が寿司に影響を与えただろうし、逆に寿司が和食に与えた影響もあるはずだ。
そんな相互作用でグルメ・レベルが上がっていき、気づけば日本は世界のベストレストランがもっとも多い国になっていた。

 

これはタイで見た寿司店

 

日本から空輸した魚を使い、日本のやり方で作るから「本物」という話をガイドから聞いた。
しかし値段もホンモノだ。

 

 

ドイツ人、日本で寿司を食す。その感想は「バッドコピー」

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

バングラデシュ 「目次」

シンガポール 「目次」

ミャンマー 「目次」

ヨーロッパ 目次 ③

ヨーロッパ 目次 ④

 

1 個のコメント

  • > 同じ日本海に面していて、隣り合う石川と富山で獲れる魚に味の違いなんてあるんか?

    確かに隣接した2県なのですが、日本海との位置関係では条件が全く違います。
    富山県が面している日本海は、記事にも書いてある通り、豊かな漁場でもある富山湾です。
    これに対し、石川県は、金沢~輪島~能登半島まで一貫して「外海」としての日本海に面しており、漁場も陸地からかなり離れた場所にあるはずです。
    そのように漁場の条件が異なることから、たぶん、入手できる魚貝の種類もかなり違うと思いますよ。
    どちらの魚が美味しいかは、個人の好みによって異論もあるだろうとは思いますが。

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。