【第三回十字軍】豪華クルセイダース vs 英雄サラディン

 

日本で「クルセイダー」といえば、ゲームやアニメでたまに出てくる。
『パズドラ』にはクルセイダーのキャラがあるし、アニメ『このすば』に登場する、美人で救いようのないドMのダクネスという女騎士はその界隈では有名だ。
あまりの変態っぷりから、ダクネスは「狂性ダー(クルセイダー)」ともいわれる。

日本では二次元で見るクルセイダー(複数ならクルセイダース)とは「十字架をつけた集団」という意味で、キリスト教の”聖戦士”のことをいう。

およそ1000年前、フランスのクレルモンでローマ教皇ウルバヌス2世によって教会会議が開かれた。
そして1095年の11月27日、クレルモン教会会議の最終日に教皇は第1回十字軍の実施を宣言する。
(だからホントはこの記事を2日に書きたかった)

いまこそ異教徒(イスラム教徒)に対する聖戦が必要で、十字軍へ参加した者は罪が許される、というウルバヌス2世にの訴えに熱狂した人々は「神の望みのままに!」と叫んだとか。
この宣言によって、聖地エルサレムをイスラム教徒から奪い返すため、ヨーロッパのキリスト教徒による200年にもおよぶ十字軍の戦いが始まった。
このキリスト教の戦士がクルセイダーになる。

この宣言から3年後の1099年、クルセイダースはついにエルサレム征服に成功し、そこにエルサレム王国を建国する。
で、エルサレムにいたイスラム教徒やユダヤ教徒に対しては、虐殺に略奪とやりたい放題しやがった。
これこそ狂セイダーでは?

 

エルサレムはイスラム教徒にとっても重要な聖地。
ゴッドかアッラーは何を思ったか、このタイミングでサラディンというイスラム教徒の英雄を世界に送りこむ。
エレンが巨人に対して「駆逐してやる!この世から」と誓ったように、サラディンはパレスチナの地からキリスト教徒を駆逐することに生涯をかけた。
アイユーブ朝を開いた彼は1187年にジハード(聖戦)を宣言すると、十字軍の兵士を蹴散らして、第一回十字軍で奪われたエルサレムを約100年ぶりに取り戻すことに成功。
この時のサラディンはあのときの十字軍とは逆に、キリスト教徒を虐殺することはなかった。
呼び方が違うだけで、彼らイスラム教徒の戦士もクルセイダースと同じく、自身の信仰を守って異教徒と戦う聖戦士だ。

 

エルサレムを奪われたと知った教皇グレゴリウス8世は、聖地の再奪還のため十字軍の結成を全ヨーロッパに呼び掛ける。
その声に応えて、勇敢で理想的な騎士と称えられたイングランドのリチャード1世、フランス初の偉大な王といわれるフィリップ2世、それに神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世らが参加した。
獅子心王リチャード1世と尊厳王フィリップ2世、それに赤髭王(バルバロッサ)と呼ばれた勇猛なフリードリヒ1世の豪華クルセイダーがタッグを組んで、サラディン相手に戦いを挑む。
8回以上にもなる十字軍の戦いのなかでも、この第三回十字軍(1189年 – 1192年)のときが一番キャラが立っていたし、最も重要だったと思う。
ちなみに獅子心王はスマップの『ライオン・ハート』の元ネタになった人。

川を渡ろうとしたフリードリヒ1世が馬から落ちて、重い鎧を着けていたため溺死するというガッカリな展開を乗りこえて、英仏の十字軍がムスリムの軍隊と戦い、フィリップ2世がフランスに戻ったあと、リチャード1世がサラディンと休戦協定を結んで第三回十字軍は終了。
クルセイダースは聖地エルサレムを奪回することは出来なかった(=サラディンの主権を認めた)けど、キリスト教徒がエルサレムを巡礼することは認められた。

ローマ教皇ウルバヌス2世が1095年に、クレルモン教会会議で「聖なる戦い」を宣言するまで、エルサレム周辺のイスラム社会ではキリスト教徒やユダヤ教徒はアラブ人と仲良く暮らしていたらしい。
神の名の下に戦いを宣言すると、大抵ロクなことにならない。

 

サラディン

 

およそ200年にわたって行われたキリスト教とイスラム教の聖戦士による攻防。
これがその後、どれだけの小説や映画、アニメや漫画で描かれたか想像もできない。
だから、この戦いで使われた剣が発見されただけでも世界的なニュースになる。

CNN(2021.10.20)

900年前の十字軍の剣、スキューバダイバーが発見 イスラエル沖

 

 

 

ヨーロッパ 目次 ③

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

【ホーリーホック】十字軍が西洋にもたらした“神聖な花”

反論できる?「日本人が、外国人の日本料理をインチキと言うな!」

【東西の裏切り者】明智光秀と、聖書や欧米社会におけるユダ

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。